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 毎日かならず麦茶を煮出して、作業場に水筒を置きなさい。

 面倒ならば湯冷ましでもいい。

 塩分も摂ること。

 換気をするのを忘れるな。

 白い握り飯だけなんて食事はやめろ。

 たまには日光を浴びろ。

 一時間に一度は、短時間でも休憩をすること。

 徹夜作業は禁止。

 その他諸々。



 夕刻に任務を終えて私の元を訪れたカカシ。
 宣言通り、いや想像以上にたっぷりこんこんとお説教を喰らってしまった。

「あハハ...」

「ほー、こんだけ言われて笑う余裕があるとはいい度胸だね」

「カカシって先生みたい。そういうの向いてるんじゃない?」

「口煩いって言いたいの?てか話を逸らすんじゃないよ」

「はい。本当に迷惑を掛けてごめんなさい。あと、ありがとう」

 誤魔化し笑いから顔を引き締めてまっすぐにそう言うと、カカシは溜め息を深く深くひとつ落とした。

「昨日は...間に合って、ほんとによかった」

「わかってる。カカシが居なかったら、私は―」

「あのね」

 死んでたかも知れない、と言い掛けたのを彼が遮る。
 じり、と視線が絡んだ。

「詫びとかお礼なんて要らない。そんなものは、命の足しにもなりゃしないから」

 言葉がずしりとのし掛かるように重く、そこに彼のこれまでの人生が滲む。
 私は彼のこれまでの人生をほとんど知らないけれど、たくさんの命のやりとりが、今彼にその言葉を言わせているように思えてならなかった。

「......」

「それよりもっと自分を大事に......って。ま、...これは忍のオレが言えたことじゃないけど...」

 カカシは口ごもって頭を掻くと、もう一度溜め息を吐いた。

「とにかく。こんなことはもう、これきりにして」

「うん...ありがとう。あ、お礼が要らないっていうのは、わかったつもり、でも、言わないと気持ち悪いの」

 慌てて弁明する私に、カカシは右目を細め、その日初めてようやく笑顔らしきものを見せてくれた。

「......サキホってさ...昔からそう。オレが苦手なこと真っ直ぐ言ってくれちゃうもんだから...」

「え?」

「ドウイタシマシテ」

 小首を傾げ、カカシが笑う。
 照れ混じりのそのセリフを、私は確かに十年前にも聞いていた。
 観察力が鋭くてなんでも器用にこなしてしまいそうな反面、こういう不器用さがあることをさらけ出されると、なんだか妙に嬉しい気持ちになった。
 心がとても、近くにあるみたいで。
 思わず顔一杯に笑みを浮かべると、「...で?」とカカシが呟いた。
 きょとんとする私に、もう何度目かの溜め息。

「そっちも何か話があるんじゃなかったっけ?」

「あ、そうだ。そうそうそう、そうなの...!」

 昨日からのわだかまりが一気に解けたような感覚になって、にわかに満たされ、私は今日彼にここへ来てもらった最大の目的を危うく忘れかけるところだった。
 決してお説教を喰らうため、ではなかったはずだ。



式日