お前、兄貴とうまくいってなかったんだって? 葬式の時に初めて聞いたぞ。
俺の前では昔、あんなにさ、二人で親しそうにしていたのにな。
ほら、覚えてるか? ゲームボーイ。白黒のやつ。
あれで、マリオやったろ。一面ずつクリアしようぜって。
そん時にさ、お前の兄貴が部屋に乱入してきたよな。確かあれは、小学五年の時か。
お前の兄貴はもう中学三年だったのに、やけに子供染みていて、持っていたゲームボーイをいきなり奪ってきたよな。何なんだって、文句を言う俺らへ得意げな顔をしてきてさ、俺がクリアしてやるからお前らは見てろ! なんて胸を張ってきて。
あの頃からすでに仲がおかしくなっていたのか? どうなんだろうな。
でも、葬式であの人、泣いてたよ。声は上げてなかったけどな。頬、真っ青だったよ。目元がぐしゃぐしゃに濡れていて、でも、はめていた眼鏡は外さなくて。ずっとさ、お前の遺影、眺めていたよ。ずっと、な。
遺影といえばさ、お前、少し見ない間――二、三年のうちに大分さ、変わってたみたいだな外見。シンナーで歯が溶けて……思い出したくないな。
だから、遺影をさ、高校の時のやつにしたんだって噂を聞いたわ。たまらんかったよ、俺は。
葬儀会場に行って、旧友と顔を合わせて、煙草を吸って、ぼんやりとして。
現実感がなくて、いや、今もそうか。
お前が死んだなんて、誰が信じられるかって、なぁ。
坊さんのさ、お経をな。聞きながら……何だろうなぁ。
お前との思い出が頭の中に蘇ってきてさ。
会場には鼻をすする音が響いていて。隣にいた奴も泣いていて。
泣かなかったの、もしかしたら俺だけかもしれないっていうほどに、会場全体がこう、湿っていたよ。
で、さ。顔を見て行って下さいって言うわけね。お前の親御さんが。
啜り泣きながらな。もう、何度も泣いたんだろうと思わせるようなかすれ声を上げながら。
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