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私は今、" 日本の警察の救世主 " と世間から囁かれ持て囃されているとある生徒の家を訪れていた。当の本人は事件とやらで不在らしい。何の関わりもないはずの少年がどうしてかこの家に居て私を通してくれる。


「どうしてコナンくんが?」
「事件の捜査で戻れないから代わりに話を聞いてくれって新一兄ちゃんに頼まれたんだ!」
「自分の代わりに小学生に話を聞いてもらわなくちゃいけないほどの難事件がこの日本で起きてるなんて驚きだね」
「…う、うん、ビックリだよね!」


もちろん潜入する前に工藤新一に関する報告書にも目を通しているが、彼らの関係性については不明だと記されていた。


「それにしても、君と工藤一家はどういう関係なの?」
「どうして?」
「家の人たちが留守の間、君は自由に出入りできるみたいだから」
「ボクの家族と仲良しだからだよ!」
「幾ら家族ぐるみの仲だとしても、他人に鍵を預けるなんてよっぽど君のことを信頼しているのね」
「あー!ボク、お茶を出し忘れてた!持ってくるからちょっと待ってて!」


この話題から逃げるようにして彼はリビングを出て行く。話せば話すほど、穴ぼこばかりのピースがピッタリとはまっていく感じがする。私の仮定が正しければ、あの子が工藤新一なのだろう。それなら今まで感じていた違和感にも納得がいくのだ。


「はい!藍さんはミルク入りのコーヒーだよね」
「ありがとう」
「それで、新一兄ちゃんに何の用事だったの?」
「進路と修学旅行の話」
「それだけ?」
「それ以外に何があるの?」
「他にありそうな顔してたから」
「…それって、他にも " 何か " あるってこと?」
「何かって?」
「例えば、君が工藤新一くんだとか」
「……どうしてそう思うの?藍さんって新一兄ちゃんに会ったことないよね?」
「有名人だもの。よーく知ってるよ」


切り返しが思い付かないのか、それとも何かの作戦なのだろうか。彼は少し黙った後、小学生とは到底思えない程の顔つきと声色で悪い人じゃないよねと聞いてきた。


「どういう意味?」
「藍さんは…知ってるの?安室さんの正体」
「知ってるって言ったら、君はどうするの?」
「……続きは俺が聞こうか」
「赤井さんッ?!なんでその格好で!」


この家に彼の他にも誰かいるとは思っていたけど、まさか赤井秀一の姿で現れるとは思わなかった。タイミングを測って出てくる算段だったのだろうが、彼も変装を解いて出てくるのは想定外だったのだろう。


「やはり生きていたのね、赤井秀一」
「一人で来たようだな」
「 "今日は" 工藤くんの担任として来たから」
「赤井さんの事も知ってるんだね、藍さん」
「彼ほどではないけど」
「ねえ、藍さんって何者?教師なんて嘘だよね」
「彼女は安室くんの仲間で、奴らの敵だ」
「さすがFBI」
「え?!じゃあ、藍さんも公安?!なんで高校に?」
「ヒミツ」
「安室さんの恋人っていうのはウソ?」
「…そうね」
「マジかよ」
「私からも聞いていい?コナンくんは工藤新一なのよね?」
「……蘭には」
「他人が言うことじゃないでしょ」


安室が公安の人間だということを知っていたのには驚きだが、彼が薬で小さくなったという現実の方が衝撃だ。彼らの追う組織を知れば知るほど、恐ろしい組織だと実感する。降谷はそんな組織で壊滅に向けて今も一人で潜入しているのだ。


「藍さん、電話いいの?ずっと鳴ってるよ」
「…げ」
「安室くんか?」
「ですね」


私が工藤邸に行くことは伝えていないし、来る時に周辺に偵察隊がいないことも確認済だ。今日は特に会う予定もないはず。


『暫くハロを頼む』
「…分かった」
『じゃ』
「気を付けて」


ハロを頼むってことは組織の仕事で数日帰ってこないのだろう。メールでもいいのに。短い電話を終え振り返ると、小さな少年がニヤニヤしながら私を見ていた。