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現在の時刻は、19時。何であの時大人しく帰宅しなかったのだろうと、数時間前の自分の選択を後悔していた。


「……やば」


次はいつこんな風にゆっくり買い物が出来る時間が取れるか分からない。行くしかない!と、思い立った私は、現在とあるショッピングモールにいる。あれやこれやと何店ものお店を回り買い物を楽しんでいたが、あまりの人の多さに完全に酔ってしまったのだ。様子を見ようと座ったのが最後、動くことができない。


「ナイスタイミング〜」
『どうした』
「人酔いしたみたい」
『すぐ行く』
「え、?」
『待ってろ』


決して迎えに来て欲しかったわけではない。だって、私車で来てるし。迎えに来たら私の車はどうするの、なんて思ったところで既に電話は切れているのだ。ああ、頭が痛い。


「大丈夫ですか?」
「へ?」
「顔色が悪いようでしたので」
「人に酔ってしまって…」
「あぁ、なるほど」
「昴さん大丈夫そ…って、藍さん?!」
「え?コナンくん?!」
「おや。お知り合いでしたか」
「藍さん、大丈夫?」
「…あ、うん。ちょっと人に酔っちゃって」
「一人で来たの?」
「うん」
「その状態では危ないですし、良ければ送りますよ」
「……え?」
「この人は沖矢昴さんって言って、ボクの知り合いだから怪しい人とかじゃないよ!」
「沖矢…昴、さん?」
「東都大学の大学院に通っているただの大学院生ですよ」
「…あ、いや、怪しんでるとかじゃなくて」
「もしかして安室さんが来るの?」
「安室さん?」
「うん、藍さんは安室さんの彼女さんだから」
「ほお。君が」
「彼を知ってるんですか?」
「知ってますよ」


違う。この人、ただの大学院生じゃない。話せば話すほど、違和感を覚える。生きているという報告も確証もないが、私の直感が言っている。沖矢昴だと名乗るこの人が赤井秀一である、と。


「さあ、コナンくん。我々は退散しようか」
「へ!?あ、う、うん!そうだね!」
「では、また」


逃げるようにいなくなったと思ったら、程なくして降谷と風見がやってきた。なるほど、降谷と相対することを意図的に避けてるのね。


「ふ…」
「まだ顔色が悪いな」
「車は私が」
「ああ、頼む」
「ごめんね。お願いします」
「動けるか?」
「…無理っぽ、い」


顔を覗き込みながら優しく問いかける降谷の顔が揺らぐ感じがして、気持ち悪さが増していく。とても動けそうにない。


「……なん、で?」
「どうした?」
「肩貸すとかさ、他にもあるよね?」
「動けないんだろ?あの場に長時間いるとお互いマズイ」
「だからって…」
「恋人なんだ。おかしくないだろう?」
「……今は降谷なんでしょ、違うじゃん」
「違くないさ」


逆に目立ってる気がする。どんなに抵抗しても降谷は下ろしてくれるはずもなく、私は駐車場までこのまま連れて行かれたのだ。


「ありがと」
「だいぶ良くなったみたいだな」
「ん。あ、そうだ、会ったわ。沖矢昴に」
「何!?」
「降谷達がくる少し前に。コナンくんと一緒にいた。どんな仲なのかは分からないけど、ただの知り合いではなさそうだった」
「へえ、あの子が」
「確証はないけど、私も感じたわ。あの人が赤井秀一だって」
「なら間違いはなさそうだな」
「え?」
「お前の勘はよく当たる」
「当たるのは降谷の勘でしょ」


降谷の勘は昔から恐ろしいほどよく当たっていた。警察学校時代もそうだ。どこかで監視しているんじゃないかと疑うくらい当たり過ぎていたから。


「もう大丈夫だから」
「残念」
「面白がってるでしょ」
「いや?割りと本気だよ」
「……」
「今日はゆっくり休め」
「そっちも」


助手席側に移動してきたと思えば、さっきの姫抱きをしようとする降谷の手を制止して自分で車を降りる。ふと、降谷の顔を見ると不服そうな顔はしているが、何だか機嫌が良さそうだった。