そうそう、葬儀の話な。
顔を見てさ、一瞬、耳が遠くなったわ。
さっと、見ているもの、感じているものがな、お前以外のもの、存在全てが背後に走っていったような感覚がしたよ。
二人だけになったその空間で、話しかけようと思ったのにどうしても、口が、縫い付けられたように開かなくなって。これが最後のチャンスなのにって思った瞬間に――馬鹿だな、俺はって、自嘲した。
最後のチャンスとか、阿呆かって。
お前が死んで、チャンスなんてもう無いのに。それはとっくの昔に去っていたんだ。
帰る前にさ、親御さんたちに頭を下げてみたらな、もう涙で視界がぐしょぐしょだったんだろうなぁ。一瞬、誰か気づかれなくてさぁ。
何度か瞬きをしていて。
ああ、って気づかれてさ。
そしたら顔が益々、くしゃりと歪められるわけよ。
本当にたまらんかったなぁ。槍になった悲しみが突き刺さってきて、もう、我慢ができなくなりそうだった。
お互い何も言えなくてな。もう一度会釈をして、会場を出たんだ。
旧友たちが皆で喫茶店でも行って、思い出話をしようかって言ってたんだけど俺は、断ったよ。
一本だけ煙草を吸って、立ち上る煙を眺めながら――お前の焼かれる姿を想像して、この煙がそうだったらば、どんな風に空気に散ってゆくのかな、なんて、よくわからないことを考えていた。
会場を後にして、電車にのってさ。
座席に腰を下ろして。
電車が発車して、流れてゆく景色を眺めながら、そこで初めて俺は泣いたよ。
必死に声を押し殺そうとしたんだけど、どうしても、そういうものは飛び出てしまうんだなぁ。歯の隙間からかな。食いしばって、唇を噛み締めてもさ、鼻からな、ひっ、て音が漏れてしまうんだよなぁ。
お前も知ってるだろ? 俺は、人前で泣くような人間じゃあないんだわ。
生きてきて初めてさ、そんな状況で泣いた、な。
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