09





高校二年生の夏、私は久しぶりに日本で長い休暇を過ごしている。今は、中等部の時にルームメイトだった谷岡若菜と二泊三日の沖縄に来ていた。


「やっふぉー!」
「若菜?!」
「藍ちゃんもおいでよー」
「急に走ったら危な………」


ビーチに着くなり走り出す若菜に危ないと伝えようと息を吸った瞬間に視界に入り込んできたのは、見慣れた白い髪の男だった。


「めんそーれー!!」
「……」


あんなに楽しそうに騒ぐ姿は見たことないというくらい、五条は楽しそうにはしゃいでいた。男女二人ずつで沖縄って、ダブルデートのようだ。私には全く気付いていないようで、一人の女の子と海を走り回っている。二人とも長身で目立つなぁ、とぼんやり眺めていたら上から黒い何かが降ってきた。


「キャーーーーー!」
「ウヒャヒャヒャヒャ!」
「すっごい飛んだぞ!」
「悟。笑ってないで謝らないといけないだろ」
「ンァ?大丈夫、大丈夫」
「大丈夫なわけないだろ。コイツがすみません」
「大丈夫だって。ね、藍ちゃん?」
「……どちら様でしょうか」
「んもぉー、冷たいなぁ〜。俺と藍ちゃんの仲じゃん?」
「私には他人の頭上目掛けてナマコを飛ばすような最低な人に知り合いはおりませんが」
「おい、悟。ふざけてないでちゃんと謝れって」
「いや、マジで大丈夫だから。コイツ、俺のだし」
「は?」
「"俺の女"とか言うならぶっ飛ばすよ?」
「藍ちゃんには無理っしょ」


正に、売り言葉に買い言葉だ。よーし、やってやろうじゃない。私だって少しは成長したんだから!自分よりも遥かに高い五条を見上げるように顔を上げると、疲労を隠しきれていない五条と目が合った。


「……コレは任務中?」
「そーね」
「昨日から寝てないの?」
「そー見える?」
「隠せてないよ」
「そーお?」
「少なくとも、私とそこの彼にはね」
「その子が悟とどういう関係なのかは気になる所だけど、隠せてないね」
「いつから術式解いてないの?」
「ほほー。そこまで分かるようになったん?すごいじゃーん」
「あのねえ!人が心配してるっていうのに!」
「嘘。あの藍ちゃんが俺のこと心配してくれてんの?やべー、泣きそう。涙出ねーけど」
「悟。そろそろ時間だよ」
「んーーー、傑。戻るのは明日の朝にしようか」
「大丈夫なのか?」
「問題ねぇよ。オマエもいるし。それに愛しの藍ちゃんもいるし」
「悟。この間別の子連れてなかったか?」
「………」
「オマッ、言うなよ!」
「知ってる」
「へ?」
「アナタが最低のクズだってこと。知ってるから」
「え、は?なんで知ってんの?!」
「"お互い自由に"だもんね」


泣き真似をしながら私に抱き付く五条を振り払い若菜の元へ戻った。だが、その後すぐに五条に捕まり何故か私達は任務中の彼らと過ごす事になったのだった。