まちがいだとわかっていても
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夢のような日々だった。泡沫の夢。ただただ優しくて、そして幸せな日常。
そんなものが流れるのはあっという間で、私にとって、瞬きのような時間だった。それほどに、人を殺すための鍛錬というのは、自分の心を削り、なおかつ、これからフレバンスを食い荒らし、見捨てる国々や、海軍に強い恨みの念を心の中で燃やし続ける炎を灯すには十分すぎた。
ローが10歳になり、毒に犯されながらも、フレバンスの人々は陽気に祭りを開く。
そして彼の妹が珀鉛病に倒れたその時から、フレバンスの虐殺が始まった。病に次々と倒れる人々を見た。各国から隔離され、逃げ出そうとするものは銃殺され、フレバンスの国の王は国外へ逃亡した。
私はわざと国王は逃がした。あの王も、王家の人間全員が病を患っているのだから、どの島にも降りれず、食物は無くなり、いずれ餓死するか、海王類の餌になると考えたからだ。
態々私が手を出す前に、自ら死にに行ってくれるとは、とても行幸。
そのままこの国を見捨てた罰を受ければいい。そう思い、私は支度をした。
フレバンスの人々が周辺国家へ暴動を起こし、大量虐殺が始まるその瞬間のために。
1番最初殺したのは、メアリーの……私の両親だった。彼らは素晴らしい薬師で、珀鉛病の毒素を何とか相殺するための薬品を作ろうとし、失敗して逆に病に更に犯され、ほとんど意識のない状態にいた。眠っているふたりを綺麗に並べて、花を飾り、今まで育ててくれたことに感謝をし、脳幹を撃ち抜く。
脳幹を打ち抜けば、人は一瞬で、痛みなく死ねる。
顔に傷がついてしまうのが残念だけど、でも、苦しんで死ぬよりも一瞬で痛みも何も感じずに死ねる方がよっぽど楽だろうと思ったからだ。
次に殺したのはシスターと学友たちだった。
避難船があると騙された彼女達が他国の兵に撃ち殺される瞬間、逆に私が兵士たちを撃ち殺した。
あまりのことに驚いたシスターは、涙を流して私の名前を呼んだ。
そのシスターを見て、私は微笑んだ。
「こんばんわシスター。祈りの時間ですよ」
「貴方は、なんてことをっ!それに、その格好は…!」
「珀鉛病患者を助ける人間なんてもう居ません。あたりを見て回りましたが、他の子供も同じような手で殺されていました」
「そんなっ!!父様達のぶんまで、生きるって決めたのにっ、そんなことって、」
膝を着く学友を一瞥して、私は自分の右手をサイレンサー付きの銃に変え、シスターに向ける。
「いま団体で動くのは危険です。なにより、相手は容赦なく私たちを射殺し、火炎放射器で殺してきています。外にたとえ出られたとしても、珀鉛病の症状を見られてしまえば、確実に殺されます」
「なら、ならばどうしろと言うのですか!!この子達は何の罪もない!!この国の人々には、なんの罪もないと言うのに、」
「だから、私があなた達を殺します」
「は?何言ってんのよ、メアリー、」
戸惑い震える学友達に簡単だよ、左手で脳幹の部分を指さす。
「ここを一発で撃ち抜けば痛みも何も感じずに死ねる。怖いのも一瞬で終わる。だから、そのために私は来たの…苦しんで死ぬ姿を見るより、私はみんなが苦しまずに逝けるように、そう考えてきたんだよ」
「メアリー、私、まだ、死にたくないっ!!死にたくないよぉ!!」
「だったら苦しい死に方を選ぶ?それならそれでいいけど」
「ひっ!?」
「メアリー、あなたの言うことは分かりました。ですが、それは貴方がしなくてもいいはずです。私がすれば、いい事です」
「シスター!!?」
「いえ、シスターには祈りを捧げてもらわないと困ります。それに、血を被るのも、泥を被るのも、ひとりだけがいい。なにより、シスターにはみんなを神の元まで案内する役目が残っているのですから」
