せきじつ

 ☩ ☩ ☩

 シーザー・クラウン引渡し時間丁度、海軍大将藤虎とドフラミンゴに、ローは対峙していた。
 ドフラミンゴの七武海脱退の嘘の情報はメアリーの言う通りのものとなり、歯を食いしばり愛刀を握りしめる彼にとっては最悪のニュースに他ならない。だが、予想ができていた分、大分マシだ。

 「おい、あまり驚いてねぇみてぇだな」

 こめかみをヒクつかせるドフラミンゴに、ローは無言で懐からでんでん虫を取り出す。それは十字架を掲げたひとつの黒いでんでん虫。
 まさかと目を見開く彼は、次に声を聞いた時、はっと息を飲むこととなる。

 『HELLO元天竜人のミスター。無粋な盗み聞きを失礼。でんでん虫では3度目ですね』
 「っ!?、」

 今回策として、戦闘による時間稼ぎもあるが、さらにメアリーの先読みの予想、場を掻き回す会話も用意してあったのだ。
 話というのは時間を食う。それがメアリー相手であれば、海兵も海賊だって尚更食いつき、相手の位置を把握しようとするものだ。それも、これまでの暗殺や殺戮などの実績のある彼女だからできること。
 さらに言えばドフラミンゴはメアリーのことを欲しがっている。自分が勝つと確信して、いや、信じて疑わない人間なら尚のこと時間を使っても余裕でいられるものだ。

 『どうも〜フレバンスの白い悪魔ことメアリーちゃんでーす!!
 どうです?驚いた?驚きましたよねぇ?私があなたの根深い話を知っているだなんて』

 できるだけゆっくりと、余裕のある風を装って彼女は言葉を並べる。それだけでも、稼げる時間は大いに増えるのだから。

 「生きている思ってたがこりゃあ予想外だなぁ……だが、聞くが何故俺が元天竜人だと?」
 『予想外だなんてそんな謙虚にされなくてもいいんですよ。それに、そんなのとっても簡単なこと。ミスターの言ったように大きな手品には以外に簡単なところにタネがある。この国の歴史がそれを物語っている』
 「フッフッフッ……俺の事を調べあげてたってことか」
 『正確にはミスターが根城にしているこの国をね。依頼人のことも殺す相手のこともきちんと調べるのが私のポリシーだったので。でもあなたを調べようとすれば周りが邪魔をするでしょう?
 だから、ミスターの国を調べることにしたの。ここを自分の根城にするにはそれほど何かがあると思ったから。
 そしたらドンピシャだったので私驚いたわ!リク王家の前がドンキホーテ一族だったなんてね』
 「……賢すぎる女っていうのも考えものだなぁ…ますます欲しい」
 『でも、全て調べることは出来なかった。だから私知りたいの。貴方の過去、その根深い話ってものをね』
 「お前が聞いてどうする。そこまでしっているというのに」
 『言ったでしょう?殺す相手のことも調べあげることがポリシーだって。あなたがどんな人間でどんな風に世界を憎悪しているのか、それが知りたいだけ』
 「フッフッフッ!!いい女にそこまで言われちゃあ、話をしねぇ訳にもいかねぇなぁ。丁度お前も知りたがってたんだろう?ロー」
 「……そうだな、どんなものなのか興味がある。あの日、俺を引き入れた理由もそこにあるんだろう」

 ローの言葉に機嫌よくしたドフラミンゴほにいっと笑うと、語り出した。
 昔昔の話を……

 ❉❉❉
 
 その昔、今から800年前も昔の話……
 20の国の20人の王が世界を中心に集い……ひとつの巨大な組織を作り上げた。
 ───────それが現在の“世界政府”
 「創造主」である王達は……それぞれの家族を引連れ「聖地マリージョア」に住むことにした。
 「アラバスタ」のネフェルタリ家だけはそれを拒否し……正確には19の家族だが
───────今もなお住み続け……世界に君臨するその“世界の創造主”の末裔たちこそが……“天竜人”だ!!
 ────────つまり800年前その19の国からは“王族”がいなくなったんだ。
 各国では当然……次の王が選出され新たな王族が生まれることになる。我が国ドレスローザで譬えるなら、メアリーの言ったように新しい王の方が「リク一族」世界の“創造主”として「聖地マリージョアへと旅立ったのが……「ドンキホーテ一族」だ。

