宇髄さんと

(時間軸は隊に入って1年と半年ぐらいだった頃で宇髄さんはまだ柱じゃない)


やあやあどうも!なぜだか入って暫くして主張治療が増えてあっちこっちの藤の家に向かわされてる撃雅風だよ!!
そりゃあまあ生命の波紋は治療とかにめっちゃ向いてるから使えるものは使えっていう精神とかよく分かるよ!!でもね!?私!!人間!!過労死しそうなラインになるまでギリギリに使って行くスタイルやめれぇ!!!
いやまあ救える命は救うけれども!たまには休みをくださーーーい!!!!

そんなこんなでいつもの如く蝶屋敷に急患が入ったからはよこいやと言われたわけです。何でも毒盛られたとか何とか。鬼の毒はもともとはその細胞が元になってるので私の波紋とは相性がいいのですよ!
ドロドロにとかしてやるぜともうなんか三十連勤のハイなテンションで雅風、行っきまーーす!!!

蝶屋敷に着けば、案外あっさりと急患の治療は終わった。毒と言っても、最悪死ぬような毒ではなかったらしいので、しのぶの薬で治せるくらいにまでにし、さて少し休憩したら次の任務かなーと縁側でお茶を飲ませて貰っていれば、なにやら廊下の奥から気配が……
そう思い、顔を向ければ……


「お、いつものチビじゃねぇか!」


祭りの神がいらっしゃいましたッ!!!

「貴方が、大きい、だけ、お久しぶり、です」


まあ、お久しぶりですねといいつつも、実際話したの今が初めだけどね!!



宇髄さんは元々指揮官として抜きん出いた、そのため、小隊を率いて前線で指揮をすることが多かった。
小隊を率いる程の鬼ということは、危険度がぐんと跳ね上がるということと同義。勿論、怪我人も出るわけだ。
丁度、波紋の呼吸法の有用性を評価されて、怪我人や、死者を減らす為に出張治療をしまくってる私は、必然的に怪我人が多くでそうなその小隊任務にも、途中であっても合流して、治療を施すわけで前線で宇髄さんが指揮をとり、後方で私が怪我人の治療し、ということが数回繰り返された。

だがしかし、私たちは基本、顔を合わすだけでちゃんと話したことがなかった。私が治療が終わったら蜻蛉返りの様にすぐに別の場所に迎えと通達がきて、話す暇がなかったのだ。
そんなことが数回繰り返され、それぞれ自分の役割に徹し、迅速に仕事を済ませるというスタイルが板ついてきた今日この頃……初めて今話したわけですね!!

閑話休題


「自己紹介がまだだったな!俺は宇髄天元!派手を司る神だ!!崇め奉れ!!」

予想通りの自己紹介などありがとうございます……

「私は、撃、雅風、……苗字は好きじゃな、いから、雅風で、いい……よろしく、ね、宇髄さん」
「途切れ途切れで聞きにけぇな……もっとはっきり喋れねぇのか?」
「ごめん、なさい、癖なの……善処す、る」
「地味なやつだなぁてめぇ」

むっとしつつ、彼はそう言った。ごめんなさいねぇ!どうしても話すの慣れないんですー!!!

「宇髄さん、は、なんの、用事?私は、治、療しに、
来た」
「あァ、だろうな!俺ァ藤の毒を貰いにな、胡蝶のやつがどこにいるか知ってるか?」

なるほど、毒か。そういえば彼の奥さんとかは苦無に毒を塗っていたっけな。
一人なるほどと頷き、目の前の巨体を見上げる。ほんとにこの人おっきいな。トトロと同じくらいなんだっけ身長。

「いま、診察中、それが終わったら、ここ、通ると思う」
「そうか」
「お饅頭、食べて待つ?」

いい加減見上げながらは首が辛いので座ってください。


お茶を飲む私の隣に腰を下ろし、大きな口でそこそこの大きさのお饅頭を一口で食べる宇髄さんは、こちらのことをじーっと見つめてくる。とても!!視線が!!痛い!!です!!!

「……なに?」
「おまえ、やっぱり派手にちいせぇよなぁ、ちゃんと食ってるのか?」

余計な!!!お世話だ!!!

「たべ、てる、君が、おっきい、だけ、それに、私は、呼吸の影響で、成長が他人、より、遅い」
「例の傷を癒すとかいうやつか?そういや直接には見たことねぇな」
「いつも、前線だもの、ね、お疲れ、様です」
「おう!もっと派手に崇めてもいいんだぜ?」
「……お饅頭追加?」
「地味な崇め方だな……貰うけどよ」

はい、と追加で渡したお饅頭も、やはり一口で食べられた。ほんとにひと口おっきいな……何個詰められるのかとかやってみたい。

「ん?つう事は、お前、今何歳なわけ?」
「十五」
「はァ!?うっっそだろ!!!派手に嘘ついてんじゃねぇよ!」
「嘘じゃない」

確かに、私の見た目は下手すると十だとかそこらに見られてもおかしくないあれだけれど、なんでそんなに疑うかなぁ?
そう思った私に、彼は訝しげな顔をしてこちらを見て、でもよぉ、と言いながら手を伸ばしてきた。
その手は、あろう事か私の胸元を隊服越しに触れ、そして、声を上げるまもなく、とんでもないことを言い出した。

「十五なのにそんな乳房が膨らんでねぇなんてありえねぇだろ!!しかも!晒しで潰してる訳でもねぇなら……もしかしてお前男だったのか!?」

わたしは、その言葉に、行動に、ひゅぅとおもわず息を零し、次には気が付けば拳を握っていた。
バチバチと音を立てて、その拳を、思いっきり床に叩きつける!

