07





「…ね、ねえ」
「んァ?」
「私の後ろに何かいる?」
「でっけーヘビ」
「!?!!、!?」
「バッカ!オマエ…叫ぶなよ?」
「………」
『全く、貴方はいつの世もその姿で現れますね』
『おい、琥珀。まさかこの小娘が巫女様だとか言わないだろうな』
『貴方って人は…』
「残念だったな。そのまさかだ」
『…………』
『藍様。彼は私と同じく巫女様にお仕えする者です』
「なぁ、もしかしてコイツも人とかになんの」
「"も"って事は琥珀も?」
『私共は人型では御座いませんから。巫女様にお仕えする過程で人型に変幻するようになりました』


琥珀の本当の姿はどんなのだろう、と考えながら眺めてみる。琥珀を眺めたところで分かる筈も無いのだが、想像が付かない。そんな私に気が付いたのか琥珀は微笑み、私の後ろにいるヘビさんの名を呼んだ。


大蛇たいじゃ
『へいへい』
「今のが変幻か」
「……」
『藍様?』
「……うーん、前に会ったことあるような気がするような」
『お前みたいな小娘。俺は知らん』
『口を慎みなさい。藍様は我らの主人であられるお方だぞ』
『封印だか何だか知らんが、俺はこの小娘が気に食わんのだ』
「まるで私を知っているかのような言い方だね」
『私共は、巫女神様の力を受け継ぐ者が誕生したその日からずっと、その者にお仕えしておりますから』
「"お前ら" を視るくらいの力が、その継承者に戻ってなくても側に居続けなきゃなんねーのは気に食わんよな」
「どういう意味?」
「別に?ただ、そー思ってるヤツらが他にもいるってことだろ」
『ハッ、流石だな。五条悟』
「…帰る」
「待ってろ。送る」
「必要ないわ。一人で帰れるから」


一人で帰るという私を完全に無視して、五条悟は送迎の車に私だけを乗せた。出発した車の中から五条悟を見ると、上を眺めている。そして、ほんの一瞬彼から目を離しただけだが、五条悟の姿は何処にも無かったのだった。


「消え…た!?」
「なにか?」
「あ、いえ。なんでもないです」


その夜。私は摩訶不思議な夢を見た。私は私ではない他の誰かで、見た事も無い景色なはずなのに、どこか懐かしく感じていた。


「大蛇。またお前はくだらん事を…」
『くだらなくないさ。たまにはこーいうのも必要だろ?いっつも村の奴らに良いように使われてんだから』
「全くお前ってヤツは。良いか?私は巫女じゃ。助けを乞う者達に手を差し伸べるのが私の務めなのだ」
『そうですよ。村の者達が感謝の意を表さず、気に食わなくとも!巫女神様にお仕えし、力となるのが我々の務めですよ』
白狐はくこ。お前さんも村の者達を悪く思うな。全ては彼奴らの所為じゃ」
『その呪霊を生み出すのも村の者たちですが』
「…そうだな」


これは、巫女神様の記憶?目の前にいるのは、琥珀と大蛇。それから、白狐と呼ばれていたもう一人も琥珀達と同じ精霊なのだろうか。呪霊の言葉も出てきた。巫女神様も、呪霊を祓っていたのだろうか。それならどうやって?呪いでしか祓えないはずだ。巫女神様には、呪術が扱えたのだろうか。それなら、私には巫女神様の術式というものが継承されているのだろうか。なぜ、今、この記憶を見ているのだろう。何か意図があるのかな。なんて思っていると、遠くの方で目覚ましが鳴っているのが聞こえて、私は目が覚めたのだった。