****

 店内は混雑をしていた。さすが、人気店だけあるなと話しながら辺りを見渡し、予約していた個室へと四人、一列になって入ってゆく。

 小奇麗な印象を与えてくる内装だ。テーブルも、そこにはめ込まれている鉄板も艶やかに磨かれている。

 蘭が奥の席に着いた。その隣へ直太が。テーブルを挟んで、蘭の向かいへ加護。その隣に野呂が続いて座る。

 まずは飲み物を注文しようという加護の意見へ皆賛成し、乾杯にはやはりビールだろうと、生中を四つ注文した。

 店員が持ってきたところで、それぞれビールジョッキを宙へ掲げる。

「誕生日おめでとー!」

 加護の声に無言で頷く蘭。直太より拝み倒されてこの場へ来てみたものの、せっかくの誕生日を加護と野呂へ邪魔されたのだという思いは消えないようだ。その表情は強張っている。

「これ、プレゼントな」

 そんな彼へ野呂が、朗らかに笑いながらA4サイズほどの綺麗にラッピングされた箱を差し出す。

 やはり無言で頷きながらそれを受け取る蘭。

 直太は蘭の背中を軽く小突いた。

「お前、もうちょい笑えよ。せっかくきてくれた二人に失礼だろ?」

「笑ってる」

 とは言うが、やはりその頬は上がっていない。隙あらば直太の陰に隠れようとしている。

「笑ってないよ。もっと仲良くなってくれ頼むから」

 ため息をつく直太へ、加護が笑いかけた。

「まぁまぁいいじゃあないの。ほら、肉注文しようぜ!」

 メニュー表を開き、蘭に見えやすいようテーブルの上へと置く。

「蘭はどの肉が好きなのかなー?」

 にこやかにたずねられ、蘭はおずおずと口を開いた。

「カルビ」

「じゃあ上カルビ……いや、特上を頼もう! 俺がおごる!」

 拳を掲げながら深く頷く加護。

「え、いいよ。高いし」

 即座に拒否され、駄々っ子のように首を横へ振り始める。

「そんな事言わないでさぁ。俺、もっと蘭と仲良くしたいんだよねぇ。だからその賄賂だと思って受け取って下さんなし!」

 加護の必死な訴えに、蘭の心が動いたようだ。顎を引いて考え込んでいたと思えば、そのままの角度より加護を見つめる。

「……いいの?」

「もちの、ろん! そんな可愛い上目遣いを見せられたら俺、どんだけでも貢ぐよぉ!」

 ご機嫌になった加護を見て、直太は苦笑する。

「阿呆なこと言ってんなって。ほら蘭。お礼言いな」

 合図を送るかのよう背中を軽く叩かれ、蘭の頬が上気した。

「あ、りがと」

 加護が、目を見開いた。じわじわと目元が赤らんでゆく。

 そんな加護を目にして硬直する直太だったが、すぐに持ち直した様子で口を開いた。

「じゃあ肉の注文はお前に任せるわ。そうだ、プレゼントあけてみれば?」

- 82 -

*前次#


ページ:



ALICE+