 ❉❉❉

 「じゃあ、お前は本当に天竜人だったのかドフラミンゴ!!」
 「“だった”と言うなら正解だ。
  ───────────今は違う」
 「?!」
 「“血”とはなにか……!?“運命”とはなにか……!?
 ───────おれ程数奇な人生を辿っている人間もそういまい……フッフッフッフッ」
 『……成程、確かに理解したわ。“だった”というのなら、貴方の人生は天竜人でなくなった瞬間に本当の意味で計り知れないほどの地獄を味わい尽くしたのでしょうね……』

 重たい口調で言うこのグリーンビットのどこかにいる彼女に向かい、ドフラミンゴは手を伸ばす。

  「メアリー、元々、お前はローよりもこっち側の人間だ。固定概念なんてものを捨てたいかれた女。そんなお前を本当に受け入れられるのは俺くらいなもんだ!」
 『……ふふふっあっははははは!!!』

 大声で笑い声をあげ、ピタリと突然それはやみ、遠くで音がしたと思えば、一閃の光が、ドフラミンゴの頬をかすめ、衝撃音と共に大きく砂浜を削った。
 銃痕が殺意を物語り、ねぇ、と低い声でメアリーは言う。

 『あまりふざけたこと言ってると次はその脳髄撒き散らさせて四肢を切断しますよ?』
 「こええ女だ」

 肩をくすめたドフラミンゴは、でも懐かしいなァと己の頬に手を当てる。

 「俺がつけた頬は傷跡なく治っているか?」
 『ええ、手加減のおかげでね。こうしていると初めて会った時のお茶会を思い出すわ。どちらも地雷を踏み抜いて、欲しいものがあって欲しいものがなくって……最後に手を伸ばしたのは貴方だった……ドフラミンゴ』
 「やっと名前で呼んでくれたなぁ」
 『私、正直そんなに気に入られる覚えありませんよ』
 「俺にはあるのさ。お前みたいな女、いや、人間はほかのどこを探しても存在しねぇ!!
 だからこそ欲しい!!だからこそ奪いたい!!今ならメアリー、お前自ら俺のモノになってくれるならローの身柄だけは必ず保証してやろうじゃねぇか!!」
 「ふざけるな!!メアリーを渡すわけないだろう!!」
 「ふざけてなんていねぇ……俺ァただ交渉をしているだけだ」

 フッフッフッと笑うドフラミンゴを、ローは睨みつけ、今すぐにでもこのでんでん虫を切ってやろうかと思うが、まだ話を長引かせるためにはそうもいかない。
 そんな時、すいやせんがすこしよろいしでしょうかと、声がかかる。

