……ああ、一気に話してのどが渇いた。水、くださいよ。
もういいでしょうが。殺すのか、殺さないのか。あの日にこうして僕を浚って、椅子に縛り上げ、食事を与えず水だけちびちび飲ませるのは、何のため? 苦痛を与えたかったならば、無駄だったね。だってこんなものは何の痛みももたらさないもの。
魂に刻まれるような痛みを君は、知っているか。
何度生まれ変わっても癒えないような傷を、君は知っているか。
僕は、知っているかな? 君、どう思う?
この人生は、苦渋に満ちたものだったのだろうか。もう、痛みに慣れすぎてしまってね。自分では判断できないよ。
ただ、面白いことにさ。一番に頭へ浮かぶのは、彼の死に顔とか、そういうものではなくて、親にばれたあの日の空の色なんだよね。どうしてかな。
狂ってる? 何故?
だいたい、狂うとは何を指して言っているの。その定義は?
もしも僕が本当に狂っているのだとしたら、世の人の大半は狂っているよ。人は、狂っているから生きておられるんじゃあないか。
ほら、そうそう。こっちにおいで。あ、その前にグラスへ水を――ああうるさい。どうしてそれ、床に叩きつける……そう。そっち、選んだの。
いいけれど。
ほら、僕の迷路へ入っておいで。
わかるかな。
頚動脈は、のどの横にあるからね。
END
{emj_ip_0788} 2015 Nosibanodenko

R18短編集リビドー目次
サイトTOP
- 19 -
*前次#
ページ:
ALICE+