「メアリー、」
「シスター、祈りをお願いします」
泣き叫ぶみんなを見て、そして私を見て、シスターは膝を着く。すると、諦めるように、泣きながら、学友たちもみんな膝を着いた。目を瞑るその姿を見て、私は髪の毛にも意識を集中させた。長い髪は、人数分の銃を形成し、私は弾がこもるのを感じ、一斉に射撃した。
何人もの崩れ落ちる姿を見おくると、祈りを捧げていたシスターが目を開け、後ろを振り向いた。死んだ子供たちの姿を見て、大粒の涙を流す彼女を見て、私はゆっくりと髪の毛を元に戻し、シスター呼ぶ。
「ごめんなさい、シスター。私、本当は知ってたの。珀鉛病のこと。この国がもう手遅れだったこと」
「!?」
「だから、私は私の手で助けられるものを助けようとした。けれど失敗しました。私の能力で珀鉛を取り出そうにも、死んだものからしか取り出せない。だから、私はこの方法をとると、3年前に決めていたのです」
懺悔する私に、シスターは深呼吸をして、ぎゅうっと、力一杯私を抱き締めた。それに答えるように抱きしめ返し、シスターの顔を見上げれば、強い瞳をした人が、そこにいた。
「死んで行ったあの子たちはきっとあなたに酷い感情を持つと思います。けれど、私は貴方のその行動に救いのあるものだっと、そう考えましょう。きっと神もお許しになってくれるはずです。
ごめんなさいメアリー、あなたに辛い思いをさせてしまって、本当に、ごめんなさい。そして、願いが届くのであれば、貴方だけでも生き延びてっ!生き延びて、大人になって、いつか、幸せを、手にしてください!!」
「…ありがとうございますシスター、でも、いいんです…私は覚悟してここに来たのですから」
シスターから離れ、私は彼女の鼻先に銃を向け、微笑んだその顔に銃弾を撃ち込めば、血液を頭から身体にかけて被る。その血を拭わず、私は彼女から貰った十字架のネックレスを握り、それにキスをした。
「…願わくば、彼女たちの次に幸福が訪れますように」
背を向けて、私はローがいるであろう病院に向けて脚を向け、駆ける。視界が赤く、そしてぼやけて滲んで、仕方なかった。
トラファルガー家の診療所に忍び込むように中に入れば、すぐにローのお父様とお母様に見つかった。2人とも大変焦っていて、私の姿を見た瞬間怪我の治療をしようと医療道具を取り出そうとする。その瞬間を狙い、私は正確に彼らを撃ち殺した。
「は?」
トラファルガー・ロー。最愛にして幼馴染である、彼の目の前で。
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倒れる両親と手を異様な形に変えて、先から煙を出す誰かの血を被った女の子────────自分の幼馴染であり、家族同然の少女、メアリーの姿を見て、ローは混乱しその場にへたりこんだ。
真っ黒なシャツに、短いズボンを履き、首にはシスターからの十字架がかけられている。ショートブーツ…それらは、血にまみれて汚れている。
「やっほーロー!やっぱりここにいたんだね!」
にっこりと笑い、陽気にそんな事を言う彼女のアンバランスさと、倒れ、そのまま血を流す両親をみて、見比べて、震える手で指さす。
「めありー、お!おまえ、おまえっ!!」
「あ、ローのご両親のこと?大丈夫だよ。痛みも感じずに一瞬で死んだから、恐怖も何も無かったよ!それより、ラミちゃんは?
あの子、珀鉛病が進んで苦しそうだし、見つかったらきっと外の兵士は伝染病っていう節を信じてるから、火炎放射器で焼き殺されちゃう!
その前に、優しく、痛みのないように殺してあげないと!」
目の前の彼女が何を言っているのか、ローには理解できなかった。殺す?誰を?妹を?なんで?
