04





中学生になり半年経った頃。連絡も無しに、あの人が突然やって来た。


「大変、大変、たいへーーん!」
「どうしたの?」
「門にイケメンがいる!」
「へえ」
「ちょっと藍ちゃん。興味なさすぎ」
「え?だって興味ないもん」


彼女は私のルームメイトの谷岡若菜。人懐っこくて明るい、クラスのムードメーカー。入学当初、人間不信だった私の冷め切った心を溶かしてくれたのが彼女だ。下校時刻なのもあり校内は騒然としているのは、彼女の云うイケメンの所為だろう。


「遅い」
「へ?!」
「げ」
「遅すぎ。何時だと思ってんの?待ちくたびれたんだけど」
「イ、イケメン!」
「あなたが勝手に待ってたんでしょう?」
「藍ちゃんの知り合い!?」
「そーそー、知り合い。俺さ、コイツに用あんだよね。借りていい?」
「どうぞどうぞ!じゃ、藍ちゃん、夜ね」
「え?ちょ、若菜!?」


アッサリと若菜に差し出されてしまった。邪魔、と人集りを掻き分けた五条悟に手を引かれ車に乗せられる。何処に向かっているのかを聞いても、答えは返ってこず大きな屋敷に着いた。


「降りろ」
「何処なのか教えて」
「あ?家」
「なんで?」
「うるせーな。早く来いよ」


………琥珀、ごめん。この人を味方に付けるのは無理だよ。私が嫌。何でこんなに自己中心的なの?サッサと歩いていく五条悟の背中を追って大きな屋敷の中を進んでいく。


「ん」
「ん?」
「入れ」
「あ、うん」


入れと言われたのは、目の前にいる五条悟の自室だった。余計な物は何一つ置いていない広々とした殺風景な部屋だ。


「アイツは?」
「?」
「いつもお前にくっ付いてんだろ」
「ん?」
「人払いしてるから出てこい」
「……」
「おい、呼べ。お前が呼べば出てくんだろ」
「琥珀」
「へえ。琥珀っつーの?お前」
『やはり、貴方は私がお視えなのですね』


年々、私の霊力は解放されつつあるが全て戻った訳では無い。現に、琥珀が視えているのは私だけだ。其れなのに、目の前の五条悟には琥珀が視えている。前に話していた私以外の視える人物はコイツだったの!?


「…ま、いーや」
「は?」
「お前さ、何の力もねーなんて嘘だよな?」
「どういうこと?」


こんな所まで連れて来られて、一体何なんだ。詳細を聞けば、彼は面倒くさそうに話してくれた。巫女神の末裔である紫藤家の孫娘には何の力も継承していないが、世継ぎには継承されるかもしれないと祖父が縁談を持ち掛けてきた、と。