4-2
聞いておくれよ。 隊員の保護して治療して炭治郎のもとへ速攻で向かったら、御館様からの鎹鴉が来た件。まじか、もう戦闘終わったのか!
少しショックを受けつつも、茂みを分けたらなんかわちゃわちゃしてる隠を見つけた。
「なにしてるの?」
「あ!陽柱様!いや、こいつを今から運ぼうかと」
そうして彼らが目を向けたのは、気絶している炭治郎だった。さっき見たよりももの凄い怪我してるし、これってあれだよね?カナヲちゃんが顎割っちゃったやつ。
「ううん、顎が割れてるな」
アッハイ
「ごめん、すこし、いい?」
2人を少しのかし、炭治郎の顔、というか、顎の部分をそっと触り波紋を流す。ぱちぱちと音を立てて、骨が繋がるのを肌越しに感じた。
「これで顎の骨折は治った。運ぶのお願い」
「は、はいっ!」
「それと、鬼の入った箱、あれは私が運ぶ。」
「え、そんな、」
「私の方が安全でしょ?」
というか、そうしないと不死川に禰豆子ちゃんの箱取られちゃうと思うし……彼女の人を食べないという行動を証明するために必要だとしても、あそこまで血を流したり、傷をつけあったりする必要は……あるにはあるだろうけど心臓に悪いのでやめて欲しいと思うの……ほんとに。
私の言葉に顔を見合わせた彼らは、では、お願いします。と私を禰豆子ちゃんの所へ連れていってくれた。この後すぐに、柱合会議かぁ……あーー、胃が痛い。
御館様の館に着けば、案の定柱が既に勢ぞろいしてた。君たち集まるのはやくない?
私は背中にある箱を前に持ち直し、ぎゅっと抱える。その方が安全な気がするので。すると、なかからカリカリカリと引っ掻く音がした。私では何を言ってるのか分からないけど、炭治郎ならわかるのかな?
適当にカリカリ仕返し、柱の前だぞ!!と起こされる炭治郎を遠目に見た。目を覚ました彼はまあ、混乱しちゃうの仕方ないよね。私だってこういうことあったら混乱するもん。てか皆の殺意が高すぎて引く。前に私が話したこと覚えてくれてる人は少し抑え気味だけど、君ら殺意高い怖っ!
しのぶが目を覚ました炭治郎に鎮痛剤入りの水を飲ませた。そして、炭治郎は2年間禰豆子が人を食べてないこと、人のために戦えることを訴える。が、そんなことで彼等が簡単に納得する訳でもなく、話の堂々巡りやら義勇くんがどうのーという話が始まった。
そもそもその証明ってほんと悪魔の証明だからね?証拠見せろって言われて見せられるもんじゃないからね?
そして、炭治郎が少し遠目に佇んでた私を発見し、さらに禰豆子の入った箱をみて、はっと息を飲んだ。それにとりあえず安心してねーと手を降れば、その手をガシッと不死川に掴まれた。
「おいおい何手ぇふってやがんだ雅風!それにその箱、鬼が入ってやがんだろ?何大事そうに抱えてるだ?あぁ゛?」
「君みたいな短気にこの子を渡さないため」
話す度にだんだんと力を強められる。余程イラついているらしい。そして私はこの人を黙らせる最終手段を使うことにした。
「このことは、御館様が容認していた事。今あなたたちが何か言っても、御館様の意思に背くことになる。もし、この子に手を挙げたら……わかるよね?」
「なっ!、?」
「御館様が容認?!」
「どういう事だ雅風!!!!」
絶句する彼の手を乱暴に振りほどき、ゆっくりと炭治郎に向かって近づく。ことりと箱を彼のすぐ近くに置き、不死川と炭治郎の間に入る。
「この子は、君の大切な家族、ということでいい?」
「は、い!そう、です!!俺の大切な、何よりも大切な妹なんです」
「そう……」
力強く頷き、禰豆子のことを守ってくれてありがとうございますという炭治郎。何この子可愛い。けど、ごめんね、これ護ってると言えば守っているけれど、私はこれから君たちに酷いことをしてしまうんだよ。そう、心の中で思い、申し訳なくなって、よしよしと頭を撫でるついでに軽く傷を治してあげていれば、なにやらあわあわしてる。かわいい。この生き物可愛い。きゅんきゅんする。何このオアシス。
後ろでなんかわーぎゃー言ってる奴いるけど知らない。アーアーキコエナーーーイッ!!!