そう疑問符が浮かんで、呼吸がどんどん荒くなる。
「大丈夫だよロー。ローも痛みがないようにしてあげるし、きちんとみんなのところに送ってあげるから」
天使のような微笑みも、何もかもが、今のローにとっては気持ち悪くて仕方なかった。吐き気が込み上げてきて、嗚咽し、手で口を抑える。すると、大きな音が廊下から聞こえてきた。
真っ黒く染った双眸を細めて、ゆっくりとメアリーは歩く。白い防護服を着た銃を持つ彼らに向い、メアリーは自分の髪の毛を散弾銃に変え、彼らを撃ち殺す。何度も、何度も、倒れたからだにも容赦なく打ち込み、凍えるような瞳で屍を眺める。
その姿を見て、恐怖からローは窓ガラスを割り、外へ飛び出した。背後から1発、腕に弾を打ち込まれながら、ただひたすら走り、シスターの元へ向かった。
けれどそこには、先程メアリーが殺した彼女たちが眠るように倒れているだけだった。
それを見て、ローはメアリーの言葉を思い出す。“みんなのところ”というその言葉を、たった今理解した。彼女が殺したのだ。シスターを、みんなを、己の両親を。笑みを浮かべながら。
「悪魔ッ、、」
ローにとって、メアリーは大事な何かではなくなった。ただ、の悪魔に成り下がり、撃たれた腕を抑えながら、何とか生き残ろうと、そして、このあと、プレバンスが滅亡し、暫くしたときに、この世界の何もかもを壊すために、メアリーに再び会った時、殺せるように、そんなことを考え、死体に紛れ、生き残り、ドフラミンゴの元へ行きつく。
一方、メアリーはローを態と損傷がない程度に撃ち、彼の両親を2人並べ、彼らの珀鉛を遺体から取り除くとシーツをかぶせた。
「逃げ切ってね、ロー」
貴方が逃げ切らないと、逃げ切ってくれないと、誰が私を断罪して、殺してくれるというのだろうか。
焼けてきた病院にもう用はない。そう思いメアリーは外に出る。
「いたぞ!!モンスターだー!!駆逐しろ!!!」
「うるさいなぁ」
叫ぶ大人にメアリーは冷たい視線をあびせ、撃ち込まれたそれを避けて見せた。見聞色の覇気で磨きあげられた俊敏さに、驚きの声が上がり、次には何発もの銃撃音と悲鳴が木霊する。
「寄ってたかって、感染病でもない珀鉛病を怖がって虐殺をするお前たちと、ただ生きのびたくて必死に逃げ回る人々、どちらの方がモンスターだよ」
段々と、メアリーの毛髪は真っ白に、まつ毛や眉毛までもが白く変わり、肌も青白くなる。大量の珀鉛をしたいから取り込み、毒素を体の中で分解し、散弾銃の弾丸に込める。
「皆殺しにしてあげるよ。周辺国家も、私たちを見捨てた世界政府も、珀鉛を毒だと知っていたやつら全員、殺してあげる」
髪の毛を血で染めて、笑う彼女は怯える大人達にゆっくり近づき、複数の銃口を突きつける。
「だから先ずは、お前たちから殺してあげるよ」
翌日の新聞には、フレバンスの国家間での戦争の終着と共に、フレバンスの生き残りであり、大量殺戮者、メアリーの指名手配書が乗った。
白い悪魔、そう名前をつけられた彼女の手配書の写真は、正に、真っ白な笑顔の可愛らしい少女が赤黒い血出汚れている姿で、誰もがその写真を見て背中にゾッと走るものを感じた。
次は、お前たちを殺してやる。そう、写真の向こう側で、彼女がそう言っている気がしたからだ。
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月日がたち、私は髪の毛を染め、ゆっくりと確実にフレバンスで誓った皆殺しをすべく、先ずはフレバンスから1番近かった海軍基地へ向かうことにした。
ローのお父様は最後まで海軍や世界政府に助けを求めた。けれど、それをしなかった。国家間の争いに巻き込まれたくなかったからだ。
そんな彼らを私は許せなかった。
だから、彼らを殺してやろうと決めたのだ。
丁度と言っていいのか、フレバンスを攻めてきた国も近くにあったため、ついでにその王族も、何もかもを殺してやることに決めた。女子供関係なく、私たちをモンスターとしてみた彼らを、その怒りを私は忘れていなかったから。
まず手始めに私がしたのは、彼らの飲水の元となる井戸などに毒を散布する事だ。無味無臭…とまでは行かないが、少し水が甘く感じる程度の変化しかないので、ほとんどの人間はそれに気が付かないだろう。遅効性の神経毒で、だんだんと体が動かなくなり、意識を保ったまま倒れてしまう。
その間に、私は各家にフレバンスで死んだ兵士から手に入れた火炎放射器を使い炎を起こした。
燃え盛る町中に困惑する王族は、抜け穴から逃げようとする。それを見定めて、1番苦しい死に方を彼らにはしてもらおうと思った。
