06





私の階級が『戊』になった頃、しのぶは『丙』になった。そして、風柱様が屋敷に来る事が多くなったのだ。初めは怪我をしたのだと思っていたが、如何やら違うみたい。

「こんにちは」
「……おう」
「師範なら外に出ていますよ」
「………」
「お待ちになりますか?」
「…いや、いい」
「そういえば、隣町の薬屋にたくさん買う物があると言っていました。一人では持ち帰られないかもしれません」
「……」
「風柱様。お願いできますか?」

何も言わずに蝶屋敷を去り風柱様は隣町のある方向へ向かって行った。うん、やっぱり私の思った通りのようね。風柱様は師範を好いている。

「あれ?今、此処に風柱様いなかった?」
「隣町に行った」
「え?」

様子を見に来たしのぶのそう伝え、薬学研究室へと向かう。自分自身の血液から治癒薬と対鬼用の薬を完成させる為、私は薬学に精通している二人に協力をして貰いながら研究をしているのだ。

「本当に、私にそんな力があるのかな」
「それを確かめるんでしょ?」
「…うん」
「そんな簡単に作れないのよ。簡単に作れるなら、とっくに出来てるもの」
「そうだね」

私も、しのぶも、作業に没頭していた。扉が開く音が聞こえ顔を上げると、息を切らしたアオイちゃんが立っていた。

「アオイちゃん、どうしたの?」
「か、…っ」
「か?」
「カ、カナエ様が!」
「姉さんがどうしたの!?」
「薬屋にも、何処にも居ないと風柱様の鴉が」
「……ッ!!!!」
「しのぶ!待って!」
「離して!姉さんを探しに行く」
「うん、探そう。でもその前に隊服に着替えるよ。もう夜になるのよ、鬼が出る」

今にも飛び出して行きそうなしのぶを引き止める。今日は二人共、休暇で隊服は着ていなかったからだ。師範は鬼殺隊を支える柱の一人だ。十二鬼月の上弦の鬼でもない限り姿を消す事などは無いだろう。

「姉さんに何かあったら……」
「大丈夫よ。きっと、見つかる」
「…でもッ!」
「行くよ」

隊服に着替えた私達は日輪刀を持ち蝶屋敷を出て隣町へ向かった。隣町までの道中もしのぶは動揺を隠さずにいた。こんな状態の彼女を無理矢理連れて来て良かったのだろうか。冷静な判断が出来ないのは危険過ぎる。

「ねえ、」
「……もう大丈夫よ」

大丈夫だと自分に言い聞かせるように言う彼女の顔は不安で満ち溢れていた。隣町に着くと直ぐに薬屋へと向かい、話しを聞くと師範は此処に買い付けに来たと店主は言っていた。ほんの少しだけだが、嫌な気配がする。そして、数刻後。私はしのぶと共に来てしまった事を後悔した。