「御館様がお成りです!!!」
その声を聞いた瞬間に膝をつき、炭治郎にぽそっとそのまま頭を下げて上げちゃダメだよ。と一言告げる。
その間に不死川が御館様に口上を述べた。そして、炭治郎と禰豆子ちゃんについて、の話が始まった。
2人については、やはり許容できない人達は多い。今までの経験や偏見がある分尚更だ。特に、やっぱり不死川は目を血走らせながら処罰求めてるし。まあ、彼がそういう理由は分かるんだよね。だって、彼の過去が起因しているし、助けたくても助けられなかったものもあるし。何だかんだ、彼は特に愛情深い人ではあるから。
弟くんが鬼を食ってまで鬼殺隊に入ったのも、それに激昂した理由も。弟が大切だからなんだし。それにしてもまあ、度が過ぎるところが多いけれども。
そうこう考えてるうちに、御館様は鱗滝さんの手紙を読み始めた。そして、まあ、さして以外でもなかったけれど、禰豆子ちゃんがもし人に襲いかかった場合、切腹して詫びる人の名前の中に錆兎と真菰ちゃんの名前があった。
炭治郎を一緒に鍛えていたわけだし、禰豆子ちゃんが鬼であることも炭治郎が連れていることも知っているわけだ。
一瞬の静寂、それを破ったのは不死川だった。死にたいなら勝手に死ねと、なんの保証にもならないと。煉獄さんもそれに続き、人をもし食ってしまえば取り返しがつかない、と意見する。が、御館様の人を襲うことも襲わないことも保証できない。5人の命がかかっているのだから、否定する側もそれ以上を差し出さなければならない、という言葉に反論の声をあげられなかった。いいですよ御館様もっと言ってやってください!!この人達ほんと御館様の言うことしか聞かないから!!
まあそのあとは炭治郎が鬼舞辻に遭遇したことを知ってすごい場が荒れた。みんな我先にと質問してくもんだから炭治郎すごいびっくりして目を白黒させてた。てか不死川さん髪の毛鷲掴むのやめてあげて!みてるだけで痛い。
まあそれも御館様のしーーっで一発でやんだんですけど。あの人本当は調教師かなにかじゃないの?ねぇ?
「鬼舞辻はね、炭治郎に向けて追っ手を放ってるんだよ。その理由はな単なる口封じかもしれないが、私は初めて鬼舞辻が見せた尻尾を掴んで話したくないし、恐らくは禰豆子にも鬼舞辻にとって予想外の……それこそ雅風が言ったような何かが起きてるんだと思うんだ
分かってくれるかな?」
一息に話した御館様に、炭治郎を挟んで隣にいる不死川さんがふるふると震えて、分かりませんよとなんだと言い出した。あ、これはやっぱりアカンやつや。そう思うと同時に、不死川の懐にそっと手を入れる。手早く抜き取るのは、不死川が所持している彼の血の入った小瓶。
柱の中でも周知になっているそれを持ち、禰豆子ちゃんの入っている箱の紐をみ、炭治郎にだけ聞こえる音で、ごめんね、と呟き、御館様の後ろの座敷に飛ぶ。
「おい!雅風てめぇ何してんだ!」
「君が、納得するようにするだけ。彼女が人を襲わないことを、ここで証明する」
ごめんなさい。本当に、ごめんなさい。そんなことを思いつつ、袖からに日輪刀の鉤爪をだし、彼女の入った箱を刺した。鉤爪は首以外の鬼の急所に当たり、ゆっくりと引き抜いたそれには禰豆子ちゃんの血が着いていた。波紋を刃に流せば、その血は瞬きの間に消失し、きゅぽんっと、音を立て、私の開けた穴から不死川の血液を流し込む。
