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あれから半年。相変わらず私の封印された霊力は解放されていないが、琥珀のお陰でそれなりに呪霊や呪術について知識を習得していた。


「ねえ、五条」
「何」
「前に尊さんが言ってたの。五条は "この世界" を変えてくれるって」
「は?何?世界?」
「その時はさ、大袈裟って思ってたんだけど。強ち間違いじゃないのかもしれないね」
「全く話が分かんねーんだけど」
『悟様の六眼や相伝術式をお伝え致しました』
「あーー、なるほどね」
「"最強"って豪語してたのも、その眼に関係あるの?」
「やけに食い付くじゃん。そんなに気になる?俺のこと」
「いや?別に五条の事は気になってない」
『だそうだ。諦めろ、悟』
「アァん?」
『良しなさい』


いつの間に仲良くなったんだろう。気が付けば、五条の呼び方が悟になっていた。私は未だに小娘と呼ばれるのに。そんな事を考えながら五条を見ていると、視線に気付いたのか目が合ってしまった。


「何」
「いつの間に仲良くなったのかと思って」
『こんな小僧と誰が仲良しだって?』
「ヘビ野郎のくせに」
「はーい、ストップ!喧嘩させに来たわけじゃないんだから」
『フンッ』
「で?オマエ何しに来たんだよ」
「五条はもう高校どこにするか決めてる…よね?」
「呪術高専」
「?」
『呪術高専とは、呪いを祓う術や知識を学ぶ場所です』
「学校まであるの?!」
「オマエは?」
「あ、そうそう。私ね留学する事にしたの」
「ハァ!?初耳なんだけど」
「今日言おうと思ってたから」
「オマエさ、俺と婚約してるって忘れてねーよな?」
「忘れてないけど?」
「じゃー、なんで留学なんだよ」


五条は、まるで小さな子どもが不貞腐れているかのような言い方をしながら外方を向いている。口も性格も良いとは言えないけれど、可愛いところもあるのね。


「知ってた?私さ、高校卒業したらすぐに五条家に嫁ぐんだって」
「代々そうらしいな」
「って事は、高校生の間しか自分のやりたいように出来ないんだよね」
「……だな」
「ちゃんと戻ってくる。だから行かせて」
「それさ、俺がノーって言ったら行かねーの?」
「五条は言わないでしょ?」
「フハッ!んじゃ、お互い自由気ままにやりたい放題やってやろーじゃん」


この言葉通り、五条は私が留学した後にやりたい放題やっていたらしい。直接本人から聞いたわけではないが、女性問題がとにかく酷く、婚約者がいる事を伏せ取っ替え引っ替えしている噂があると叔父の尊さんが嘆いていた。