 「白い悪魔のお嬢さん、まさかお前さんもローさんの同盟に?」

 それは素養買いにも沈黙を保っていた藤虎からのものだった。

 『あら、同盟じゃなく私は仲間入りみたいなもの……ねぇ、ロー?』
 「仲間みたいなものではなく俺のクルーだ」
 『うふふ、改めて言われると嬉しいわねぇ』
 「海軍殺しが、七武海の仲間だなんて笑えねぇ話でさぁ」
 『笑えない話ねぇ……あまり私を舐めないで貰えます?大将藤虎
 私は汚くて臭いものに蓋をしたくなくてやっていただけのこと。本来なら貴方方が、処理しなくてはいけないものを私がやっていた。
 海軍殺しという名前、私嫌いなんです。
 それにしても大将が自ら汚いものを見たくなくて目を潰すだなんて、臭いものに蓋をし続けることがとうとう出来なくなった証拠なんでしょうかね?
 まあ、そんな瞳を潰して1人閉じこもっても見聞色の覇気で見えてしまう貴方だからこそ私は蛆虫程度にしか見えていませんが。
 目を背けたいから目を潰す。でも目が見えないからこそさらに見えるものがある。大変馬鹿らしい話です』 
 「こりゃあ痛いところを着いてくるお方だ。だが白い悪魔のお嬢さんも人のことを言ってる立場で?」
 『ふふっ心配をどうもありがとう。けど、どう?私のことがあなたに見える?』
 「!」
 『声しか聞こえない見えない相手を貴方はどう倒そうとするのか見ものだわぁ……私はじっくりゆっくり息の根を止める派だからきっととっても気持ちのいいものになりそう』
 「相変わらずの悪魔ぶりじゃぁねぇかメアリー」
 『貴方に名前を呼ばれてもミジンコほども嬉しくありません。先程ローを殺したいと言った貴方は私の殺戮対象でしかないのですから』

 温度のない冷たい物言いに、その場にいたシーザーと海兵は鳥肌を立て、でんでん虫を通して間接的にも敵意を向けられたドフラミンゴは身震いをした。
 そして思う、なんて心地の良い殺気だと。これを近くで浴びてみたいという欲求が叫ぶ。

 「残念も何もねぇが、コイツは俺のモノだ。根っからの俺好きなんでな。今更鞘変えなんてもんもする玉でもねぇ。諦めるんだなドフラミンゴ」
 「諦めるかどうかはこれからの流れ次第じゃねぇか?
 今のこの状況!!!どう考えても不利なのはお前だロー!!メアリーはお前のためなら自分の命を簡単に投げ出すだろうよ……そんな状況を作ればいいだけの話だ」

 ニコッと笑い手をごきっと動かすドフラミンゴは、そう言うと、おい、と藤虎に声をかける。

 「ローの処分はどうなってる藤虎!!」
 「……まだ軍の新参者のあたくしには天夜叉の旦那さんもちょいと“七武海”としてのルール違反をなさってる情報も入っていやす……
 そちらさんの方が先程言った“ジョーカー”って名はあだ名かなにかで?」
 「フッフッフっ!!おれをしらべたきゃあ……それなりの覚悟で周到に裏をとってものを言うんだな!!
 それで“海軍”はどう答えを出した!!」

 ☩❉☩❉

 もっと話を長引かせたかったがここまでのようだ。
 舌打ちを打ちたい気持ちになりながら、ローの帽子を被った可愛らしいでんでん虫を傍に置き、臨戦態勢をとる。
 南東ビーチ、見聞色の覇気を使い藤虎と同調しながら、砂場の様子を覗き見る。

 『……報じられた“麦わらの一味”の件記事通り同盟なら“黒”!!彼らが……ローさんあんたの部下になったのなら……“白”だ!!
 返答によっちゃあ……あっしらの仕事はあんたさんと“麦わらの一味”の逮捕ってことになりやす』
 『おいなんだその判定は!!!そんなもん……ウソつきゃ終いじゃねぇか!!』

 キーキーと喚くようなシーザー・クラウンの声がして、本当に耳障りだと思ったが、いい反応だ。
 私たちはこのことを予見してた。だから手は最初に決めていた。ここでこの2人をできるだけ足止めすること、そして、その瞬間にシーザー・クラウンを最速でゾウまで届けることを。