「なっ!?」
「や、やめてください!!!ぐっ!!」
炭治郎くんの悲痛そうな声やらなにやら揉めてる声聞こえる。多分伊黒さんが炭治郎のことを押さえつけたんだろうな。それか不死川さんかな?まあ、そんなのより今は禰豆子ちゃんだ。周りにも箱越しだけれどちゃんと刺さったのは見えたから彼女が傷を負った飢餓状態であることは明白だ。
私はゆっくりと箱をあけた。すると、ずるりと、体の大きさをだんだんと変えながらも禰豆子ちゃんは箱からでてきた。ふうふうと荒い呼吸をする彼女に、もう一本の瓶をみせ、ゆっくりとそして勿体ぶるように蓋を開けた。途端、広がる血液の香りに、苦しそうにこえをあげ、涎を滴らせ、小瓶を凝視する彼女を見て、自分の手のひらに小瓶を傾け血液を差し出した。
「貴方は、人を襲うの?それとも守るの?」
耐え難い飢餓状態の中、彼女は私の言葉をきて、そして、兄の炭治郎を見た。
「禰豆子!!!」
彼女は、自分の着物をシワが出来るほどに握り締めながらぶん!と頭を振り、私から目を逸らした。
「彼女は不死川の血を、我慢した。極度の飢餓状態で、刀傷を3つも傷を負いながら。」
手のひらに載せた血を救急用で持っているガーゼに吸わせ、手に乗せたまま、鼻先の至近距離まで近づけても我慢する彼女をみて、その光景を目撃した全員に向けて言う。御館様は、その事に、満足そうに頷く。
「では、これで禰豆子が人を襲わないことの証明が出来たね」
「!!」
「今回は、私が勝手に不死川の採取した血液を使ってやった事。もし、彼女が人に仇なす物になったら私の首も切り落とせばいい」
「な、にを、!貴方は鬼殺隊での生命線でもあるんですよ!?」
「私はただ彼女にかけようと思っただけ。本物の鬼になってしまえば見る目のなかった私が一番に責任をとる必要がある。首跳ねで気が済まないなら焼き殺せばいい。四肢を切り落として出血死させるなり、毒を飲ませてしばらく苦しませて殺せばいい」
─────そうでしょ?御館様
息を飲む柱達を前にし、その問いかけに、御館様はそうだね……と、少し考えつつ、頷いた。
「確かに、私が彼女を容認していたのは、雅風の言葉があったからということもある。
禰豆子がもし、人間に仇なす物となった時には、1番に雅風へ極刑を言い渡そう。」
有無を言わさない御館様の言葉に、ほっとひと安心した。御館様が炭治郎と話しているうちに、私は禰豆子ちゃんにごめんね、痛かったよね、と小声で謝りながら箱にお戻り、と促す。その時に、私のことをじっとみた禰豆子ちゃんが、ふるふると頭をふって、大丈夫だよ、というように箱に入る前に私の手を握ってくれた。泣くと思った。何このいい子。天使?天使なの?ねぇ?
そして、いつの間にか炭治郎の話はこれでおしまいーと御館様がいい、しのぶが炭治郎を自分が預かりますねーと手をパンパンしてた。そして、隠の子が禰豆子ちゃんの箱を持っていこうと私の前に現れる。
「箱に穴が空いてるから、運ぶ時には気をつけて」
「は!はい!!」
元気よく返事をした隠は、箱を受け取ると足早にその場を去る。炭治郎は結構大人しく連れていかれてたよ!やったね!小石飛ばされるルートはなくなったよ!!!
