5-1
やあやあどうも蝶屋敷で治療を手伝いに来た撃雅風だよ!あの後すぐに蝶屋敷に行ったんだけどあれだね!
しのぶにあの時何を考えてたんですか??にめっちゃ怒られて頭をグリグリされて只今絶賛頭痛が痛い!え?日本語がおかしいって?気にしたら負けさっ!!
あ、そうそう、前に治療した男の子の隊士、内臓とか色々やばかった子はちゃんと生きてます。ただ、やっぱり腕や足に後遺症が残っちゃうみたいだから隊士を続けられるかどうかは分からないそうだ。あんなに恐ろしくて痛い目にあったのだからトラウマになっても仕方ない。まあ命あっての物種だしね。
女の子の方は後遺症は残らなさそうではあるけど……やっぱり後後仲間を斬ったということは引いてくるかもしれないので、この先は分からないみたい。この両者には隠か藤屋敷に属せるように書面を送るつもりだ。どうあっても、いい方向に向かうように願いたい。
ん?なになに?なんでこんな話を突然してるかって?それはね?現実逃避をしていたからだよ!これからね、病室に向かうんだけど……これ確実に炭治郎いるんだよね!謝るって言ったけど心の準備が!!ね!?わかるでしょ!!どきがむねむねだよ!!!あーーお酒に逃げたいーーーっ!!!!
〇〇〇
雅風は病室の前に1人佇んでいた。病室の前に来たが……、どうにも扉を開けるのに緊張してしまい、どうしようどうしよう、と考え込んでいたのだ。炭治郎の妹、禰豆子を傷付けたこと。仕方なかった事とはいえ、やはり、何度謝っても女の子に傷を付けたことは彼女にとっては大きな罪なのだ。
ううう、と小さく唸り声をあげ、大丈夫、ちゃんと謝れば。うん、と心の中で自分に唱え、引き戸に手をかけたかと思えば、目の前の扉がガラッとスライドされた。そして、彼女の目に赫灼色の髪が映る。
「あ!やっぱり!あの時の!」
「ひえっ」
至近距離に見た炭治郎の顔に、顔を赤くしたり青くしたりしながら、雅風は小さな悲鳴を上げながら一歩下がった。が、ぐっとそれを堪え、炭治郎の手を両手でぎゅっと握った。
そして、こっち、来て、とぐいっと引っ張った。全身の筋肉痛のため、炭治郎は呻き声を挙げそうになるが、何とか耐え、雅風のあとを追う。人気のない場所にきて、なんだろうか、と炭治郎は緊張に手の汗を握ったが、雅風は炭治郎に向けて頭を下げたことにより、はっと呼吸を忘れたかのように固まった。
「あの時のこと謝りたい、ごめんなさい……あなたの大事な妹を傷つけた。大切かと聞いておきながら、……だから、ごめんなさい」
ぎゅっと目を瞑り、頭を下げていれば、息を飲む音がして、すぐ、顔を上げてください、と声が聞こえた。そろーっと、雅風が顔をあげれば、炭治郎はにっこりと笑って、許します!!と声を上げた。
「貴方の気持ち、痛いくらいずっと伝わってました。後悔の匂いや、悲しい匂いが」
「…………」
「禰豆子を傷つける時もその匂いがずっとしてた。やりたくてやったんじゃないって、俺は知ってます。それと同時に、あなたが優しい人だって。だから、もう謝らないでください。あなたの謝罪は、ちゃんと受け取りましたから」
微笑んだ炭治郎は、自分より低い位置にある頭をふんわりと優しく撫でた。それは、叱られてしまった時、落ち込む弟や妹を慰めるような、優しいものだった。
それに、呆気に取られ、ポカン、としていた雅風は、次の瞬間ぼろっと目から涙を零した。
「えっ!?あっ!?す、すいません!!年上の人なのにあの!ええっと!?」
「ち、違うの、きみは、君は悪くないから、」
雅風はずっと後ろめたかった。
