私が狭霧山に来て五日経ったころ、風鈴がついた笠を被った刀鍛冶の人がやって来た。
「俺は鋼鐵塚という者だ。竈門炭治郎と竈門一露葉の刀を打った」
「竈門炭治郎は俺です。中へどうぞ」
「これが日輪刀だ」
「あの…中へ」
兄が中へ案内するも刀鍛冶の鋼鐵塚さんは話しを聞かず、日輪刀について説明をしている。陽の光を吸収する鉄で造られているらしい。だから日輪刀で頸を斬ると滅する事ができるんだ。鬼は陽光が弱点だから。
「んん?んんん?お前、赫灼の子じゃねえか。こりゃあ縁起がいいなあ」
「いや、俺は炭十郎と葵枝の息子です」
「そういう意味じゃねえ。髪と目ん玉が赤みがかっているだろう。火仕事をする家はそういう子が生まれると縁起がいいって喜ぶんだぜ」
「そうなんですか、知りませんでした…」
「こりゃあ、刀も赤くなるかもしれんぞ」
なあ、鱗滝と家の中を覗く鋼鐵塚さんはひょっとこのお面をつけていた。鱗滝さんの隣に座る私を見て『二子か!こりゃあ楽しみだ』と浮かれ、やっと中に入ってくれたのだった。
「さぁさぁ、刀を抜いてみなぁ」
「はい」
「日輪刀は別名"色変わりの刀"と言ってなぁ、持ち主によって色が変わるのさ」
兄が刀を抜いた瞬間。刀は黒くなっていく。漆黒の色を見た鋼鐵塚さんは赤い刀身が見れると思っていたようで、兄の頬を引っ張って怒る。
「一露葉も抜いてみなさい」
「はい」
「んん?んんん?鮮やかな赤じゃねえか!これだよこれ!」
「赤い」
「兄妹でも違うんだなぁ」
私の待つ真っ赤な刀身を見た鋼鐵塚さんは再び兄に襲い掛かった。その大人気ない言動に兄が歳を聞くと『三十七だ』と返ってきたその時、鎹鴉から北西の町へ向かうように言われる。
「鬼狩リトシテノォ最初ノ仕事デアル」
「喋ってる!?」
「少女ガ消エテイルゥ!毎夜毎夜、少女ガ消エテイルゥゥ!!」
鬼狩りとして最初の仕事に向かう私達に鱗滝さんが教えてくれた。鬼殺隊の隊服は特別な繊維で作られ、通気性も良く濡れにくいし燃えにくい。雑魚鬼の爪や牙では裂くこともできないと。
「これは昼間妹を背負う箱だ」
霧雲杉という非常に軽い木で作られ、岩漆を塗り外側を固めたため強度があがっている。
「それから、これは憶測だが、禰豆子は人の血肉を喰らう代わりに眠ることで体力を回復しているのかもしれない」
「だから二年もの間眠っていたのね」
「鱗滝さん、ありがとうございます。行ってきます」
狭霧山を出発し指令のあった北西の町に到着した私達は鬼の情報を得る為に二手に分かれることにした。兄は東に、私は西に向かう。
「毎晩毎晩、気味が悪いわね」
「夜が来るとまた若い娘が攫われるのよ」
「ああ、嫌だわ」
「ほら、一昨晩も里子ちゃんが攫われたじゃない」
「和巳さんが一緒に居たのよね?可哀想に…」
「…あの!その話し詳しく教えて下さい!」
話しによると、婚約を結んでいた二人が歩いていたところ女性が忽然と姿を消した。一人、二人ではなく、今まで何人もの女性が消えていると。
「その里子さんと一緒にいた方は何処に?」
「憔悴しきってるよ」
「無理もねえよな」
「里子ちゃんを探してるじゃないかしら。昨日もフラフラと町中を歩いていたから」
微かに鬼の匂いがする。間違いなく鬼の仕業だ。鬼の仕業なら消えた人たちは十中八九喰われてしまっているだろう。兄と合流する為、兄の匂いを探していると鬼の香りが濃くなった。
「現れたのね」
濃くなる鬼の匂いを追うと、とある屋敷にたどり着いた。だが、物凄い速さで香りが移動している。姿が見えない。何処だろう。下から?
「あ、お兄ちゃん!」
「一露葉!下だ!」
私たちが地面に日輪刀を突き刺すと鬼の声がした。そして、先刻攫ったと思われる女性が浮かび上がり兄が救出する。地面から現れたのは血殺術という特殊な術を使う異能の鬼で、耳を押さえたくなる程の激しい歯軋りをしていた。