9-3
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や、やってしまったーーーー!!!!
蝶屋敷にかえって、使わせてもらってる個室に入った瞬間、私はほんとに頭を抱えてしゃがみ込んだ。
いやね?会議めっちゃ頑張ったんだよ?
言葉遣いとかそういうの、ほんとに失礼ないように慎重に選んだし、なにより、緊張で目をぐるぐる回しながらみんなにどうわかりやすく伝えるかーって考えて頑張ったの!!!
褒められてもいいくらいちゃんと説明できたと思うんだ!!!
それで、まあこれから過激になる鬼の皆様については生き餌になっておびき寄せるからみんな協力して頑張ろー!的なところまではよかったの!!
問題は不死川!!
若い子殺されない為に御館様にお願いしただけなのに何?!背中を見せて逃亡するなだって?確かに彼の言い分は最もたるものだ。隊士には鬼に家族を殺されてそれで鬼殺隊に来たものが大勢いる。だから鬼を目の前にして逃げるなんてこと簡単にできるものでは無いと私だって理解してるさ!!
けれど自分よりも強いとわかる鬼を前にして滅殺しようとするなんて、本当に死にに行くようなものだ。
これからは上弦の鬼も出てくる可能性が高くなる。
更には私を誘い出すために隊士を餌として使ったり、居場所を探るために拷問される可能性だって出てくる。なら、逃げることに本気を出し、鬼の特徴、血鬼術、などの情報を持ち帰って確実に殺しに行くために一時撤退をして、再び鬼に対して有利な隊を組み滅殺するのだって一つの手だろうに!!
そりゃまあ一般人がいる場合は戦わざる負えないだろうけれども、それでなかったら別に逃げていいじゃんさ!!
作戦名命大事にでもいいじゃんばーかばーかあんぽんたん!!
そして?最後には胸ぐら掴んできやがってあのやろう!地味に痛い!しかもなに?嫌いって!!!大嫌いてなんか言われたんですけど!!流石のお姉さんもあれですよ?堪忍袋の緒が切れますよ?怒る時は怒るんだからね!!!ぷんすこ!ぷんすこ!!
それでまあローキックかまして怒ったあと彼の頭ぐわしぐわしと嫌がらせでわしゃわしゃしてやりましたよ!あ、驚くことなかれ、剛毛かと思ったら彼猫っ毛だった。梅雨の湿気に確実にやられるタイプのやつ。
まあ、それで怒りながらかえってきて、部屋に帰って冷静になって……あーーーーっ!!!やっちまったぁ!!って思ったわけですよ。
いやね?不死川が私を嫌うのもわかるんだよね。だってぱっとでの私が御館様に意見とかよく聞いてもらってるんだもん。そら目の敵にしますし嫌いになるよね。………………いやべつに傷ついてないし!!知ってたもん!!私別に知ってたしーー!!
そう、ぐるぐると回る思考しながら、そのままゴローンと畳に伏した。自分のやってしまったことの恥ずかしさに、たまに思わず足をばたつかせる。
あーーーもうやだ次顔合わせる時どうすればいいのか……
いや、それにしてもそう言えばアレって御法度に触れてないよね?大丈夫だよね?だんだん不安になってきたな……うん、なんかもう自分今日ダメな気がすル。
はあああああと、深い溜息をついて、よろよろと隊服を脱ぐ。締め付けていたベルトも何もかも脱ぎ捨てて、置かせてもらってる洋装に着替える。スタンドカラーのシャツと、膝下のスカートを着て、適当な羽織を肩にかけ、金子を手近な巾着に入れる。
何をする気かって?やけ食いだよ!!!!こういう時は美味しい物食べて忘れるの!!特にあまーいパフェとか!イエス!パフェ!ギブミーパフェ!アイスクリームでもいいのよ!!
え?日輪刀はいらないのかって?残念ながら打ち直し中ですね!だが、大丈夫だ問題ない!波紋流して首落とせばいいだけだから!そこら辺の刃物使うか水に流してとかしたりするから!なにより日暮れ前には帰るしネ!
そして、部屋から玄関へ直行しようと廊下を歩いていたら、見慣れた赫灼色の頭が見えました。しかも隊服姿でなにやら出かけから帰ってきたのかな?という雰囲気である。それならば好都合!
「炭治郎」
「あ!雅風さん!お戻りになられたんですね!」
「このあと用事は」
「ないですけど?」
「なら付き合って」
「え」
きょとん、とした彼のたこで硬くなった手を握り、ずいずいと玄関へ向かう。え?あの?!と声をかけられるが許してくれ。
私は、今すぐに君がハムスターのごとく団子を頬張る姿が見たいんだ!!可愛い姿を見て癒されたいんだ!!
