04





階級を刻むのも無事に終わり、私達は藤襲山を下山する。

「お兄ちゃん、大丈夫?」
「体中痛いけど大丈夫だ。それより、お前…生きてたんだなぁっ、よかった。ごめん。ごめんなぁ、置いてって」
「ううん。大丈夫だよ。それより、禰豆子は?」

言葉を詰まらせながらも兄は話してくれた。あの日、家族を襲ったのは鬼であり禰豆子だけ息があった。だが、傷に鬼の血を浴びてしまい禰豆子は鬼になってしまった。禰豆子を人間に戻すために鬼殺隊となる道を選んだ。そして、禰豆子はこの二年眠り続けていると。

「俺はてっきり一露葉も鬼に…」
「お兄ちゃんが町に行った後に私も薬を買いに行ったの。日が暮れるからって、おばちゃんに泊めてもらって」
「俺も三郎爺ちゃんが泊めてくれたんだ」
「ごめんね、お兄ちゃんばかり辛い思いさせて。苦しかったよね」
「一露葉こそ辛かっただろ。ごめんな。必死で」
「謝らないで。私が先に帰っていたら同じ事をしていたから」

それから、私達は離れていたこの二年間の事を話した。驚く事に銀鏡さんの屋敷がある町と兄の育手の鱗滝さんのいる山は近かったのだ。

「本当に一人で大丈夫?」
「大丈夫だよ。ゆっくり歩くから。一露葉は早く銀鏡さんの待つ町に戻るんだ」
「でも、」
「一露葉の身を案じているから。帰るんだ」

ボロボロな体を引きずる兄に諭された私は兄を見送り銀鏡さんの待つ町へと続く道を進んだ。何度も何度も振り返り小さくなる兄の後ろ姿を見つめていた。そして、日が暮れる少し前。見慣れた屋敷が見えてきた。

「ただいまー!」
「……よく、生きて戻った」
「私、入ったよ。鬼殺隊に」
「そうじゃな」
「離れ離れになっていた兄にも会えたの」
「そうか」

最終選別での出来事など様々な事を話した。ずっと話す私を見て銀鏡さんは苦笑いしながらも聞いてくれる。支給された隊服の話をした時は兄と同じく怒っていたが、それでも銀鏡さんからはとても優しい匂いがした。それから十日後、銀鏡さんから兄のいる狭霧山に行けと言われた。

「どうして?」
「鬼殺隊は死と隣り合わせじゃ。単独での任務もある。折角会えたんじゃから共に行動せい。鱗滝には話しておる」
「分かった」
「鍛錬を怠るんじゃないぞ。常に全集中の呼吸を心がけるんじゃぞ」
「銀鏡さん。本当にありがとうございました。必ずまた会いに来ます。どうか、お元気で」
「強くなれ。お前さんならできる。儂に育てられたんじゃなからな!」
「はい!」

支給された隊服を持ち、銀鏡さんがくれた羽織を着る。お母さん、花子どうかな。似合う?と、心の中で問いかける。そして、鎹鴉に案内をお願いし狭霧山を目指した。

「おーい!一露葉ー!」
「お兄ちゃん!」
「鱗滝さんから聞いて」
「迎えに来てくれたの?」
「迷ったら大変だからな」
「鎹鴉さんが案内してくれたよ?」
「……あ」
「それに、禰豆子は?置いてきて大丈夫?」
「鱗滝さんがいるから大丈夫だ」

兄と共に狭霧山の鱗滝さんの家へ行くと、日が暮れているのもあり禰豆子が外にいた。お面を付けた人の隣に立っていたのだ。

「禰豆子、?」
「ムー!」
「良かったなぁ、禰豆子。姉ちゃんに会えたぞ」
「……私が分かるの?」
「ムー!」

力強く抱きしめられ、花子や竹雄にしていたように撫でていた。瞳も爪も、人とは違う。力も強い。言葉は話せず竹を咥えているが、目の前にいるのは禰豆子だ。

「鱗滝さん、俺の妹の一露葉です」
「兄と妹がお世話になってます」
「…二子か」
「鱗滝さんは俺達と同じように鼻が利くんだ」
「そうなんですね」
「一露葉。もし、禰豆子が人を襲ったらお前はどうする」
「頸を斬り、私はお腹を斬ります」
「ほう。いい判断だ」

好きに使っていいと鱗滝さんからの許しを得て、兄が鍛えているという裏山で私も鍛えさせてもらうことにした。常に全集中の呼吸を心がけるのはしんどいし疲れるけど、私ならできるって銀鏡さんが言ってた。できるようになるんだ。