僕は空を飛ぶ
屋上に続く階段を駆け上がる足が弾む。スキップでもしたい気分。鼻から細く、高い息を吐きながら歌う。
校舎から人の気配がほとんど感じられないからか、窓から差し込んでくる光がいつもより綺麗に見える。
心が浮き立つ。少し落ち着こうと息をつくが、治まらない。もしかしたら心のどこかでは、そのままふわふわしていたいのだと感じているのかもしれない。
足の親指に強く力を入れる。思い切り腕を振り下げ、階段を一つ飛ばしで駆け上がる。
こんなに気分が良いのは久しぶりだ。それが何故なのか確定は出来ないけれど、でも多分、答えを見つけたからだろうと思う。ずっと考えていた。悩んで眠れない日もあった。遠くから響いてくるような頭痛。胸の中に濁った水が溜まってゆくような不快感がいつも襲ってきた。しかし今は、それら全てが晴れたような感覚だ。
屋上へ続く最後の扉を見た瞬間、口の中に喉の鳴る音が響いた。
少しさび付いているドアノブを握り、ゆっくりとまわす。ギーギーと泣きながら開く扉の隙間から、沢山の赤がこぼれだしてきた。
――眩しい。自然と目が細まることを感じながら、唇の端を上げた。腹の底からマグマのような熱が上がる。身体全体を震わせるような笑いの波が襲ってきた。「は、は、は、は」と、聞こえてくる自分の声が遠い。他人のもののようだ。
広い空だなぁ、と頭上を見上げる。そのまま視線を下ろすと、輪郭のぼやけた夕焼けがあった。この場所から見るそれがとても近くに感じる。白い雲さえも染める赤が、僕の身体にも色を移してくる。早く、早くと足が浮き立ち、急に心臓が焦るようにして早く鳴った。
ひとつ、深く息を吸う。鼻から一気に吐き出す。誰もいない屋上。フェンスの傍まで呼吸を整えながら、歩く。音のしないグランド。サッカーゴールの影がなんだか寂しそうに見える。いや、きっとそう。寂しいのだろう。少しだけセンチメンタルな気分になってしまう。さっきまで上がっていたテンションが、少し、ほんの少しだけ。
- 88 -
*前次#
ページ:
ALICE+