 『“麦らわ”と俺に上下関係はないっ!!!記事通り“同盟”だ!!!』

 ローの大声がビーチに響き、藤虎が刀を構えるのをみて、私は引き金に指をかける。
 懐にでんでん虫がしまわれる音がして、ローも臨戦状態に入ったようだ。

 『では称号剥奪で……ニュースはそれで済めばいいが……』

 ヴォンッ!!と紫色のひかりの輪が空に向かって飛んでいく。すると、上空から隕石が降ってくることを直ぐに確認でき、私はすぐにローに向かうそれを撃墜するため、引き金を引く。
 武装色の覇気をまとったそれで隕石の核となる場所を破壊、並びにローに降り注がないよう、銃弾で隕石の割れた破片を破片で飛ばし、ドフラミンゴに当たるように調節する。
 念の為にルームを使い残った僅かな細かなそれを砂浜の砂とシャンブルズしたローには損害はなく、本来使うはずだった体力を温存できただろう。

 「CLEAR、どう?ロー怪我は無い?」
 『お蔭さまでな……だが、目が見えるかどうかの次元じゃねェな……』
 「それは上場、あなたは自分の体力の温存を優先して私が完全補助するから」
 『言われなくてもそのつもりだ』
 「!」
 『頼んだぞ、メアリー』
 「〜〜ッ、!」

 ああ、ローったら本当に狡くてかっこよくて仕方の無い人。そんなこといわれたら……守らずに居られない。何をしてでも必ずあなたの本懐を共に遂げてみせる。

 『元帥の教育はどうなってんだ!!野良犬がァ!!』
 『へぇ どうもほんの……腕試しで……1人別の方がお越だったようですが……』

 怒鳴るドフラミンゴに、私を探そうと覇気を使おうとした藤虎を見て、意識を集中し、同調をして気配を誤魔化す。そうしてるうちにもう一度、息付く暇もなく紫の光が一回りも大きい隕石を呼び寄せられる。
 それを感じとり直ぐに追撃の砲弾を空に打ち上げた。結果は命中。空で砕けたそれは、ローには当たらず、先程の隕石の衝突で深いクレーターになった溝に吸い込まれ爆発した。

 『さすがは七武海を名乗るだけある』
 『おい藤虎そいつァ俺の獲物だぞ』

 ドフラミンゴからの攻撃の未来が見え、普通のライフルに持ち替え瞬時に弾を6発、打ち込まれる数だけ発射する。
 撃ち落とされる糸の玉をみて、ドフラミンゴは銃弾が出てきた方をむく。

 『そこかァ?』

 その声の後、視界の中で前方に左側にある薔薇が切り落とされるのを見て、さてはて、やはりそうあぶりだしてくるかとスナイパーライフルに切りかえる。

 『メアリー!!』

 叫ぶような声を聴きながら、慎重に銃身を構え、2発撃つ。それはひとつは角度を変えるためのもの。
 武装色の覇気を纏ったひとつの銃弾はドフラミンゴの足を撃ち抜く。ぐっと言う声と、また別のバラが切り倒されるのを見て、口元が三日月に変わる。
 やはり、正確な位置を把握出来ていないようだ。
 銃撃音で把握しようにも、こうしてしまえば聞こえるものも分からなくなってくるだろう。

 「問題なくCLEAR、ロー、シーザーが逃げようとしてます。手足を撃ち抜きますか?」
 『いや、治療諸共面倒だからやめておけ。これから撹乱をする。やることは分かるな』
 「ええ勿論」

 ローはグリーンビットの森の中に入っていく。それを追いかけようとするドフラミンゴ、藤虎に対してスモーク弾を大量投入。特性の強烈な花の匂いのするそれは、嗅覚をも麻痺させ視界を奪う。
 目を瞑り、深呼吸をしてまた引き金に手をかけ次は武装色の覇気を纏ってない弾を数発発砲。弾で弾をいくつか弾かせながら、次はドフラミンゴの腕を狙うが、かすり傷をふたつ負わせる程度になってしまった。

