ちなみに転勤を受けたのは、お前を吹っ切る為とかじゃあないからな。自惚れるなよ。とか何とか言いながらも、影響を受けているのは確かなんだけどさ。

 お前が、もうできないことをしようと思うんだ。

 しっかりと、今あるものを見て、触れて、感じて――色彩、匂い、肌に触れてくる空気の感覚、雰囲気と、舌の上に滲む味、聞こえてくるもの全てをきちんと受け止めてゆきたいんだわ。

 だから、新しい環境にはどんどん飛び込んで行こうと思ってな。

 また会えるかはわからないけれど。いつか、報告ができたらと思うよ。

 お前の知らない世界を話すからって言ったらきっと、喧嘩をしたことも忘れて、身を乗り出して聞いてくれるよな。好奇心の強いお前のことだからさ。

 何か話しすぎたわ。

 もう行くから。

 朝っぱらからいきなり訪れてすまんな。

 夕日とお前の墓のタッグだけはさ、見たくなかったんだ。

 ああ、しっかしよく話をしたなぁ。もう昼間か。

 緑、青いな。

 この墓さ、小高い丘の上にあるから――見える景色が綺麗だわ。

 お前、どこにいるんだろうな。見ているのかな。

 俺の話、聞いてくれたか?

 太陽がまぶしくてさ、まぶたが細くなっちまうわ。

 あのな、ずっと、さ。繋がった縁は切れないと思っていたよ。

 喧嘩をして、俺は大学に通って、お前は高校を中退してぷらぷらしていたようだけど、それでもいつかはまた、再開できると思ってた。

 だから、連絡が取れなくなってもそんなに焦らなかった。まぁまたいつか、って気持ちでいたんだよな。すごく好きだったから、しつこくして嫌われたくないって考えも確かにあったけど。

 それなのになぁ。

 後悔ってさ、本当――糞、また涙が滲んできやがる。

 お前、よくもまぁ、こんなものを俺に与えやがったな。

 酷い奴だ。仕方のない奴だ。自分勝手な……

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