彼らが逃げ出す前に、両足を撃ち抜き、歩けなくしたあと有刺鉄線で身体をぐるぐると固定した。動く度に有刺鉄線の尖った場所が身体をさして血液がじわりじわりと流れ出る。その後に、触れただけで悲鳴もあげられない激痛をもたらす薬草を粉にし、パック状にしたものを顔中にぬりたくる。
罵詈雑言を吐き散らしていた彼らは、それだけでもう息も絶え絶えというようだった。ざまあみろ。私たちの受けてきた痛みは、辛さは、理不尽さは、これだけじゃない。
まだまだやりたいことがあったが、海軍に乗り込むのにも時間がいる。適当にこの王族の金庫からある程度の金と、そして大量の弾薬などを持ち出す。
たまたま見かけた大きな肉切り包丁を見て、あることを思いついた私はそれも持って海軍基地へ向かう。
海軍基地の人間は、ほとんどが眠りについていた。無理もない
彼らにはよく眠れる薬を処方してやったのだ。しばらく何があっても、なんの音を聞いても起きはしない。
それがたとえどれだけ苦痛をいしいられることであったとしても。
眠っていた兵士たちを私は集め、鉄線で縛りあげた。周りには油をまき、海軍基地の中にまで流す。そこまでして、この基地の隊長を務めるだろう人間の元へ行く。
肥太った豚のような人間に、私は心底嫌気を感じた。彼の手からこぼれている書類を見れば、脱税、他国からの根回しの為に賄賂を受け取っていたことなど、ずさんな処理のされた数々が目に付いた。
汚れきってやがる、この汚物。
そう思い、私はその書類をにゅーすくーに送ることにした。折角の海軍のスキャンダル。きっといいネタとして扱ってくれることを信じよう。書類を封筒にまとめ、新聞社行きのカモメに渡せば、重たい書類を軽々と持って行ってくれた。とてもいい仕事をしてくれることを信じよう。
そして私は、そんな書類の元である豚をどうしてやろうかと考えた。
まずやったのは有刺鉄線で彼の体をしばりあげることだった。みちみちした体が反発して、とても縛りにくかったけど、何とかなった。
そして、その後には腕を肘掛に脚を椅子の足に縛り、着付け薬を吸わせ、目を覚まさせた。
「はっぐ!?こ、これは!?」
慌てる豚に、私は肉切り包丁を見せながらにっこりと笑う。
「どうも〜白い悪魔ことメアリーちゃんでーす!
この度はフレバンスを見捨てた罪、並びに他国から大量の賄賂を受け取っていたあなたの事を惨たらしく殺しに来ちゃいました〜!」
元気にハキハキと伝えれば、汚い唾を吐き散らしながら、豚は自分の地位がどれくらいのものか、自分を殺せばどうなるかを耳が痛くなるほど伝えてきたが、私は豚語が全く理解できないのでわー、すごい醜ーいと聞くだけだった。
その態度が気に食わないのか、苦しいのか動こうとする彼に、私はにっこりと笑った。
「もー、そんなこと色々言うけど、死人に口なしって言葉があるように死んだら貴方何も喋れないんだから立場だのどうのとか関係ないよね〜」
「ぐっ、うう、だ、だったらワシのできることなら何でもする!!だからたすけ、ったすけてくれ!!」
「なんでもってそれって、自分で死んでくださいって言ったら自分で惨たらしく死んでくれるんですか?」
「っ〜〜巫山戯るのも大概にしろこのクソガキが!!モンスターが!!今すぐ貴様の手足切り落としてくれる!!」
「それって体が自由の身になってっから言うことだよね。まったく、これだから学習能力のないやつ相手には疲れるんですよ」
「ーーーー!!!!!!」
ざくんっと音を立て、私は彼の右足を切り落とした。
「あ、ごめんなさーい!指だけにしようとしたらおじさん暴れるから足の甲からいっちゃったよ!」
あまりの痛さに声も出ないのか、ぼたぼたと流れる汗と脂の交じった血液が嫌で、私は慌てて数歩離れる。
そうすれば、たすけ、たすけて、たすけてとずっと同じことをうわ言のように言い出した。所詮賄賂を受け取るだけ受け取って、ろくに仕事もしないやつらしい行動だ。その醜さに、醜悪さに、反吐が出る。
「うーん、あることに答えたら考えてあげなくもないけど」
「!!」
「私たちフレバンスの民を見捨てた世界政府の重役の名前と、国の名前、国王の名前、全て答えてくれるなら考えてあげなくもないよ」
「い、いう゛!!いうから、た、たすけで、っ!!」
「じゃあまずは重役から言ってみようか!」
「ジュ、重役の名前は、っ、ーー」
そうして、名前を聞き出し、周辺国家だけでなく、その区の属国、並びに同盟国までもが支援物資を送り、私たちの国を、私達を世界で殺そうとしていたことが分かった。
聞いた時、私はかわいた笑い声がでた。これは怒りからか、それとも別の何かのせいか。
恐ろしいものを見る目でこちらの様子を伺うものに、私は離れた場所にペンチを置く。
「おじさんお疲れ様〜!!そしてリストありがとう!
