「この中に、帳は自分で降ろすからと補助監督を置き去りにした奴がいるな?そして帳を忘れた」

術師や呪霊を外から見えなくする結界である帳を降ろし忘れた事により、例の任務の出来事が凡ゆる報道機関に爆発事故として取り上げられていた。現に今も担任が話しをしている後ろで、その様子が流れている。

「名乗り出ろ」
「先生!犯人捜しはやめませんか!?」
「悟だな」

それはもう名乗り出ているようなものじゃん、と思いながら拳骨されている五条を見ながら藍は思っていた。指導と言う名の説教が終わると、夜蛾は全員に教室に戻るよう指示を出しこの部屋を出て行った。教室に入るなり五条は自分の席にドカッと座って、サングラスを貸してという家入に渡しながら視線は離れて座る藍に向けられていた。

「そもそもさぁ、帳ってそこまで必要?別に一般人に見られたってよくねぇ?」
「駄目に決まってるだろ。呪霊の発生を抑制するのは何より人々の心の平穏だ。そのためにも目に見えない脅威は極力、秘匿しなければならない」
「分かった分かった!弱い奴等に気を遣うのは疲れるよホント」
「弱者生存。それがあるべき社会の姿さ。弱きを助け強きを挫く。いいかい、悟。呪術は非術師を守るためにある」
「それ正論?俺、正論嫌いなんだよね」

帳に関して愚痴を言う五条とそれを諭していた夏油であったが、段々と口論に近いものになってきてると感じ取った藍は止めようと席を立った。そして、いつの間にか二人からそっと離れてきた家入に腕を掴まれ逃げるように教室を飛び出していた。

「え?ちょ、」
「あんなクズ共は放っておけばいいよ。逃げるが勝ちってね」
「……教室吹っ飛んだりしないかな」
「ふはっ!やりそー」

腕を引かれるまま走っていると、いつの間にか外に出ていた。このまま進めば校庭だ。どこまで行くのだろう?と思った矢先、パッと手が離された。そして、カチッと音がしたと思えば家入は隠し持っていた煙草に火を着け、吸った煙を吐き出していた。

「戻らなくていいの?」
「……戻りたいの?」
「別に」
「藍ってさ、なんで高専来たの?」
「呪術について学びに」
「ふーーーん。そうは見えないけど。ま、いっか」
「……あの、家入さん」
「硝子でいいよ。家入って堅苦しいし」
「あ、はい。じゃあ、硝子…さん」
「堅い」
「…硝子ちゃん?」
「ハ?!ない!それはない!」
「ふっ、あははは!」
「やっと笑った」
「?」
「気付いてなかったのかもだけど、編入初日から小難しい顔ばっかしてたから」
「小難しい顔…」
「こんな感じ」
「絶対嘘!」
「え〜?どうだろうね。嘘じゃないかもよ?」
「嘘。だって、硝子……ニヤけてる」
「よくできました」

藍が硝子と呼ぶと家入は嬉しそうに微笑みまるで小さな子どもを褒めるように藍の頭を優しく撫でていた。それが何だかくすぐったく感じて、お互い目が合った瞬間笑っていた。

「!」
「ん?どーした?」
「五条くんと夏油くんだ」
「げ。探しに来た感じ?」
「ううん」

少し先にいるであろう五条と夏油の気配を感じた藍は、自分たちを探しに来たのかを神経を尖らせて探っていたのだが、全く違ったようだ。彼らが此方に近づいてくるにつれ、二人の声が聞こえてくる。

「悟。前から言おうと思っていたんだが、一人称が俺はやめた方がいい」
「あ"?」
「特に目上の人の前ではね。私、最低でも僕にしな。歳下にも怖がられにくい」
「はっ、嫌なこった」
「あ」
「ん?」
「硝子と紫藤さん」
「んなとこでサボってたのかよ」
「一服してた。で、そっちは?任務?」
「ガキんちょの護衛」
「二人とも早く戻った方がいい。ヤガセンが探してるから」
「やば。藍行くよ」
「傑ー、俺らも行くぞー」
「あ、待って!」
「?」
「二人とも…気をつけて」
「はぁ?誰に言ってんの」
「悟。そんな言い方良くないだろ。紫藤さんごめんね、ありがとう。でも大丈夫だよ。私たち強いから」
「…知ってる。けど、気をつけて。嫌な予感がする」
「ハッ。呪力はないけど予感は当たりますーってか?」
「悟」
「別に伝えないよりはいいと思っただけ。何もなく無事に終わるといいね」

五条の言う通り、藍の予感は昔からよく当たっていた。嫌な予感は特に当たるのだ。自分達は最強だと豪語している彼らには要らぬ心配なのかもしれないが、油断は禁物である。それは、藍自身が一番良く分かっていた。

「まぁ、ああ見えてアイツら強いから大丈夫だよ」
「……うん。そうだといいね」

その三日後。藍の予感は的中した。都立呪術高専筵山麓結界内にて、五条らが謎の男に襲撃されたのである。