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「何?」
「俺ら明日戻んだわ」
「それで?」
「オマエも高専来い」
「はぁ?」
「高専までの護衛が今回の任務ね。んで、ちょーっと厄介なヤツらに狙われてんだよね、アイツ。懸賞金とかあってさ」
「その任務と私に何の関係があるわけ?」
『悟様との面識の有無を知られた可能性が高く、藍様の身に危険が及ぶのを阻止する為ではないかと』
「そーいうこと」
「若菜は?」
「アイツは大丈夫だろ」
「ほんっと、そういうところよね。危険だと分かっているのに、置いて行くわけないでしょ」
『否。お連れしない方が宜しいかと』
「どうして?若菜に何かあったら……」
『お連れすると云う事は、連中以外の者にも若菜様は悟様方と関わりが有ると知れ渡る事になります』
「………分かった」


幸いな事に、私達も帰りは明日の予定だった。東京に着いてからも近場の観光を予定していたのだが、昨晩のうちに事情を説明していた私達は途中の駅で若菜と分かれ呪術高専に到着した。


「皆、お疲れ様。高専の結界内だ」
「ここが呪術高専……」
「これで一安心じゃな!」
「悟、本当にお疲れ」
「二度とごめんだ。ガキのお守りは…っ」


結界内に入り五条が術式を解いたほんの僅かな隙を背後から現れた謎の男が五条を刀で刺したのだ。其れは、強い邪気を感じたのとほぼ同時の出来事だった。


「…ッ」
「五条!?!」
「悟!」
「問題ない」
「…大アリでしょ?!」
「内臓は避けたし、呪力で強化したから刃をどこにも引かせなかった。マジで問題ない。ダイジョーブ」
「…」
「天内優先。アイツの相手は俺がする。傑達は先に天元様の所へ行ってくれ」
「油断するなよ」
「誰に言ってんだよ。オマエも傑達と行け」
「死んだら許さないわよ?」
「ハッ、誰に言ってんだよ。オマエこそ、傷一つ作ったら許さねーぞ」
「……誰に言ってんのよ」


五条と分かれ夏油くん達を追っていると、地響きと同時に先刻まで居た場所から物凄い衝撃音が聞こえた。此れが " 五条悟 " の力なのだろう。先刻より膨大な五条の気とあの男の邪気を感じる。


「悟が心配かい?」
「……嫌な予感がして」
「大丈夫だよ。悟はああ見えても最強だからね」
「皆さんもお気を付けて」


この先は高専関係者以外は立ち入り禁止区域で、私は入り口付近で待つ事になった。後に五条が来ると言っていたが、嫌な予感も変な胸騒ぎも止まらない。


「!」
『お嬢、高麗こま呼んで』
白狐はくこ!?」
『悟がマズい』


人目に付かない道を私を背に乗せ本来の姿で高麗が走った。そして、数十分前まで居た場所には血だらけの五条が倒れていた。