偶然なのか、運命なのか。

京都で行われた友人の結婚式に参列した私は翌日の撮影の為に、二次会には参加せず東京行きの新幹線に乗っていた。移動の疲れもあり座席に座ると急激な眠気に襲われ、意識を手放した。

どの位眠っていたのだろうか。ガヤガヤする音で目が覚めると、誰かのジャージが掛けられていた。隣を見るとムスビイの宮侑。ここまでになると恐ろしくなってくる。

「おはよーさん」
「…怖い」
「何でやねん!」
「アナタ、GPSでも仕込んだんじゃないですか?」
「せやねん、藍ちゃんに会いたくて。って、ちゃうわ!んなわけ、あるかい!」
「ここまでくると怖いですよ」
「藍ちゃん、コレはな、運命なんやで」
「運命なんて物語の中だけです」
「あんで。ちゃんと、俺との間に」
「…ソレ、誰にでも言ってるんですか?」
「言うわけあるかい!そんなチャラくないで!こー見えて俺はむっちゃ一途やで?!」
「そうなんですね」
「絶対信じてへんやろ」
「…はい」
「よし、携帯出し」
「嫌です」
「妹ちゃんから受け取ったんやろ?何で連絡くれないん?」
「連絡する事ないので」
「何でもええやん!」
「そもそも、アナタと連絡を取るような仲じゃないと思うんですけど」
「……まあ、そうやな。そやけど、仲良うなりたいんよ。俺は」

そんなやり取りをしていると、まもなく新横浜というアナウンスが聞こえた。もうそんな所まで来ていたのか。周りで身支度をする音がする。

「ツムツム、次だってー」
「おん」

チームメイトらしき人に声を掛けられたが、彼は身支度をしようとはしなかった。

「あー、もう時間あらへん!藍ちゃん、俺な、好きになってもうたんや」
「?」
「俺、藍ちゃんのこと好きになった」
「は!?」
「連絡せなあかん出来事があればええんやろ?」
「は?何言って」
「ほな、また」

恐らくチームメイトの中で一番最後に新幹線を降りた彼は、ホームで笑顔で手を振っていた。好きって何だ。連絡しなくちゃいけない出来事って何だ。気付かないフリをしていたけれど、あの人に出会う度に振り回されている気がする。

そして、東京に着いた時に私は " 連絡しなくちゃいけない出来事 " に気付き、落胆するのだった。その日の夜。あの日受け取ったメモを再び開き、書かれている番号に電話を掛けた。

『もしもーし』
「紫藤です」
『連絡くれたんや』
「気付いてて、ワザとやったんですか」
『こーでもせんと、絶対連絡くれんやん』
「当たり前です」
『そんなに嫌?俺ん事』
「…はい」
『そんなハッキリ言う?流石に傷付くやんかー。何でそんな嫌なん?』
「デリカシーがないからですかね」
『サムにもむっちゃ言われたわー』
「あの!それで、ジャージなんですけど!」

このままだとダラダラと話してしまうだけな気がして、連絡しなくちゃいけない理由であるジャージの話しを持っていく。

『藍ちゃん、次の休みいつ?』
「今月末ですけど」
『ご飯行ん?そん時に持ってきて。断られる前に切るわ!ほな、また』

現在の時刻が23時近くだったのもあって、掛け直すのは止めた。今思えば、この時に断っていた方が良かったのかもしれない。周りの人達を巻き込んでしまう事に、この時の私達はまだ知る由もなかった。