高校三年の時、喧嘩したんだよな。

 何というか、たわいもなくて、今思い返せば笑ってしまうようなやつ。

 俺が、お前のことを好きすぎたんだ。

 目を離せなくて。すぐ、どこかに飛んで行ってしまうような奴でさ。

 人気者だったな、お前。俺、いろんな奴から言われたよ。あいつの一番は俺なのに! ってさ。何でいつもお前とあいつがつるんでるんだって。

 俺、そういう奴に何って言ってたと思う?

 それを選ぶのはあいつだからって。馬鹿だろ?

 本当に、馬鹿だよな。本当は――きっと、しがみついていただけなのに。

 一緒にいたくて、楽しくて。

 笑顔を向けられると自分が特別な存在になったような気がしたよ。

 お前が好きだっていうから、興味の無いドラマを見て、さほど面白いとも思わない漫画を読破して。お前の好きなバンドの曲を聴いて、新曲出たらCD買って真っ先にお前へ貸して。

 何だろう。お前と当時何を話していたのかなんて、全然思い出せないのに……笑った顔と、悪戯を思いついた時の目の光だけは鮮明に浮かぶんだ。

 好き、だったからかな。そうだな。

 お前さぁ、何で学校、俺と同じところを選んだんだよ。

 そっちの方が頭良かったから、もっとレベル高いところに行けただろう?

 それなのにどうしてランク落として受験したんだよ。しかも、合格通知来るまで俺に教えなくてさ。俺、推薦入試だったし、お前はどうしてか一般入試だったから全く気付かなかったわ。

 まさか同じ高校に行けるとは思っていなかったから、喜んだよ。

 飛び上がるほどに喜んだよ。

 でもさ。今は――

 もしも違う高校に行っていたら、何かが変わっていたか?

 変わっていただろうなぁ。通学路が、違ってたことになるからなぁ。

 俺、知らなかったよ。

 学校帰りに、お前が柄の悪い奴らから声をかけられていたことなんて、何も。

 教えてくれなかったよな。そんなに俺は頼りなかったかな。

 いや、違う。お前のことだから――面白そうなことを独り占めしようとしたんだな。

 そいつらとこっそりつるんでみて、後で報告しようと考えていたろ。

 鉄砲玉みたいな奴だったもんな。頭いいのに、考えているようでいて、しっかりと先まで予測せずに行動して……

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