冬、三度目の出会い。

21歳の冬。4つ下の妹からのお願いで私はキュッキュッと靴が擦れる音が響く体育館に居た。

「叔父さんに感謝だね!こんな近い席、中々取れないんだよ?」
「ふーん」
「お姉さ、予習したの?」
「ん?予習って何」
「選手の!」
「え、それ必要?」
「必要だよ!!相手のチームの事とかさ!」
「興味ないもん」

妹はバレーのスポーツ推薦枠で高校に通っている。地元でプロの試合があると聞き付け、叔父にお願いしたらしい。セッターである妹の為に、プレーが見やすい席を取ってくれたのだろう。

「それで?相手はどこなの?」
「ムスビイブラックジャッカル」
「知らーん」
「だろうね」

そんなやり取りをしていると、会場が暗くなり音楽が流れ選手の紹介をしている。地元のチームの選手紹介が終わり、次はムスビイの番で大きな画面に映し出された人を見て驚愕した。

「!?!」

- NO.13 , S , ATSUMU MIYA - の字と共に、画面にはあの人が笑顔で映し出されていた。そうか、あの日、お兄さんが言ったファンというのはこういう事だったのね。

「この人、サーブもヤバいんだよね」
「へえ、そうなの」
「セットも凄いんだよ」
「…そうなんだ」

コートから客席までは結構離れている。これだけの大人数の中で、あの人が私に気付く筈かない。それなのに、神様はイジワルだ。選手は客席に向かってサインボールを投げていた。私に気付いたあの人は、笑顔で私に向かってボールを投げたのだ。

「え、え、え!?お姉すご!宮侑のサインボールじゃん!」
「ね」

キャッチしたボールを見ると、#13の数字とサインが書かれていた。あの人、明らかに取りやすいように投げたよね。

「あげる」
「え?!いいの?!」
「欲しいんでしょ?」
「ありがとう!お姉!」

物欲しそうな顔している妹にボールを渡し、始まった試合を見ていた。試合は、あの人のチームが勝利した。

「はぁ〜!面白かったー!」
「良かったね」
「あのセットアップ、ヤバくない?!」
「興奮し過ぎて夜熱出るんじゃないの?」
「あり得る」

身支度を済ませ席を立とうとした瞬間、キャーと黄色い声が聞こえた。選手によるお見送りがあるそうだ。写真撮影やサインなど行うようだ。

「お姉、私も並んできていい?」
「どうぞ。荷物持って外で待ってるから」

さっきの試合を見て、妹はすっかりファンになってしまったようだ。興奮状態のまま列に並びに行った。その30分後、妹は更に興奮してやってきた。

「お姉ーー!」
「ちょっと、目立つから」
「もおー、お姉さ知り合いなら言ってよ」
「ん?誰と?」
「宮侑と」
「知らないよ?」
「だって、お姉に渡して欲しいってコレ」

渡された紙を開くと、そこには携帯電話の番号と『連絡待っとる』のメッセージが書かれていた。

「いつ知り合ったの?」
「人違いじゃない?」
「でも、藍ちゃんの隣に居た子やんな?って言われたよ?」
「んー、でもお姉ちゃん知らないんだよね〜」
「絶対ウソ」
「いいから、帰るよ」
「はーい」

実家に帰ってからも妹は興奮したまま今日の試合の凄さを両親に熱く語っていた。そして、私は番号が書かれたメモを再び開くことはなかった。