藤襲山を降り、椿さんの待つ家へ帰る。私の姿を見た椿さんは力強く抱きしめ肩を震わせていた。
「おかえり」
「…っ、ただいま!」
日輪刀が出来上がるまでの間、稽古をつけてもらっていた。全集中常中を習得するべく全集中の呼吸を四六時中行っているのだ。
「止まっておるぞ」
「う〜」
「唸っておらんでやる」
ただでさえ、全集中の呼吸を使うだけでも体力を消耗する。其れを四六時中だなんて地獄のようだ。それでも習得したい。少しでも早く強くなりたい。鬼を滅殺するために。そして、私が全集中常中を会得したその日、私の日輪刀が出来上がり刀鍛冶の方が持ってきてくれた。
「さ、抜いてみなさい」
「……はい」
日輪刀は別名、色変わりの刀と言われているらしい。手渡された刀を抜き暫くすると淡い桃色に染まった。日輪刀の色によって極める呼吸が決まってくるのだそうだ。
「桃色だ」
「だな」
「桃ハ花ヲ極メル」
「わ!ビックリした!」
「鴉の言う通りじゃ。このまま極めなさい」
「はい!」
−お兄ちゃん。私ね、鬼殺隊に入ったよ。きっと、凄い剣幕で怒っているんだろうな。私、もっともっと強くなる。だから、見守っていてね。
翌日、鬼殺隊として初めての任務が告げられた。北北西の村から毎夜毎夜人が消える。老若男女問わず消えるらしい。
「一露葉。あまり無理はするんじゃないぞ」
「はい」
「此処はもう、お前さんの家じゃ。いつでも休みにきなさい」
「……はいっ」
椿さんの家を出て半日。北北西の村に到着した。まだ陽が沈んでいないからか鬼の気配は感じない。恐らく何処かに隠れているのだろう。気配を気にしつつ村の中を散策していると、とある甘味処であの子を見つけた。
「胡蝶さん?」
「…あんた」
「紫藤です」
「……知ってる」
「覚えててくれたんだね、嬉しい」
「何で座るのよ」
「え?何でって、私もお団子食べたくなって」
偶然なのか、必然なのか。私たちはこの日だけでなく何度も共同で任務を与えられていた。最初はツンケンしていた彼女も、一緒にいる期間が長くなるほど心を開いてくれたのだった。
「ねえ、いつまで胡蝶さんって呼ぶつもり?」
「え?」
「姉さんも胡蝶だけど?」
「あ、そっか。じゃあ、しのぶちゃん?」
「……しのぶでいい。私は一露葉って呼ぶから」
「うん!」
この数カ月後、彼女の姉であり後に師範となる胡蝶カナエさんは花柱となった。