09





町に近づくにつれて濃くなっていく気配。こんな重く嫌な感じがするのは、あの日に近い気がする。


「上弦かも」
「急ぐわよ」
「コッチダ!」


鴉の案内でカナエさんの元へ向かう途中で鬼の気配が消えた。夜が明けるから逃げたのか。気配に気を取られながらも角を曲がると血塗れになったカナエさんが倒れていた。


「姉さん!!!!」
「…カナエさんッ、!?!!!」
「姉さん!!!!しっかりして!!!姉さん!!!!」
「…し、のぶ…鬼殺隊を辞めなさい。あなたは頑張っているけれど…本当に頑張っているけれど、多分しのぶは……」
「……」
「普通の女の子の幸せを手に入れて、お婆さんになるまで生きてほしいのよ。もう…十分だから…」
「嫌だ!!!!絶対辞めない!!!姉さんの仇は必ずとる!」
「私も必ずとります!」
「言って!どんな鬼なの!どんなやつにやられたの!!!カナエ姉さん!!言ってよ!お願い!」
「師範!!!お願いします!!!」
「こんなことされて、私、普通になんて生きていけない!!!姉さん!!」


私達の気迫に負けたのか、カナエさんはどんな鬼だったのか教えてくれた。


「頭から血をかぶったような…鬼だった」
「……」
「にこにこと屈託なく笑って、穏やかに喋って…」
「それで?!」
「武器は使っていましたか?!」
「…その、鬼の使う武器は…鋭い対の扇子だった……。しのぶ…、一露葉ちゃん……お願いよ……生きて」


" 生きて "この言葉がカナエさんの最期だった。そして、隠に発見されるまで私達は子どものように声を出して泣き叫んだ。


「……行こう、しのぶ」
「嫌!!!!姉さんが、姉さんが!!」
「…っ、そんなの分かってる!!!分かってるわよ!!カナエさんの仇をとるんでしょ!?今の私達じゃ、絶対にムリ!もっともっと、強くならなくちゃ!」
「………」
「しっかりしなさいっ!あの子達が蝶屋敷で帰りを待ってるのよ!そんな顔をして帰るの?!誰があの屋敷を継ぐの!?しのぶしか…、あなたしかいないのよ!?」
「……私じゃ…姉さんみたいになんてなれない」
「あなたはカナエさんじゃないんだから、同じじゃなくていいの。しのぶはしのぶのやり方であの屋敷も、あの子達も守っていけばいい。それに、私もいる」
「一露葉……」


そして、カナエさんに代わって、妹の胡蝶しのぶが蝶屋敷の当主となる。蝶屋敷には連日のように傷付いた隊士達が療養の為に訪れ、哀しみに暮れる暇もなく時間だけが慌ただしく過ぎていったのだった。