「あら?」
「へ?」
「私は胡蝶カナエといいます。あなたのお名前は?」
「紫藤一露葉…で、す」
「ふふふ、やっぱり!あなたが一露葉さんね」
任務に向かう途中の甘味処で、胡蝶しのぶの姉であり花柱の胡蝶カナエさんと遭遇した。ふんわりとした話し方にこの雰囲気がしのぶとは正反対で、"おしとやか"という言葉が似合うと思ったのが第一印象だった。
「しのぶから話しを聞いて、会いたいと思ってたの〜!」
「私にですか?」
「そうだ!今度遊びに来てね」
「え!?」
「蝶屋敷の子たちも喜ぶと思うの!」
「…蝶屋敷?」
「あら?しのぶったら話してなかったのね」
蝶屋敷とは傷付いた隊士を治療し、回復するまで療養する場所で、看病や食事の準備など様々な補助をしている女の子たちと共に胡蝶姉妹は住んでいるらしい。
「カナエさんはお医者様なのですか?」
「私もしのぶも、医学や薬学にちょっとだけ詳しいの」
「薬学も…」
「そういえば、一露葉さんは花の使い手なのよね?」
「はい」
「ふふ、私もなのよ〜!一緒ね」
……あ、今の笑い方、しのぶに似てるなぁ。なんて柱に対して思うのは失礼だと思いながらも、カナエさんの屈託の無い笑顔に連られて笑っていた。
「名残惜しいけど、もう行かなくちゃ」
「あの!」
「ん?」
「……お気を付けて」
「一露葉さんも。この任務が終わったら蝶屋敷でまたお茶しましょ」
「はい!」
カナエさんとの約束を守るんだって、そう自分に言い聞かせて任務に向かった。鬼の被害が出ている町に着いたのは、日が暮れた頃だった。
「……気配がしない、?」
日が暮れているのに鬼の気配が無い。もうこの町にはいない?否、昨夜も子どもが消えたと町の人達は声を揃えて話していた。陽が出ている日中に移動する事は考えられない。ってことは、この鬼は気配を消せるんだ。
「…いた」
ー 花の呼吸 弍ノ型 御影梅 ー
「オマエ鬼狩りカァ?」
「そうよ」
「ンァ〜?柱じゃネ〜ナァ?」
現れた鬼は、今までの鬼よりも鬼舞辻に近い気配がする。其れに、この鬼、十二鬼月だ。下弦の陸と瞳に記されている。
「オマエ弱いナァ?」
「あなたもね」
「アァ?俺は強い!十二鬼月だからナァ」
「十二鬼月って、上弦と下弦に分けられてるんでしょ?あなたは下弦。下弦は全部で何人いるの?」
「陸ダ」
「じゃあ、あなたは下弦の中で一番下なのね」
自分は強いと豪語するだけのことはある。この鬼、強い。其れにこの血鬼術…毒だ。
「フハハハハ!毒ガ回ってきたんだロォ?」
「……っ、」
「残念だったナァ〜?」
「…それ、は…どう、かしら…っ」
毒が回ってふらつくし、視界も悪くなってきた。体力も限界。最後の力を振り絞るように、息を吐く。近くにある塀を使い鬼の真上に飛び上がり、体を捻った。
ー 花の呼吸 陸の型 渦桃 ー
着地と同時に頸を斬り落とす。消えていく鬼がボヤけていくのを見ながら、意識を手放した。