彼の家族をちゃんと助けなかったのだから。何年も前に知っておきながら、自分の命を優先して、出来ることはしたと諦めて、彼の宝物を壊してしまったのだから。私は優しくなんてない。優しくなんてないんだよ……そう、彼女は思い嘆いた。
だからこそ、次こそは彼の宝物を、死んでしまうかもしれない人を少しでも助けられるように、力不足を補って、強くなりたいと思えたのだ。
「君の方が、よっぽど優しい子だよ、炭治郎、」
雅風は目を赤く晴らしながら笑う。溢れ出た涙はすぐに止め、振り切った。
雅風の香りが暖かいものに変わったのを感じ、炭治郎は、安心したように息を吐く。そして、すっと右手を差し出した。
「あの、改めて、俺は竈門炭治郎って言います」
「私は撃、雅風、君も知ってると思うけど陽柱。雅風って呼んでほしい。改めてよろしくね、炭治郎」
差し出された手を雅風はきゅっ、と握りふふふと笑みを零した。それに、炭治郎はこてりと小首を傾げた。
「いや、ごめんね、君が、ほんとにいい子だからつい」
「えっ」
「かわいいなって」
「お、男に可愛いは嬉しくないですよ!?」
素っ頓狂な声をはりあげた炭治郎は、力み過ぎたのかゴホゴホとむせ出した。そして、全身の筋肉に痛みが走り、呻いた。うううっと声を上げた彼に、雅風はごめんごめんといいつつ病室に戻ろうか?ね?っと声をかけた。それに頷いたのを見てから、彼に肩を貸しながら、病室に向かう。
最中、禰豆子が人を襲うことを絶対にさせませんからと、放たれたその言葉に、また雅風は泣きそうになるのだった。
❀✿❀✿❀✿
炭治郎はほんとはなんか仏なんじゃないかな。彼の優しさについつい無意識に涙が出ちゃったよもう!!
しかも傷の心配もしてくれるし天使かな?天使だね?竈門兄妹尊すぎない?
そして、今思ったけど……炭治郎、私より背が高い……。私あれよ?身長がね?実は145cmで止まったままなのよ…………え?炭治郎に初めてあった時はもうちょい身長高そうだったって?厚底のブーツ履いて誤魔化してたんだよ!!!悪いか!!!いや、多分成長あまりしないのは波紋を四六時中自分の体内に巡らせているからだと考えたい。そうでないと嫌だ!!あれだぞ?!前に宇髄のお嫁さん達にちびっこと間違われてお菓子の詰め合わせとか貰ったからな???私の心は深く傷つきましたよええ、それはもう!!まあ、お菓子の詰め合わせは貰ったんだけど!食べ物に罪はないしね!!!
「あの、」
「なに?」
「雅風さんは、錆兎さんの言ってた黒刀の柱なんですよね?」
「そうだよ」
なぜだか恐る恐る聞かれたそれに、肯定で返せば、ぱぁぁぁっと見るからに表情が明るくなった。なんだなんだ。
「俺の刀、黒刀で、あ!今その折れちゃってるんですけど、ていうかおってしまったんですけど……」
あぁ、そういえば、漆黒の刀を持ってる剣士って少ないんだけっけ?あと、あまり出世しないとかなんか言われてたっけなぁ。そんなことをポツポツ思い出す。多分、それで自分と同じ黒刀の剣士に会うのは初めて嬉しいのかな?まあ確かに仲間にあったら嬉しいもんね。
「君のことは、錆兎や真菰から手紙で聞いてた。」
「えっ」
「錆兎、私の同期。友達」
「そうなんですか!?」
「錆兎いってなかったの?」
「いや、修行三昧で、雅風さんのこと聞いたのは刀を受け取った時ぐらいだったので……」
まあ確かにあの修行の合間には話聞けないだろうな。最初殺伐としてそうだし。というか錆兎は私の事一体なんて言ってたんだろ?ほかの人が自分のことどう思ってるのかってとっても気になるよね!
