目が覚めた。



久しぶりにぐっすり眠れていたように思っていたのに。



目が開いたと同時に、
もう頭が働いている。
それくらいすっきりと目が覚めた。



ただ、目の前は薄ぼんやりとしか見えない。
どんなに目を見開いても薄らぼんやり。



ゆっくりと右に転がった。



シーツがこすれる音がする。



枕元に置いてある、オレンジ色の時計を見た。



3時25分。



長針と短針はそんな位置を示している。
どう考えても15時25分ではないから、
今は夜中の3時25分。



ふと耳を澄ます。



静かな寝息が2人分、
自分の周囲から聞こえてきた。



ここは女部屋。
この寝息はナミとロビンのものに違いない。



3時25分は真夜中だ。
もう少し寝たい。
少なくとも平和なうちはゆっくり寝ていたい。



両目の瞼を降ろす。



寝なくては。
寝なくては。
寝なくては。



落ち着こうと、大きく息を吐き出す。



寝たい。
早く寝たい。



頭を真っ白にして。
何も考えないように。



カチ カチ カチ カチ ・・・



普段は気づきもしない時計の音が
やけに耳に響く。



寝たい。のに。



寝たいという気持ちが強いほど
寝られないというのは本当だ。



右に、
左に、
右に、
左に。



身体を転がした。



そのたびにシーツがこすれる音がする。
もしかすると、安心して眠る2人の邪魔になってしまうかもしれない。



ため息をひとつついて。



仕方ないという気持ちとともに、
身体を起こした。



そっと掛け布団をめくり、
ベッドから足を出した。



何でこんなに眠れないのだろう。
甲板でも散歩すれば、気がまぎれるかもしれない。



2人に気づかれぬように足音を消して
そっとドアを押して部屋を出た。










------------------











こんな時間では、まだサンジくんも起きていない。
朝ごはんの仕込みの時間にはまだ早い。



そういえば昨夜のごはんは特別美味しかった。



サンジくんが3日間漬け込んだ牛肉を使って
手の込んだ新作料理を出してくれた。



食べたことが無い美味しいお肉が食べたい気分。



そう一言呟いたのが3日前のランチの時。



食事の時間はいつも賑やかで、
特にいつも隣にいる船長は大騒ぎなので
まさかその一言が聞こえているとは思わなかった。



とはいえ、そもそもお肉を食べたくなったのは
その船長が、毎日隣で肉、肉、叫んでいるからなのだが。



今晩の不寝番は誰だったか。
ウソップ?
ゾロ?
それとも・・・



そんな考えことをしながら、
足音だけには気をつけて歩いていた。



気づくと、扉の前。



この部屋は、
男部屋。



意図的ではないのにここに来るなんて。
私は欲求不満なのか。



自嘲気味に笑って、そのままその場に座った。



デッキに行って、新鮮な空気でも吸おうと思ったのに。
なぜここにいるのか。



足を抱え込んで、
メインマストに背中を預ける。



変な気配がする、など思われないだろうか。
こんな時間に。



部屋の中からは大きなイビキと
様々な寝息が
甲板まで漏れ聞こえていた。



この中に彼のイビキも混ざっているのだろうか。
大きな口をあけて、ぐっすり眠っているのだろうか。



朝になったら、
食堂に行けば
きっと会える・・・



ガチャ



唐突に、メインマスト横の扉が開いた。



驚いて、反射的にドアを見る。



誰が出てきたか、
それを確認する前に
その誰かに抱きしめられていた。



「ナマエナマエナマエ、冷てェ」



見なくてもわかる。
気配と
ニオイと
私を抱きしめるその腕の力。



冷たいと言われるまで、
自分の身体が冷え切っていることにも
気づかなかった。



急に寒さを感じて
身震いする。



「あそこなら毛布あったよな。行くかー」



私から離れて立ち上がり
ふわぁっとあくびをして
この船の船長は、私に手を差し出す。



こんな夜中に
突然押しかけてきても
なんで何も言わないの。



差し出された手を見つめたまま
動けない。



「腹へって動けないのか?」



朝ごはんはまだだしなー。
今食べるとサンジがまた怒るしなー。



そんなことを言いながら
彼は笑って私を見下ろす。



ルフィの笑顔は太陽みたいだった。



ああ、私は
あなたに会いたくて、
目が覚めたのかも、しれなくて。



こんなに薄暗い真夜中でも
あなたの笑顔だけははっきり見えて
あなたの姿だけははっきりと感じる。



答えを見つけたら
少しだけ眠気が戻ってきた。



彼に向かって両腕を伸ばして
言ったことがないワガママを。



「お腹すいたから歩けないの」



すぐに腕が伸びてきて
私の身体が宙に浮いた。



彼は私に笑いかけて
歩き出す。



抱き上げてくれた腕と
近づいた彼の身体が
ほんのり温かい。



・・・寂しかった。



自分の気持ちがわかったら、
さらにまた眠くなった。



彼の歩き出した方向から考えて
ラウンジに向かうのだろう。



ラウンジの横にはソファがあるから
そこに行くのかもしれない。



彼の首筋に顔をうずめて
そこにルフィがいることを感じる。



「眠くなってきちゃった」

「んー・・・寝るだけかー残念だなー」



残念ってどういう意味か。
夜中に押しかけた私が言えたものではないが
一応小さく突っ込んでみる。



おやすみのキスだけはしなきゃ。
せっかく一緒に寝られるのだから。



ラウンジのソファにたどり着いた頃。
私は安心して彼の腕の中で眠っていた。






24時間、君に会いたい








どんなベッドよりも心地良い腕の中で
ぐっすりと。

食堂に入ってきたサンジくんが
ルフィのことを蹴り飛ばすまで。





update---20180306





web clap

201978



Silver Moon top