「蔦菫!!!!!」
「うおっ!?」

波紋法ーー蔦菫
高圧の波紋を床に叩きつけ、広範囲攻撃をする技である。
直接では逃げられるのがわかってるので、初見殺しの技を使わせてもらいますね!!!!
体を強制的に麻痺させ、固まった宇髄を見下ろすように立ち上がり、びしっ!と指を指す。

「わたしは、男、では無い、成長、遅いだけで、まだ、おっきくなる、途中なの
なのでまだ、おっきくなる、おっきくなるのっ!」

そう、私は成長期の期間が長いだけであって!!!決して!!断じて!!!貧乳ということは無いの!!!べつにぃ???今のところ晒し巻かないでもいいし!!重たいものついてなくて楽だからいいし!!
ただ、ちゃんと、あと、そう、後、十年すればちゃんと出てくるんだよ!!!
リサリサ先生のようなボンキュッボンなナイスバディになるんだからぁぁあ!!!!

心の中で叫びつつ、わかった?と、キッと睨めば、あっけらかんと、彼は言い放つ。

「成長がおそくなるっつっても、そのくらいでオレの嫁ならある程度あったぞ?」
「巨乳好きめッ!!!女の敵!!変態!!あんぽんたん!!!すけべ!!!」
「喧嘩売ってんのテメェ!!つうかなんで体動かねぇんだ!?何しやがった!!?」

売ってきたのはそっちだろ!!!脳の電気信号いじくってやっただけだよばーかばーか!!!!
その気になれば真っ裸にして路上に放置だってできるんだからな!!!流石にしないけど!!!

「ふんっ!元、忍びと、いえど、動きを、止めてしまえば、こっちのもの……」

ふっふっふ、どう報復してやろうか!!
頭の布を解いてめっちゃ乙女チックな髪型にしてやろうか!!それとも顔に炭で落書きしてやろうか!!!

「胸を、触った、罪は……重いッ!」
「胸っつうか触ったの布だけだろ!!!スッカスカだったじゃねぇか!」
「すっ!?す、すかすかじゃ、ない!!すこしは、あるもん!!このっ!筋肉達磨!!」
「あ゛ァッ!?この肉体美が分からねぇのか??!節穴かテメェの目は!!」
「むっきむきー!!ばーかばーか!!!!」
「このクソガキッ!!!!」
「私はガキじゃ、ない!!そういう、君はいくつだ!」
「十六だ!」
「ならいっこ差だろ!ガキじゃない!」
「派手に年齢詐欺してやがる癖に何言ってやがる!!」
「だから!してない!!!わたしは!十五だッ!!」

今までここまで大声を出したことがあっただろうか?
ぜえはあと息を吐き、急激に叫んだせいで喉が痛くなりゲホゲホと咳き込んだ。
うう、ほんとやだもう!!!この話し埒が明かない!!!

「いっその事、首から、直接脳に、波紋を送って、記憶を改竄……?」
「何しようとしてんだ」
「おっと、」

ごめんなさいつい口がすべっちゃった!
口元を隠しつつ、こほんと咳払いをし、ジト目をこちらに向けてくる宇髄さんをちらりと見る。
いや、冷静になれ、私、さすがにそれやったらしのぶに怒られないか?うん、怒られるな。やめておこう。
ていうかなんかどっと疲れたよ……もうやだ連勤してきてこれってほんと、ほんと……むり……

「うう、もういいや、なんか、面倒くさくなってきた……」

ため息を吐いて、流した波紋を軽く触れて解く。ばちっと静電気が走ったみたいな音がして、次に動けるようになった体に、宇髄さんはぱちくりと瞬きをした。自分の手のひらを開けたり開いたりして、おお、と声を漏らしている。

「んとに、妙な呼吸法だな」
「もう、……つぎ、さっきみたいな事したら、記憶消し飛ばすからね」
「やるにしてもやる気も起きねぇからな、もうちょい成長してからいえ!」
「きみ、いい加減にしないと、昏倒させるからね?」

ほんとにああ言えばこう言う……
はあ、とまた溜め息が出た。そんな私を、ニヤリと笑いながら見上げる宇髄さん。

「まあ、それにしてもだいぶ話せるようになったんじゃねぇの?」
「?」
「片言、少しは直ったろ」
「え、あっ、」

ん?いや、は?、え???
いやちょっと待て?もしかして??そのために今のことやったの?なんなの?馬鹿なの?

「やるにしても、やりかたってもの、が、あるだろ」
「疑ったのはほんとだがな!まあ、腰つきや脚については認めてもいいぜ」
「なっ!?どこ見てる助平!きみ、もう派手の神じゃなく助平の神だろ!」

さっきから視線なんか感じるなーと思ったらそれか!!!ばっと長めの袖でスリット部分を隠せば、ひゃっひゃっひゃっと彼は笑う。

「知らねぇのか?男はみんなそういうもんなんだぞ?まあ、お前みたいなちんちくりんの男を知らねぇような餓鬼にゃまだ早い話だよな!」
「そのぐらい知ってるわ」
「は?」
「あっ」

思わず口に出た言葉に、かぁっと体の熱が上がった。あ、やばい、疲れてたとしてもなんでこんなこと口からするって出てきたんだ!!
口元を隠し、一歩、じりりと引く私に、口をぽっかりと彼は開ける。その視線と、おい、と伸ばされた腕にたまらず、私は……

「し、しのぶううううううう!!!」

気がつけばしのぶの名前を叫んでいた。あっ!おい!と宇髄さんが声を上げたが知るものか!!すぐに駆けつけてくれた彼女に泣きつけば、宇髄さん……もう宇髄でいいや!!
宇髄は暫く蝶屋敷を出禁になりました!!




まあ、その後、その事がきっかけで蜻蛉返りする前に捕まってからかわれることが多くなり、友人関係に発展していくのだが……それはまた別の話である。

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