 「フッフッフッ……あのクソアマがァ!!!」

 大声で、島中に響き渡るほど大きな声で叫ばれ、何処だメアリー!!と名前をよばれるも、出ていくつもりは無いので無視を決め込む。
 藤虎にも打ち込みたいが、“本当にもしもの時のため”必要な人材なので、下手に殺すことは出来ないし、見聞色で私を見つけられる唯一の存在だ。最低限の損傷で済ませるのが無難だ。
 ドフラミンゴが森の中に入っていく気配を感じ、薔薇の茎を滑り降ちながら、細い細い糸。彼が雲にかけたそれを覇気を纏った弾丸で狙い撃つ。ぷつぷつぷつと刃物のような形状をした弾丸は糸を焼き切るように飛んでいき、天夜叉は羽をもがれた鳥のように地面に落ちる。

 「くっ、」

 私に撃ち落とされたのが分かったのか、彼は手をごきっと動かし、次は野生の木々に糸をかける。私は糸が張り付いた断面を削るように撃つことで、彼を自由に飛ばせないようにした。
 今まで自由に飛んで移動していた分、大変なストレスになることだろう。

 「フッフッフッ……先に私を見つけろって言うメッセージかなにかか?なぁ?メアリー」

 苛立ちをぶつけるように、ドフラミンゴは1番近くにあった薔薇を輪切りにし、衝撃波でスモークは晴れてしまう。

 「ローどこに行った?時間稼ぎをして今度は何を企んでやがる」

 走り出すドフラミンゴに、彼が輪切りにしたバラの茎に乗る藤虎。重力を操る彼は、上からの捜索を決めたようだ。
 私はなるべく2人の死角に入る位置を保ちつつ、髪の毛の銃器化をそのままにして、木の根を走る。
 ローがサニー号にいるナミたちに連絡を入れられるまで、持ちこたえるのだ。

 私がキツイ匂い付きのスモーク弾を使用した理由はふたつある。ひとつは相手の嗅覚を鈍らせるため、2つ目はローに彼らの存在を知らせるためだ。
 キツイ独特な花の香りがした瞬間身を潜めれば、あまり体力を使わずに済む。藤虎ほどの見聞色の覇気であれば見つかる可能性は高いが、気配の入り乱れる場所で私が混乱するようにそれを乗っ取りさえ出来れば、一時的な無力化は可能なはずだ。

 藤虎の周りに岩などがうき始めるのを見て、それをローにぶつける気なのはすぐに分かる。それに対して、私は対戦車ライフルで足元の茎を狙い打てば、覇気で気がついたのか、直ぐに銃弾を無効化され、代わりに私の方に向かって数々の岩やらが、重たい音ともに降り注ぐ。

 それを避け、もう1度足元を狙おうとすれば、直ぐに隕石が2度落ちてくる未来が見え、それに備え、ローの気配を探ればここから反対の北側に向かって走っているようで、一緒にジョーカーと耳障りな声で叫ぶシーザー・クラウンの声も聞こえる。これなら南側に落としても問題は無さそうだを

 狙いは空。
 撃ち落とすはこれから降ってくる隕石。
 南側に破片が落下するよう核の部分に照準を合わる。対戦車ライフルに覇気を纏わせ容赦なく最大威力で打ち込む。
 そうすれば粉々に砕けた隕石は小さくなってさらに降り注ぎ、後方にいる海兵たちを襲う。
 ぎゃぁああああ!!という叫び声を聴きながら、ポイントを移動するために走り出す。もはやヒラヒラしたワンピースが邪魔で裾を破けば元着ていたローの服の姿に変わり、これならまだ走りやすい。後ろを向き、続いて墜ちてきたそれをまた同じように撃ち落とす。
 衝撃波で身体が浮き、地面にたたきつけられそうになるも、髪を操り宙返りをしてその場をしのぎ、勢いのまま私は包帯だけ巻き付けた足で走り出す。
 ドフラミンゴがローのすぐ側まで迫っていたからだ。