ぜひ有効活用させてもらうからそれじゃ、ばいばーい!!」
部屋を出て、すぐに私は適当な食料をカバンに詰め込んで海軍基地に火をつけた。あの豚みたいなおじさんは、きっと死ぬだろう。それはもう惨たらしく。だって、あの部屋の四隅には…
「加熱したら発生する猛毒って、とっても怖いよねぇ」
熱が上がるほどに、揮発性の高いそれはすぐに毒へと変貌し、体を蝕む。内部から熱に溶かされるように、喉の奥から爛れ始め、肺から取り入れた酸素とともに毒が回り、最後には顔がぶくぶくの水脹れ状態と化し、目玉が溶ける。そして、耳だけが機能し、声もあげられないまま死んでいく。
「考えるって言っただけで、助けるなんて一言も言ってないのに馬鹿だなあ。それに、わたしは惨たらしく殺すって最初に言ったのになぁ」
まあ、腐った大人が本当に腐っただけで、別にいいだろう。あの海兵基地の人間も、あの国も実質滅んだのだし、次も、手を出すのは隣国でいいだろう。
何せ、誰よりもフレバンスを殺したのがその国々なのだから。
笑う私は鼻歌を歌う。何の歌かは忘れたが、たしかローが好きだった歌。
自分の人格が壊れていくのがわかる。けれど、私は私自身とこの体の主、メアリーにちかったのだ。私たちはもう私でしかないけれど、この体で仇を討つと。
どんなことがあろうとも、私は私の世界を壊した奴らを、全員殺してやると決めたのだから。
そして、それを止めるのがローの役目。ローがいるから、ローがきっと殺しに来てくれるから、私はメアリーで居られるのだ。
さて、次はどんな殺し方をしようか。
朝食の献立を考えるように、私は国境を越え、次の国に着く。どうせなら、珀鉛病を発症させてやろうかと思ったけど、そんなの隣国達の感染症という見当違いな意見を肯定してしまうので無しだ。ならばどうするか…そう考えた時、私は林の向こうに燃える炎のようなキノコが生えているのをみつけ、あ、これを使おうかな、とてぶくろを2重にして、エプロンをつけ目を保護し、重装備の上でカエンダケを手にした。
さあ、次の殺害の始まりだ。
カエンダケは触れるだけでもやばいと有名なキノコである。そんなものが粉状になって、もしも空気中に散布されたらどうなるか。考えるだけでも恐ろしいことが起きるのがわかる。
それにせっかくだ。風の流れに乗るならば、隣国から届いたようにすればいい。そうすれば今危害を加えようとしている国は、隣国から何かされたと考えるかもしれない。例えば、死体処理が完璧に出来ていなくて疫病が流行った、とか。
考えるだけで楽しいものだ。
私はそうしてカエンダケを撒くのを隣国からと決めた。そして、予想の通りに動いてくれる国々に、笑いをこらえるのが精一杯。
さあ、早く次の国を滅ぼそう。
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年月がたち、ローはハートの海賊団を結成したばかりの頃、新聞によって配られた手配書の中にメアリーのものがあるのを見つけた。
【フレバンスの白い悪魔 メアリー 】
その肩書きがなくとも、写真を見ただけでメアリーだということはたとえ相手が成長しても分かる。それほどの付き合いだったのだから。それほどまでに憎い相手なのだから。
微笑む悪魔、メアリーは、真っ白な長い長い髪の毛を伸ばし、シスターのような服装で十字架のネックレスをつけている。
悪魔が十字架を掲げるとは、なんともおかしいことか。
だが、一つだけ変わらないことがあった。メアリーの瞳。それだけは自分と同じ色彩のまま、変わらずにそこにある。
いつか自分が殺す相手…ドフラミンゴ、そしてメアリー。
彼女を見つけ出すことが、自分に出来るのか分からない。けれど、何年かけても見つけだしたその時には、必ず殺してやる。両親を、友人たちを殺した怨みを、とくと味あわせてやる。
握りしめた手配書を手に、ローはそう誓ったのだった。