じゃあな
何が言いたいかって、そりゃあ、決まっている。
勝手なことをしやがってという、文句だ。
あの時もそうだったよな。
中学の頃、買い食い禁止って校則があったけどさ、部活帰りに二人で駄菓子屋寄っただろ?
俺が、腹減ってもうたまらんってぼやいてたらお前、腕引っつかんできて。いや、やばいんじゃあねぇのって言葉だけでは抵抗しつつ、二人で菓子パン買って食ったよな?
それから数日後、誰かにそれをチクられたみたいで、部活顧問に何故かお前だけ呼び出された、あの時の話だよ。
覚えてるか? 覚えてないか? まぁ、お前のことだから忘れてんだろ。
それはどうでもいいけど。お前、顧問にさ、買い食いしたのは自分一人だって言い張ったんだよな。それで結局、お前だけが数日部活参加を禁止されて。大事な大会が控えていたのに、さ。
テニスのダブルスで、一番手だったんだよなぁお前。それの、後衛で。
部活参加を禁止されて、前衛の奴がすんげぇ怒ってたの、俺は覚えてるぞ。必死こいてお前は頭下げてたよな。
フェアじゃあないことだと思って俺が、顧問に話をしようとするたび、お前はそれを止めたよな。何なんだよ。
テニス、さ。俺は別にそんなに好きじゃあなかったんだ。ただ、小学校の頃には無かった部活だったし、ラケットを振り回してみたくなったから入部してみただけの話だった。
でもお前は違ったんだろう? よく知らん外国人の選手の話を毎晩のようにメールしてきたよな。好きだったくせに。阿呆かっての。
お前のフォームも面白かったわ。上半身が斜め下に傾くんだ。ラケットですくい上げるようにしてボールを打っていて、引きずった片足で地面へ綺麗に描かれたSの字。
何度もラリーを続けるうちに、コートにはそのSの字が、雨の日の翌日の道路へ姿をあらわすミミズのように、うじゃうじゃと描かれていって……俺はそれを見るのが割かし好きだったわ。
本当はな。お前と一緒に入ったテニス部で、俺は、お前とペアを組みたかった。何だってあの中学は、自分で前衛後衛を選べなかったんだろうなぁ。顧問から二人とも後衛になれって言われて、その日の帰り道に河原で、誰もいないことを確認してから叫んだよな。力の限りさ。
悔しくて。何の為に入った部活なのだろうかと思った。だから、お前のペアともあんまし仲良くはできなかった――そっちも同じ気持ちだったのかな。俺のペアとお前、仲悪かっただろ。
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