この二人が本当に十二鬼月ならば私達が倒してきた鬼よりも手強い。少しの油断もしてはならないのだ。ほんの少しの間に、直ぐ腕が再生されている。回復が速い。
「キャハハハハ」
「禰豆子?!」
「さぁ死ね!」
禰豆子を抱えた兄が鞠鬼の攻撃を交わした。ホッとしたのも束の間、愈史郎さんが司令を出した。兄は矢印の鬼を。そして、私と禰豆子は愈史郎さんと共に鞠鬼を引き受けることになった。
「一露葉、禰豆子…絶対に無茶をするなよ」
「お兄ちゃんもね」
「ムッ」
起き上がり、私達はほぼ同時に走り出した。少しでも早く人間に戻す薬を完成させるために、必ず血を採ってみせる。其々の戦いが始まった。
「そちらにいるのは、"逃れ者"の珠世ではないか。これはいい手土産じゃ」
「そうかえ」
「蹴っては駄目よ!」
「禰豆子!」
禰豆子に向かって放たれた鞠を蹴ると、禰豆子の足が吹っ飛んだ。転がった禰豆子を朱沙丸と呼ばれた鬼が蹴った。
「楽しいのう、蹴鞠も良い。矢琶羽、頸を五つ持ち帰れば良いのかの」
「違う。耳札をつけた鬼狩りと逃れ者の二つじゃ。残りはいらぬ」
もう一人の矢印を操る鬼は矢琶羽という名のようだ。二人で話している隙に禰豆子を抱え、建物の影に隠れている珠世さんに託す。
「珠世さん、禰豆子をお願いします」
「回復が遅い…、一露葉さん禰豆子さんに薬を使っても?」
「お願いします」
「禰豆子と珠世さんは此処にいて下さい」
「ムー!」
「大丈夫よ」
行かないで、と私を掴む禰豆子の頭を撫で私は矢沙丸に日輪刀を向けた。後ろでは兄と矢琶羽の戦いが始まったようだ。無数の矢印が兄を襲っている。
「キャハハハハ」
「くッ、」
「楽しいのう、楽しいのう」
どう戦おうかと考えようとした瞬間、禰豆子が走って来て鞠を蹴り返した。え?蹴り返した?!矢沙丸も鞠を蹴り、暫くの間二人で蹴り合いをしている。
「珠世さん、これは…」
「私が使った薬は鬼専用の回復薬です。体を強化する作用はないです」
「じゃあ、アレは」
「禰豆子さんの力です。人の血肉も喰らわずに彼女が自分の力で急速に強くなっている」
「おもしろい娘じゃ。今度はこちらも全力で鞠を投げてくれようぞ」
「…なッ!」
「一露葉さん。此処は私に任せて下さい」
「え?」
日輪刀を構え直した私を珠世さんが静止し、矢沙丸に鬼舞辻について問い出した。鬼舞辻の正体って一体何だろうか。
「あの男は、ただの臆病者です。いつも何かに怯えている」
「やめろ!貴様、やめろ!!」
「鬼が群れることができない理由を知っていますか?鬼が共喰いする理由」
怯える矢沙丸に珠世さんは、鬼たちが束になり鬼舞辻を襲わないように操作されていると言葉を続けたのだった。