「一露葉、必ず生きて戻れ。此処で待っとる」
「……はい!」
銀鏡さんに見送られ、鬼殺隊の最終選別が行われる藤襲山へ向かった。藤襲山には咲く時期ではない藤の花が咲いていて、兄の匂いを探そうにも花の香りが強すぎて嗅ぎ分けられない。
「皆さま、今宵は最終選別にお集まり下さってありがとうございます」
黒髪と白髪の女の子が何処からともなく現れ最終選別について説明してくれた。この藤襲山には鬼が嫌う藤の花が麓から中腹にかけて一年中咲いているため、生け捕りにされた鬼共は外に出ることが出来ないらしい。この花が咲いていない中で七日間生き抜くことが、鬼殺隊への合格条件だ。いよいよ始まるのだ。大勢の候補者が先に進んでいく。息を吐き私も足を進める。
奥へ進むにつれ飢えた鬼共が襲い掛かってくる。あの日覚悟を決めた筈だ。家族の仇を討つ、と。フゥゥゥ、と息を吐き全集中の呼吸を使い鬼の頸を斬る。銀鏡さんに渡された刀で斬ると鬼は跡形もなく消えるようだ。
「これが日輪刀。骨も残らないのね」
そこら中から鬼特有の匂いがする。吐き気がする。日が昇る日中に少し休み体力を回復し、夜になり鬼を斬る。そんな事を繰り返し、七日後の早朝を迎えた。
二十数人いた候補者で七日間を生き抜いたのは私を含め、たったの五人だった。綺麗な顔立ちをした女の子と黄色い髪の男の子、顔に大きな傷のある子。そして、水色の羽織を着た私と同じ髪色で父から受け継いだ耳飾りをした兄。
「お兄ちゃん、?」
「……っ!一露葉!?」
選別が始まる時と同じように黒髪と白髪の子が現れ、腕を広げていた私達はそっと下ろした。この子達、独特な空気感なんだよなぁ。
「お帰りなさいませ」
「おめでとうございます。ご無事で何よりです」
「まずは隊服を支給させていただきます。体の寸法を測り、その後は階級を刻ませていただきます」
階級は上から『甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸』と十段階ある。私達は一番下の癸となる。
「今からは鎹鴉をつけさせていただきます。主に連絡用の鴉でございます」
黒髪の子が数回手を鳴らすと上から四匹の鴉が下りてきた。ん?四匹?あれ?合格したのは五人じゃなかったっけ。
「え?鴉?これ雀じゃね?」
雀、という言葉に後ろを振り返ると黄色い子の手の甲には雀が乗っていた。あの子も連絡用なのだろうか。可愛らしい雀を見ていると、色変わりの刀をよこせと顔に傷のある子が白髪の女の子の髪を掴み揺さぶっていた。
「この子から手を放せ!放さないなら折る!」
「ああ?なんだテメェは!やってみろよ!!」
「ちょっと、お兄ちゃん!」
本当に腕の骨を折り兼ねない兄を止めようとするも一歩遅かったようだ。ヒゥゥゥ、と息を吐きボキッと骨を折ってしまった。
「お兄ちゃん……」
「ぐっ、」
「お話は済みましたか?では、あちらから刀を造る鋼を選んで下さいませ」
大きな石の塊がたくさん並べられている。この中から自分自身で選ぶのだ。鬼を斬り、自身を守る刀を造る鋼を。十日から十五日で刀が出来上がる。それまでは其々待機となる。
「……え?これが隊服ですか?」
「女性は皆そちらの隊服を着ています!」
「本当に?」
「こんなの着せられるわけないだろ!すみませんが、変えてもらえますか!?」
「無理」
「………」
「っ!!!!か、か、変えます!変えさせていただきますぅぅ!!!」
「はい、これが一露葉の隊服だ」
「…うん、ありがとう」
普段は優しい兄だが偶に般若のような顔し怒る時がある。あの顔を見た服縫製係の方は真っ青な顔をして別な隊服を手渡してくれた。