「そう……私は君のこととても手紙で自慢されてた。」
「なっ!?く、詳しく聞いてもいいですかっ!?」
すごい食い付きだな?!今思い出してもあの手紙の山、可愛い弟弟子ができただの素直で可愛いだの表情豊かで愛らしいだの根性があってこいつを男に育てあげるだのなんだの……惚気かな?ってかんじの手紙が大量に来たんだよね一時、最終選別間近のときに。相手に厳しくする反面、素直なこの子をめでたい気持ちもあって紙に思いを綴ることで逃げたんだろう。男ならば背中で語れ!ていう感じのやつだし、これでデレの部分話したら錆兎の矜恃が危うそうだなぁ。
「今度、少しだけならね、ほら、ついたよ」
「あ、はい、ありがとうございます」
ちょうどキリよく長い廊下を歩き終わり、病室に入れば、……はいった瞬間、奇声が2人の耳に突き刺さる。その発信源は、両手でムンクの叫びのごとく両手を頬に当て目をこぼさんばかりに炭治郎と雅風をガン見していた。
「あぁあぁぁあっ!!炭治郎!?お前何?!どういう事なの?!女の子と二人っきりで何してきたの?!ねぇ!!ねぇ!!!!!しかも??なんでそんな密着してんのぉっ!!!??」
「善逸、落ち着け」
嵐のごとく、言葉が過ぎ去っていく。ぜ、善逸くんだぁぁあ!!ばんばんとベッドを両手でひっぱたく彼は、恨めしやとばかりに炭治郎をみていた。それに慣れたように、手で制した炭治郎は、どーどーと、声をかけている。
「炭治郎、べっどはどこ?」
「あの……猪の隣です」
あ、善逸に目がいってて気が付かなかったごめん。いやだって、インパクトが、ありすぎて……
ていうか、それよりもさ、
「………………あれって、つけてていき苦しくない??」
「そこなんですかっ!?」
「えっ」
いやだってあの被り物息苦しくないふつう。せめて治療中は取らないかな?まあいいや、炭治郎をベッドにまで運び、私は本来の仕事をすべく、いまだにきーきーいっている善逸くんのベッドに近づいた。
「うううっ、おれが、おれがくっそまっっずい薬我慢して飲んでる時に、っ!おまえってやつは!おまえってやつはぁぁあっ!!ううううっ!」
こんなに顔中から体液出す人初めて見たなーーーー。なんというか、とてもなんとも言えない気持ちになりつつ、とりあえず、善逸くんが多分1番落ち着く方法をとることにした。
手にティッシュを装備してから、泣きべそをかきながらおろおろいう彼の頭をよしよしと撫でる。
「落ち着いて、ほら、これで顔を拭いて」
「え、あっ、うっぶ」
ティッシュを、顔に押し付ければ、ぽかーーん、とした表情をされた後に、え?えっ?ととても困惑しつつももにょもにょと形容しがたい顔に徐々に変化していく。わあお、表情筋すごいね君。
「でへへへ」
機嫌が治ったのを確認し、よしよし、と頷く。
私が病室に来た理由、それは炭治郎の事もあったけど、元々は善逸くんの治療の為だ。蜘蛛化してしまった隊員を治すのに、微弱な波紋を流すのだけれど……本格的に蜘蛛になってしまった人達と、途中の症状の人達への波紋の流す強さは異なるのだ。末期症状の人達にはまとめて水に少し漬かってもらい、そのままとても微弱な波紋を10分流し、5分休み、10分流すのを一日に3回決まった時間に繰り返すということを先ず最初にしている。
水に浸ってもらうのは、その方が伝導が良くて、波紋を使う回数を減らせるし、時間の短縮になるからだ。けれど、だんだんと人の姿に戻れば、その人、一人一人に合った量を様子を見ながら流していかなくてはいけないという、酷く繊細な作業になっていく。なので、患者とのコミュニケーションがとても大事になってくるのだ。
まあ、それで、まず1回目のターンの、1番最後に、一番軽度だった彼の元に来たのだけれど……女の子に、女の子に頭を……っ!とでれでれしているところすいません。私、女の子って歳じゃぁないんです。もう、20歳すぎてするんです。
「我妻善逸くんだよね?」
「えっ!?なんで俺の名前をっ!?も、もしかして求婚!?とうとう俺にも春?!でも俺には禰豆子ちゃんというものがっ!!ええええどうしよおおおお!!」