 ☩☩☩

 何度もでんでん虫を鳴らし、ようやっと出た瞬間、作戦通りシーザーを預けるという会話をした直後、背後から気配を感じ即座にでんでん虫を切った。

 「フッフッフッ、そこか?ロー!」
 「くっ!」
 「ジョーカー!」

 輪切りにされた植物が落下し、道を塞ぐ。涙をうかべるシーザーはドフラミンゴを呼ぶがそれを全く無視し、ローはただ北側の海に向かって走る。
 刹那、近くで雷鳴が鳴り響き、それがナミのものであると予想したローは歯を食いしばり脚に力を入れ、シーザーを引きずるが、そこでまた邪魔が入った。
 藤虎による妨害だ。降ってきた隕石に次こそは切るべきかと考えた瞬間、重たい発砲音がし、粉々に隕石は砕け散り、メアリーがローを背中で庇うように立っていた。
 ガチャっとでんでん虫を切ったメアリーは、冷たい視線を藤虎とドフラミンゴに向け、飛ばされる糸を避け、岩を撃ち落とし、牽制するようにマシンガンで足元を狙い打つ。

 「どうも対面では二度目ましてミスター」
 「おいおい、さっきはちゃんと名前を呼んでくれてたじゃねぇか……つれねぇなぁ」
 「ここまで来てようやくわかる程とは、末恐ろしいものだ白い悪魔の」
 「あなたこそ、よく私が分かったものです。蛆虫から青虫程度にランク上げでもして差し上げましょうか?」

 クスクスと笑いながら、メアリーは全銃器を彼らに向け、舌なめずりし、照準を合わせる。
 同時に、ローはメアリーに背を向け走り出す。彼女なら何とかすると信じているからの行動だ。今1番しないといけないこと。それはシーザー・クラウンをサニー号に連れ戻し、ここから遠ざける事。ローの中で今1番捨ててはいけない手札が彼だ。

 「おいおい、男が女を置いてくとはひでえ話じゃねぇか。なあ、メアリー?」
 「あらそう?信用してくれてるってことだと私は思うけど」
 「とはいえ本当はもう限界なんじゃないかァ?
 見聞色の覇気に武装色の覇気を使い、ローが受けるはずだった隕石を全て片付けて俺達の相手をしきった。なら、疲労はピークのはずだ。 同じ超人系。貯蓄をいくらしてようが、短時間のエネルギー消費は激しかっただろう」
 「!……そうね、貴方の言う通り……もう、本当はたっているのもやっと」

 驚き、緊張で冷や汗が流れる。ドフラミンゴに言い当てられたことは図星だった。メアリーは震える脚を何とか押さえつけ、立っているし、見聞色の覇気は使いすぎて気持ちが悪く、頭がパンクしそうだった。でも、だけれど彼女には立たなければならない理由がある。
 ───────全てはローのために……
 狂信的だと思われてもいい。どんなふうに見られても、私はあなたを守ってみせる。とうの昔に悪魔の実にこの身を売り渡したのだから。

 「でも、もうちょっと、相手をしてもらうわ」

 震える手を持ち上げ、目の前で注射銃に変身させると、昨夜シーザーに作らせた薬を注射した。毒々しい色をした紫色はみるみるうちに彼女の体に吸収され、大きく心臓が脈打ち、轟々と血液が体をめぐり、身体が熱くなっていく。
 はあ、はぁ、と荒くなる呼吸に口元を三日月にかえ、彼女はあっはははは!!と笑い声をあげ、両腕で自分の体を抱きしめる。
 くらい瞳に強い闘志が灯り、ジャキッと銃器が音を立てた。

