俺、本当は見たくなかったんだわ。
離れた年月を感じたくなかったのね。だってさ、ずいぶんと変わったって、聞いていたから。
でも、列ができてさ。人が流れていくわけ。それにのらないと会場から出られない――みたいな空気になっていて。
だからその流れに紛れ込んだんだわ。もう、人が大分いなくなってきた頃にな。
たくさんの花に埋もれたお前は、何で笑っていたのかね。
どうして笑えたんだ。
ずっと、苦しんでいたと聞いたよ。柄の悪い連中と絡むようになってから、あんまし学校に来なくなってさ。もうすぐ高校卒業できるってとこまでいっていたのに、中退したよな。
俺が何度連絡をしても、電話に出なくてさ。何度かメールしてみたら、メール拒否されるようになって。
家に行ってもさ、いつの間にかそこには帰らないようになって。親御さんが困り果てた顔してたわ。
俺たちがあの時、喧嘩をしなかったら。
俺が貸したCDをさ、お前、他の奴に貸したんだったよな。
こっちとしてはさ、お前にだから貸したのに――ってすっげぇ腹が立って。
つい、何で勝手なことをするんだって怒ってしまって。
そうしたらさ、お前、今まで見せたこともないような冷たい顔で、じゃあいいよもうって言ったよな。
それから数日後にお前、柄の悪い奴らとつるみ始めたんだろう?
俺さ、お前が何を悩んでいて、どんな風に物事を考えているかなんて、想像もしていなかったよ。だって、いつも笑っていたから。ずる賢かったし、世渡りもうまかったし、人を惹き付ける魅力に溢れていたし……雲のように、掴めない性格をしていたし。
何故だろうな。どうしてなんだろう。
お前に何があったのか、何で俺は知らないんだろう。
あんなに一緒にいたのにな。
ずっと、一緒だったな。
出会いはいつだったっけ。もうよく覚えていない。
幼稚園の頃――は、まだだな確か。
小学校の頃か。いつだ? 知り合ったのは……通学団も違ったし、クラスも違ったはず。
何がきっかけだったのか、どうしても思い出せない。その悔しさをお前に伝える術はもう、無いんだな。
一緒に塾、サボったな。お前のせいで俺は、サボり癖がついたんだぞ――って、人のせいにするな、なんて言われそうだ。
でもさ、お前上手にサボるから。家に連絡がいかないようにする技とかさ。本当に、頭の回転が早かった。
それなのに――好奇心か。それのせいでああなったのかな。
内蔵も、ぼろぼろだったんだって?
何やってんだ。
阿呆じゃあないのか。
どうしてそうなったんだよ。
対人スキルだって高かったじゃあないか。好奇心は強すぎるくらいだったけれど、身を守ることだってできただろう?
俺が、傍にいたら何かが変わっていたか?
それとも――俺の傍にいたからお前は、そうなったのか。
答えを知りたいのに、問いかけたくともお前は、いない。
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