紫藤家での暮らしにも慣れてきた頃。私はこの先の未来永劫、自分を悩ませ続ける事になる少年と出会った。
「誰、オマエ」
「……アナタこそ誰?」
白い髪に碧い眼。子どもでも見惚れる程の美形の少年はとてつもなく口が悪かった。
「俺のこと知らねーんだ」
「…?知らないけど、誰?」
「なーんにも知らされてねーのか。カワイソ」
「何が?」
「いーねー、自由で」
「なんにも知らないくせに……」
「オマエより知ってるけど?」
「……何を知ってるの?」
「教えねー」
口だけじゃなく性格も悪いこの少年は、手をひらひらさせて、 " じゃーね、藍ちゃん " と言って去っていった。
「…え、なんで名前知ってんの!?」
思った以上に声が大きかったみたいで、尊さんが血相を変えて走ってきた。
「藍ちゃん!どうした!?」
「……尊さん」
「ん?」
「今、変な子が」
「変な子?」
「白い髪で、碧い眼をした子が」
「?!…何か言われたかい?」
「ううん」
「そうか」
「ねえ、尊さん。あの子はどうして私の名前を知ってるの?」
あの子の名は、 " 五条悟 " 。お互いの祖父が知り合いなのもあり私の名前を知っているのだろうと、尊さんは言った。本当にそれだけなのだろうか。あの子は、五条悟は私の知らない何かを知っている。そして、尊さんはその " 何か " を隠している。
「あの子の名前は覚えておくといい」
「…どうして?」
「悟くんは、"この世界"を変えてくれるだろうから」
「世界?」
「いや、いいんだ。今は」
「?」
あの日以来、五条悟には会うことはなく、私の中から様々な疑問が薄れてしまっていた。いや、面倒だから考えることを止めたと言った方が正しいのかもしれない。あの声を聞くまでは。
『巫女様』
「?」
『此方です。巫女様』
「?」
突然聞こえてきた声は何故か私を "巫女" と呼ぶ。周囲を見渡しても声の主は居ない。幻聴かと思えば、再び "巫女様" と聞こえたのだ。
「……?」
『ああ、巫女様。お会いしとうございました』
「…は?」
声が近くなり、後ろを振り向くと、そこには深々とお辞儀をする青年が立っていた。初めて会うはずなのに、どこか懐かしく感じる。
「あなた誰?」
『私は、貴方様にお仕えしております。琥珀と申します』
「…琥珀…?」
『力を封じているのですから、私が分からないのも無理はありません』
「力?」
『貴方様は巫女神様の血を引いておられ、その膨大な霊力を継承しているのです』
「その巫女神って人は、私のご先祖様ってこと?」
『左様で御座います』
「…そのご先祖様に仕えてるって、あなた何歳?!」
『私共に歳などありませんよ』
「ないの?」
『私共は、式神…或いは精霊といったところでしょうか』
不思議なことに、琥珀の姿は私にしか視えていない。彼によると、私の封じている力を解放すればある程度の霊力を持つ人には視えるようになるらしい。ただ一人を除いては。