「じゃあ、柱合会議を始めようか」
「……土足で畳を汚してしまい、申し訳ありません……」
「それぐらい構わないさ」
御館様の優しさに涙しそうだったが、そうは問屋が卸さない人がいた。
がっしりと私の後頭部を鷲掴みにした不死川は、オイ……と低い声で私に声をかけてくる。
「ンで俺の血液勝手に持っていきやがったんだァア!?」
「君は乱暴、なので、自分の腕を切るでしょ。御館様の、座敷、血で、汚すつもり?」
「まあ、確かに不死川さんならやりそうですね」
「私なら、鬼の血、直ぐに無くせる。それに、君、前より傷、少し増えた。ので、最適な方法を取った。それまで。
何より、あの瓶の血液は取ったばかりのもの。そう、でしょ?」
「血の色見ればお見通しってか?」
「しのぶから聞いた」
「はぁ?」
胡蝶からだァ?だとかいいつつ、私の頭ぐしぐししてくる不死川にいい加減苛立ってきたのでノーモーション踵落とし(仮)で脛を攻撃しようとすれば、後ろにばっと飛ばれ避けられた。
思わず舌打ちがしたくなるが御館様の前なので致し方なし。
不死川の懐から頂戴した小瓶ふたつを投げ渡せば、なんの支障もなく奴は受け取り、懐にいれる。
「この偽善者が」
そう不死川が言うのを聞きつつ、無視をする振りをし、手ぬぐいを濡らして手のひらに着いたままの彼の血を拭う。偽善者だとか、そんなもの、いちばん私がわかっていることを一々言わなくてもいいのにな。そんなことを思いながら。
柱合会議の議題は各地の鬼の出現や頻度についてだ。それと今回の鬼が下弦の鬼ということもあり、十二鬼月の事があがった。うん、まあこの後下弦の鬼はみんなコロコロされちゃうんだけどね。なむなむ。そして、今回の被害にあった蜘蛛化してしまった隊員たちの治療、それについてはしのぶと私が受け持つことになった。
そもそも、私のこの波紋法は太陽のエネルギーと同じなのだ。そして、戦闘よりも実際は医療の方に携わる。それをもって、鬼の毒を打ち消す事が可能。まあでも、その、一般人に過敏に使用し過ぎたら失神したり、最悪死亡ってこともあるんだよね。だから一般の人にはあまり使えないというか、重傷を中傷まで治すぐらいなんだよね。え?隊士たちは平気なのかって?一応隊士たちってあれほとんど人間辞めてるからね?あれは一般人の括りではないから断じて!
まあ、それからすぐにあっさりと会議が終わり、私はしのぶと共に蝶屋敷に移動になったのだけれども……
「雅風、」
義勇くんに引き止められましたっ!
仕方ないのでしのぶには先に帰ってもらい、義勇くんとお話することに……てかめっちゃ落ち込んでんだけどなんで。
「すまない」
呟くように吐かれた言葉に訳が分からず瞬きすれば、きっとさっきの禰豆子ちゃんとのことだろうと直ぐにわかった。
「気に病む必要ない。当然のことをした迄」
「だが、本来関係の無いお前を巻き込むつもりはなかった」
「そんなことは無い。私が人を喰わない鬼の話をした時点で、縁ができてしまったのは変わらない。ので、あれでよかったんだよ」
「それでも、極刑を受けるということがどういうことか、わかっているのか?」
「そんな事しってる。きっと死ぬよりも痛いんだろうね。でも、義勇くんと錆兎、真菰ちゃん……君らのお師匠が命をかけてる、なら、私も命を懸けて信じる価値がある……そう思ったの」
「………………」
「だから、君も信じてあげてね」
にっこりと笑って言ってやれば、目を瞬いた義勇くんは、ああ、といったあとに、小さくありがとうと呟いた。
後日このことを知った錆兎にもしもの時は責任をとる的な手紙もらったけどノーサンキューって送っといた。鎹鴉がとっても微妙な顔してた。南無三。