頬を、殴られる衝撃で目が覚めた。

 一体何が起こったのかと辺りを見渡してみる。ここは……体育館裏だ。

「気色悪いよお前」

 康太。どうして僕を?

 拳を握り締めているよね? それで、この、じんと痺れている頬を殴ったの?

「まぁ、落ち着けって康太。俺らだって気持ち悪いようなもんでしょ」

 彼方。どうしてお前が康太の隣に立っているの?

「落ち着けるか。こいつ、鳥井という彼女がいながら俺とのよくわからん小説なんてノートに書いていやがったんだぞ。しかもお前と二股とか、流石に笑えない」

 身体が、びくりと、跳ね上がった。

 彼方が康太に腕を絡ませている。

「まぁ、ほら。俺たちが付き合ってるってどこかから知って、驚いてそんなことしたんだよな? ほら、石本もあやまれって」

 ――な、ん、って、言った、の?

 足元から、頭の先まで、鳥肌がざざざっと、百足が這うように上った。

 頭から氷水を被ったみたいな、悪寒。

「こ、康太? な、何で僕を苗字で呼ぶの? か、彼方も、どうしてそんな、康太にべたべた――」

 彼方がぎょっと目を見開いた。

「え? 石本、何言ってんだ? 俺ら名前で呼び合ったことなんて今まで一度も無かっただろう? クラスが同じなだけで――」

「だ、だって、担任が、ほら、名前で呼び合えって言ったでしょ?」

「ほら、彼方。こいつ頭がおかしいんだ。そんなの聞いたこともないだろう?」

 と、康太が彼方を守るみたいにして、僕と彼方の間に身体を割り込ませた。

 赤い。赤い。視界、あか……く、ない。

 そんな。

 そんな。

 そんなのって。

「ちょ、康太、そんなことを人に言ったらいかんだろ」

「お前もあのノートを読んでみればわかる。それに、俺は鳥井から相談を受けたんだ。凄く泣いていたんだぞ」

 ――ああ。

 そうか。

 そうだった。そうだったね。

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