 「さあ、第2Rといきましょう」

 微笑みもなく、メアリーはそう言うと銃撃を開始し、火薬の濃い匂いと共に弾幕がはられ、ドフラミンゴたちはそれを避けようとするがそれを予期していたかのように銃撃は隙を狙ってくる。
 しかも、全ての弾丸が武装色の覇気を使っているとなれば、こちらも覇気を使って対抗せざるおえない。なぜ、今まで疲れきってたっているのもやっとな女にそんなことが出来たのか、それは至極簡単なこと。
 シーザーに作らせた薬品──────────寿命と引き換えに力の前借りをする薬。
 簡単に言えば、活性剤にドーピング剤を混ぜたようなものだが、それに身体の能力を暫く100%扱えるようにするという作用を混ぜ合わせたのだ。結果的に、激しい刺激に体は耐えきれるはずもなく後遺症として寿命が縮まる。だが、通常以上の力を30分間出すことが出来る。

 「逃がさないッ!!」

 目から血を流し、耳からも血を流しながらも、メアリーは弾幕でドフラミンゴを捕らえ、その腕を撃ち抜いた。グゥッ!!とこえをあげられ、鮮血がまい散るのをみて、次はと止まらずにメアリーは体を動かす。

 「はぁっ、はぁ……っ、あぁあああ!!」

 叫び声を上げながら、今までで最高練度の見聞色の覇気を扱う。未来予知をする度に頭をハンマーで殴られたような感覚がしたが、今のメアリーにはそれに構ってる暇はない、いや、構うことが出来ないほどに、意識が高揚して、その痛みすら心地よいと感じてしまっているのだ。
 このままではシーザーを取り返すことが出来ない。焦るドフラミンゴだったが、そこで藤虎が動いた。
 重力をつかい、メアリーの動きを止めたのだ。上から押しつぶされるそれに吐血しながら、彼女は膝をつき、手を地べたにつけた。

 「ふじと、ら、っ、」
 「暴れるのもここまでに」
 「ぐううっ!!」

 メアリーの存在がどこにあるかさえ分かれば、藤虎にも攻撃は可能である。そして彼女にとって最悪なのは、悪魔の実の相性が最も悪いと言っても過言ではないことだった。重力を使われればすべての弾幕か無駄に終わってしまう可能性がある。たがらこそ今まで藤虎の覇気に紛れるようにして身を隠していたのだ。
 好戦的に言ってはみたものの実は言うと内心の焦りはあった。この近距離で藤虎から隠れることができるかどうか分からなかったから。
 結果的に意識が強くなり、理性のリミッターも外れてきたことで見つかってしまう自体になり、半拘束状態にされてしまった。

 「フッフッフッまた後でだ、メアリー」

 飛んでゆくドフラミンゴに、己に刀を向ける藤虎。上がる重圧に、爪が剥がれるほどに地面を握りしめたメアリーは行かせるものかと対戦車ライフルだけを動かし、真下の地面に向かって発射した。
 衝撃で身体が飛び、背後のドフラミンゴにそのまま飛びつき指先の血液の刃で糸を切断する。
 ズゴゴゴっ!!と地面に2人転がり落ち、メアリーはドフラミンゴを押し倒すようにカチャカチャと銃火器をむけ、荒い呼吸をする。

 「いかせ、ないわ!!絶対にっ!!」

 血だらけの手で白いシャツを掴むめば血が滲み、それを汚し、ぽたぽたと垂れる血涙はドフラミンゴの頬を伝った。

 「何故そこまでする……ローにそれほどの価値はねえ!!!」
 「価値があるかどうかは私が決める!!私の決断だ!!私の命も!!私の願いも!!彼のためなら投げ捨てる!!昔日せきじつの時から決めていた」
 「ローはそんなこと望んじゃねぇだろ!!」
 「貴方には関係のないこと!!それが本当にたとえ過ちだったとしても!!」

  グッとドフラミンゴの首に手をかけ、血の爪をめり込ませようとしたその時──────────

───────「シャンブルズ」

 視界が切り替わり、メアリーはメリー号に乗っていた。そのには怒り心頭のローがおり、またたきする彼女は、は、?と、ただ口を開けていた。
title you