想像力豊かで凄いなーー。一応初対面だから自己紹介しようとしただけでこれって凄いなーーー。今にもブリッジをキメそうな彼は、鼻息荒く目が血走っている。わあお。わあお。だがしかし、残念でしたね善逸くんや。
「私は陽柱の撃、雅風、貴方の治療にきました」
「うぇっ!?」
私がそう間髪入れずに言えば、声を上げた善逸くんは、次第に青くなったり赤くなったりを繰り返した。そして、私の隊服の釦に目を留め、ひえっ!と声を上げた。
「苗字は好きじゃないから雅風って呼んで。それと、今から君を診察するから個室に移動してもらってもいい?直接症状をみて触診したいから」
「えっ!そ、それってもしかしてとっても痛かったりとか?!き、きりおと、きりおとしたり?!っ、!?ひぃぃ!!」
「そんな事しないから平気、痛くないから」
なにか個室でトラウマでもあるのかな?ってぐらい怯えられた。なんでだ。解せぬ。
おろおろとし始めた善逸くんをほら行くよーとずりずりとベッドの脇に置いてある車椅子的なのに乗せて、個室に連れていく。部屋を出る時に目があった炭治郎にまたねーーと手を振りつつ、足を進める。
「ち、治療っていったい何するですかっ、?」
「……………………」
「あ、あの、」
「…………………………(ニコッ)」
「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!?にこってなぁに?!なんで今笑ったのねぇ?!その間は何!?間は!!!怖いんですけど!?めっちゃ怖いんですけどぉ!!!?」
いやごめん、あまりの怯えようだったので意味深的ににっこり笑っちゃったけど深い意味は無いんだよ!!ついついその、からかいたくなってしまう欲求が我慢できなくて、ついつい笑っちゃっただけなんだよ!!!それにしてもほんとに見事なリアクション、流石!!
たんじろぉぉぉっ、!と泣き叫びだしたのをみつつ、すぐに着いた個室に入った。机と診察台、タオルケット、椅子が二脚だけある簡易的な診察室だ。台の横に車椅子をつける。机に先において置いたカルテを手に取って、それじゃあ脱いで診察台に横になってもらっていい?と声をかけた。え?服を剥ぎ取りにかないのかって?さすがに初対面の子のは剥ぎ取らないかな!
彼は、覚悟を決めたような顔をして、診察台に移ると、本当に恐る恐る脱ぎ始めた。右腕、右足は縮み、じんわりと蜘蛛のような手足に変化をしかけている。肌には蜘蛛独特のあの刺々しい毛が生え、変色している。左腕は痙攣が起きていて、動かしずらそうだ。けれど、これはまだ序の口、発見があと数分遅ければ左腕も蛛化していただろうな。
これを見る度に思うのは、確かに、自分の体がこんな変化したら怖くて切り落とされるんじゃないかって泣いちゃうよね。本当は、発狂しちゃう子が出てもおかしくないくらいなことなんだよな……
手足を触診し、感覚があるかどうか聞けば、やはり、蜘蛛化している部分は麻痺したように痺れているらしい。触っても、分厚い布越しに触っている感覚なんだそうな。この場合なら、変化が少ない左手から徐々に波紋を流して解すように治療した方がいいだろう。カルテに要点を纏めて記入し、隊服の袖をまくった。
「それじゃあ診察台に左腕が私の方に来るように寝っ転がって。ああ、もう服は着ていいけど、左腕は少し捲るからね」
「は、はいっ、」
寝っ転がった善逸くんにタオルケットをかけ、左腕だけ出させる。そして、その掌を両手で握る。おお、やっぱり男の子の手だけあって結構ごついのね。あ、ここに剣だこがある。思わず少しにぎにぎしそうになるのを抑えつつ、ほう、と一息。
「それでは治療を開始します」
〇〇〇
善逸はひたすらに困惑していた。それも、陽柱といった彼女が、自分を診察すると言ったかと思えば、診察台に寝かせられ、なぜか治療といいつつも、己の痙攣している左手を柔い白魚の様な手のひらで包まてれいるからだ。
─────や、やわらかいっ!!なにこれなにこれ!?何が起こってんの!?なんで手え握られてるの?!いや、女の子に手を握られるとか嬉しいけど!!!
