「やぁ、よく来たね」
「ご無沙汰しております。お館様」
私は今、鬼殺隊の本部である産屋敷邸に来ている。数日前に鴉ちゃんから伝達があったのだ。不思議な事に、此処に来る日はいつも快晴で心地よい風が吹いている。
「元気そうだね、一露葉」
「はい。お館様も本日はお身体の調子が良いと伺いました」
珍しく単独任務を命じられるのかと思っていたが、違うようだ。カナヲと同期で入隊した男の子の事で話があるのだとお館様は言い、その隊士について話された。
「…鬼を、ですか?」
「私は彼らを容認しているのだよ」
「どうして?」
「鬼となった妹は一度も人を襲っていない。此れは紛れもない事実。近いうちに鬼無辻は彼らと遭遇するような気がしてね」
「柱達はこの事をご存知なのですか?」
「時が来たら話そうと思っているよ」
柱よりも前に鬼を連れた隊士の事を話すのは何故なのだろうか。私たち鬼殺隊は鬼を滅する為にいるのだ。其れなのに、鬼を連れているなんて幾らお館様が容認しているからと柱達はこの事実を許す筈がない。
「どうして私に話されたのですか?」
「君には、彼らの手助けをお願いしたい」
「……え?」
「此れは任務では無いよ。君が見極め、手を差し伸べるか、否かを決めるといい」
其れが、私と彼らの為になるから、とお館様は言った。そして、その隊士は浅草で出現するという噂について調べに行っているようだ。
「彼を育手の元へ導いたのは義勇なんだよ」
「水柱様が?」
「手紙を」
「はい。此方は元水柱の鱗滝様より届いた手紙で御座います」
手紙には、鬼である隊士の妹の禰豆子さんは二年もの間一度も血肉を喰らっていないという信じ難い事実が書かれていた。そして、この禰豆子という鬼には、兄である竈門炭治郎と鱗滝様、水柱様の命が掛けられていた。
「三人の命が…」
「私はね一露葉。禰豆子には鬼無辻が予想打にしない何かが起きているのだと思うんだ」
お館様の言う手助けというのが何なのかは検討も付かないが、この兄妹には会ってみたい。そう思い始めたタイミングで、鎹鴉が戻って来て驚く報告をしたのだった。
「え?!浅草に鬼無辻が!?」
「それで炭治郎は?」
カナヲと同期である隊士は柱でさえも出逢う事のない鬼舞辻無惨と遭遇し、追手を放たれたが鬼の協力者と共に激闘し勝利したと鎹鴉は言った。
「……信じられない。鬼の協力者?」
「一露葉。竈門炭治郎から仔細を聞いてきてもらえるかい?」
この兄妹に手を差し伸べるか否かは置いておいて、私はお館様の命により隊士になったばかりである竈門炭治郎に会いに浅草へ向かったのだった。