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『藍様には、呪術や呪力といった "呪い"に関する知識は御座いません』
「はぁ?」
『何も教えず嫁がせる気なのだと思います』
「お前んとこも大概だな」
『今は藍様以外で私を視る事ができるのは貴方しかおりません』
「今は?」
『藍様は "まだ" 巫女神の力を封じたままなのです』
「で?コイツのジジイは何の力もねえって?」
『左様で御座います』
「その力っつーのはいつ解放されんの」
『分かりません』
「私にしか解けない…らしい」
「らしい?」
『巫女神様の霊力は膨大なのです。その膨大さ故に、身体が持たない事の方が多く、数百年掛けて封じる力も進化し続けているのだと思います』
「んな事、五条家の俺に話していいわけ」
「そうだよ!よく分かんないけど、五条悟も御三家ってやつなんでしょ?」
『貴方は他の人とは違いますから』


" 他とは違う " という琥珀の言葉に、彼は吹き出して笑っていた。そして、二人のやり取りを聞き自分の無知さを思い知らされる。この先の未来の事は分からない。だけど私にも、知る権利はある筈だ。


「あの、さ」
「何」
「教えてくれない?その、御三家とか、呪い?とか。知らないままなのは嫌」
『では、私がお教え致しましょう』
「そーしてくれる?」
「それで?お祖父ちゃんが縁談持ってきたのは分かったけど…何で連れ出したわけ?」
「俺はさ、ジジイ共の言いなりになんてなりたくないわけ」
「私だってそうよ」
「そこでだ。お前、俺の嫁になれ」
「はぁあ?!人の話聞いてた?!」
『何か意図が御ありで?』
「まーね」
「それ拒否権はあるの」
「しない方が身のためだけど?俺の婚約者になれば、他の連中に狙われる事も無くなる」
「なんで言い切れるの」
「最強だからじゃん?」


どうしよう。会話が全く成り立たないし、この上から目線なのがムカつく。だが、琥珀も尊さんも " 五条悟 " は世界を変えると言う。この意味も呪術というやつに何か関係があるのだろうか。


「チッ、戻ってきやがった」
「?」


彼の舌打ちと同時に琥珀は気配を消し、戸が開く。其処に立っていたのは、五条家の現当主だった。私と五条悟を交互に見て、"ようこそ"と一言告げ去っていったのだった。そして、その数日後、五条悟との婚約が決まったと祖父から連絡があり、私は彼と婚約する事になってしまったのだった。