思い出すことはたくさんあるよ。長い付き合いだもんな。

 小学生の頃かぁ? よくは覚えていないが、高い塀を見るとさ、中に忍び込んでみたくなったよな。

 二回ほど、それに成功したか。一回目はあれだな。運んだ椅子を重ねてそこへ上がり、何とかよじ登った塀の向こう側を見て腹を抱えて笑いあったやつだ。

 寺だったんだよな。何の変哲も無い、ごく普通の寺。

 塀の向こう側に、自分たちの見たことのないような世界が広がっていると信じていた気持ちは一瞬で掻き消えたわ。ああ、単なる空想だったんだなと思い知った。

 お前もきっとそう思ったんだろう?

 二回目は、そんな、夢幻のようなことがあるわけはないってわかっていながらも、やはり中が覗いてみたくなってさ。寺を覗いた時と同じようにして塀によじ登って。

 見てみたら、廃工場みたいな感じだったんだよな。あれは少しだけ、わくわくしたわ。

 中に入ろうっていうお前を必死で止めたけどな。危険とか、注意、とかそういう看板がいくつも立てられていたからさ。そんな場所に子供二人で入るのは流石にやばそうだったし。

 もしもあの時中に入っていたら、何か、違う未来があったのだろうか。

 お前さ、ひねくれてたよな。すごく、すごく。

 でもって意地悪でもあったな。人の嫌がる顔とか大好きだったろ。

 高校時代、自転車を盗もうって言ってきた時には本当に驚いたわ。

 何も悪いことをしませんって顔をしているくせに。綺麗で、中々可愛らしい感じで、人間のいやらしさなんてちらりとも見せてこないような顔立ちだったのに、そういう悪巧みをしている時だけは目を妙に輝かせやがってさ。

 毎回そういう行為を止めてはいたものの、その目の光は嫌いじゃあなくて。

 ついつられてしまいそうになる自分をどれだけ必死に止めたことか。お前は知らないだろうな。

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