08





その日、鬼は姿を現さなかった。否、正確には "誰も喰わなかった" 。鬼殺隊である私達がこの村に着いたからなのか、もう移動した後なのかは分からない。ただ、何も起こらなかったのだ。


「動きませんでしたね」
「異変が無かったか聞いてみましょう」
「私は此方を」
「お願いね」


二手に分かれて鬼の情報を聞いて回る事にした。聞いても聞いても皆、口を揃えて"昨夜は何もなかった"と言う。奇妙だ。気配もそうだけど、この村全体が何か変な感じがする。


「"昨夜は何もなかった"と、口を揃えて言ってます」
「そうなのよね」
「何か変じゃないですか?」
「操られてるのかしら」
「ああ!良かった!まだ居った」
「どうされました?」
「隣町でも娘が消えたらしい!さっき商人が言ってたんだ」
「此処から隣町まではどのくらいで行けます?」
「半日もあれば着くよ」
「そうですか。ありがとうございます」


お爺さんを見送った後、私とカナエさんは二手に分かれる事にした。鬼が出たかもしれない隣町へはカナエさんが向かい、この村には私が残る事に。


「すぐ戻るから一露葉ちゃんは残ってね」
「やはり私も一緒に…」
「鬼が出たらすぐ伝えに来てね、鴉ちゃん」
「任セテ!」
「お気を付けて」
「行ってきます」


半日で隣町に着く。それなら、カナエさんが此処に戻るのは約一日後。その間に鬼が現れるかどうかは分からないが、十二鬼月だとしても、師範が戻るまでは死守しなければならない。


「あれ?」
「姉さんは?」
「隣町の視察に。しのぶは何で此処に?」
「任務で近くに来たから様子を見に」
「そう」
「それで?」


鬼は現れていないのに妙な気配に包まれているこ事、村人達が口を揃えて何も無かったと言っている事。そして、隣町で人が消えた事など知り得た情報をしのぶに話す。


「隣町だとしても鬼が出たなら、姉さんもあんたも気付くはずよね?でも気付かなかった」
「そうなのよね」
「姿を隠してる?」
「日中なら分かるけど夜も?」
「……行くわよ!」
「行くって、隣町に?」
「姉さんと合流するの!」
「え!?」
「何か嫌な予感がする」
「ちょっと、やめてよ」
「間違いなく十二鬼月でしょうね。姿を隠せるなら上弦の鬼かもしれない。共に居るべきよ」


しのぶの鴉を残し、私達は隣町へ向かった。彼女の言うように妙な胸騒ぎがする。そして、町に到着したのは夜が明けそうな早朝だった。