独占したい


 高野蘭は、森直太と同棲をしているマンションの自室で一人、ベッドへ顔を伏せながら唸っていた。

 シンプルマッシュカットされたライトベージュの髪がふわりと、ベッドへ広がっている。どんぐりのような大きな瞳は閉じられていた。

 身長百六十八センチの細身な彼に似合わぬ、大きなサイズのカーディガンを羽織っており、今にも肩からずり落ちそうだ。

「何で行くんだよ」

 独り言を呟きながら、唇を尖らせる。

 高校三年の頃より、彼と直太は付き合っていた。そして大学に上がった時より同棲を始め、今年で二年になる。

 蘭はすねていた。何度引き止めても直太が飲み会への参加をやめなかったからだ。

 直太いわく、自分がいないと盛り上がらない、という事らしいが……蘭は、それ自体が気に食わないようだ。恋人を独り占めしたいタイプの人間らしい。

 両足をばたつかせて、ベッドの中を泳ぐ。

 ため息をつきながら蘭は、携帯電話を操作しメールの着信画面を出した。

「連絡、ない」

 苛立ちに任せて携帯電話をベッドへ投げ捨てる。

 時刻は十二時を回っていた。都会に住んでいるので終電まではまだ時間があるものの、朝帰りをするのではないかと冷や冷やしていた。

 自分が好きになったのだから、恋人は他者から見ても魅力的に感じるに決まっている。

 蘭はよく一人でそう唸っていた。しかし直太へそれを伝えてはいない。自分の方が彼をより好きなのだとアピールしてしまうことになると、唸りながら胸の中へ留めている。

 浮気をしないだろうか。直太を信じてはいるものの、相手より強引に迫られたならばその場の空気を悪くしないため、キスくらいは返してしまうかもしれない。

 思考のざわつきは、収まりそうもなかった。

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