心の中でなれないスキンシップに荒ぶり、顔は真っ赤にして形容しがたいくらいに顔を緩めながら、うぇっへへへっと変な笑い声を零す。
彼女はその声を無視し、一人、深呼吸をし集中し始める。そして、先程とがらりと“音”が変わった彼女に、笑っていた善逸は思わず口を閉じた。その“音”は、彼女の呼吸の音だった。コオオオッという、独特なそれは、自分の使う雷の呼吸を想起させる。次第に、波打つようにぱちぱちと弾ける音が、善逸を包み込んだ。雅風の掌から、陽だまりのような暖かさが次第に体全体に広がり、体に溜まった気だるさが解かれていく。
善逸は、気持ちよさに、ほう、と息を吐いた。そして直ぐに、心地の良い微睡みの中へ、水の中へ突き落とされるかのように、どぼんと落ちた。
善逸が次に目が覚めたのは、眠ってしまった時と変わらない日差しが差し込む個室でだ。雅風から、善逸くん、と呼ばれる声で目を覚ます。数時間眠ったように、スッキリとした感覚に、え?と言葉を漏らす。
「え、なっ、?!お、俺もしかして丸一日眠ってた?!薬!薬飲み忘れてない?!えっ!?いやぁぁぁっ!!!く、蜘蛛になっちゃうの俺ぇぇぇぇっ!?!」
「安心して、四半刻もしないくらいの短い眠りだったから」
「嘘でしょっ!?」
突っ込むようにそう言われ、善逸は素っ頓狂な声を上げる。いやいや、確実にそれ以上寝てたでしょ!?と、思うが、目の前の彼女の音は、嘘偽りない。
「さっきのが、私の呼吸法、生命の波紋。説明するのが難しいから、実際に体験してもらう方がいいと思って…それよりも、体の調子はどう?」
「えっ?あ、なんで!?あんなに震えてたのに、」
雅風にいわれ、体を動かした善逸は、左腕の痙攣が、だいぶ楽になっていることに気がついた。そして、蜘蛛化した腕の痺れがだいぶ緩和されていることも。
「あなたの体の中の毒素を少しとかしたの。でも、その緩和は一時的なものだからしのぶのお薬はちゃんと飲まないとダメだからね?それと、2ヶ月間、これから一日に2回今の治療をするから」
「!!!!」
雅風の言葉に、善逸は両手をあげて天を仰いだ。そして、ありがとうございますありがとうございます!なに?1日に2回女の子に手を握ってもらって?!!しかも!!これから2ヶ月間!?2ヶ月間も続くの?!ひゃっほーーーっ!!と心の中で声には決して出さないように叫んだ。言ってしまえば引かれるのは分かっているからだ。
けれど、その心中を何となく察しているのだろう、雅風はなにやらなんと言っていいのかわからない顔をして、善逸のことを病室に届けるのだった。病室に戻った際、ベッドの上にいた炭治郎は、出ていく時には真っ青になり泣き叫んでいた善逸が、帰ってきた時には幸せそうな香りをほわほわと放ち、でへでへと笑っている姿に首を傾げるが、まあ、嬉しそうならいいか、と深くは突っ込まずに見守ることにした。