そして、玄関につき、靴を履き、あとすこしで出る……という所で、ちょっと待ってください!と炭治郎が、大きな声を上げた。
「大きな声出してすません!でも、雅風さん、戻られたのなら安静にした方が」
「安静にしてる。甘味処に行くだけ」
「?甘味処、ですか?」
「散髪してくれたご褒美」
「え、あ、でも、それは……」
「大丈夫、私の奢り。沢山食べてほしい」
そうだよ。散髪してくれたのになんもないのはさすがにね!それに!溜まったお給料をたまには使わないと腐っちゃうしね!
髪を切ったことを気にしてるらしい、渋る炭治郎に、お願いしつつ、それとも一緒に出かけるのいや?と、聞けば、そんな事ないです!!と即答された。あまりの速さに流石におっおうとなった。
「それじゃあ行こう」
「分かりました!ただ、もし体調が悪くなったら言ってくださいね?おぶりますから!」
何この子ほんとにいい子かわいい、不死川もこの可愛さを見習えばいいんだよ。爪の垢煎じて飲ませたい。
いや、でも可愛い不死川って想像できない。駄目だ。脳がもうダメになってる気がする。
ああ……と額に手を当てる私に大丈夫ですか?と、聞いてくる炭治郎に、思わずキュンとしつつ、並びながらすぐに近くにある町を目指す。今の事でも大分ほわっとした気持ちに包まれ、癒されたけどね!
けれど、私と炭治郎は知らなかったそれを、後ろから目をぎょろりと剥き出し、血涙を流す勢いで見ている者がいることに…………
所変わって蝶屋敷近くの街中、馬車の走る街道を横目に、あたりをキョロキョロ見回す。あまり来たこと無かったからか、なかなかに新鮮だ。レトロな感じのお店が立ち並び、一定の距離をあけ、喫茶店などの飲食店の看板が見える。ウィンドウに飾れている商品を炭治郎とながめながら、どこに入ろうかーとウキウキする。
「雅風さん、離れないでくださいね?」
「わかってる…………あ、炭治郎、あそこ、あそこ禰豆子ちゃんに似合う髪飾り」
「えっ、ほんとですか?」
「これ、桜のやつ。絶対に似合う。このリボンもいい。」
ぱっと見つけた露店では、桜の枝をモチーフにしたのであろう簪や、レースの白いリボンなど、可愛らしい商品が並んでいた。他にも多種多様な品揃えで、これは女の達が喜びそうだなとすぐに分かる。
炭治郎はそれに感心したように、ふむふむと頷いた。
「凄いですね、どれも綺麗なものばかりで」
「なかなかに凝っていていい」
そして、そんなふうにしてこれも似合いそうだよねという会話をしつつ、手近な甘味処へ入る事となった。空いているからか、周りと仕切りのある、四人掛けの席に案内され、お冷とメニューを渡される。
「好きな物頼んでいいからね」
「はい!ありがとうございます!」
「うん」
太陽のような笑みにほっこりしつつ、自分もメニューを覗き込む。ふむふむ、餡蜜もいいしアイスクリイムもある、ああ、でも和風のパフェも捨て難い!
そんなことを考えながら、メニューと睨みっ子をし終え、炭治郎が決めたみたらし団子と悩んだ末の餡蜜と、緑茶を頼む。そして、それらが届き、いただきますと二人で挨拶をして一口。
口の中に広がる餡子と生クリームのねっとりとした甘味、そして、みかんの酸味と黒蜜のとろりとしたコクと鼻をくすぐる様な甘い香りに、自然と唾液が溢れ出る。おもわずほっぺたに手を当てながら、んーっ、と、もごもごと口を動かしていれば、向かいの炭治郎はなにやらものすごく微笑ましそうな目でこちらを見ていた。なんだよそんな幼い子供見るみたいな目は!!
でもさぁ、この餡蜜ほんとさぁ、
「美味、とても美味、しあわせの味……」
「ふふ、そうですね!あ、こっちのお団子も美味しいですよ!」
そういうと、彼はとても自然な動作で食べますか?、と私にお団子の先を向けてきた。お、おおおう。
いやちょっと待ってなんで私あーんされてるの?多分これ弟妹たちにやる感じでやってない?やってるよね?だよね?あ、ごめんなさいそんなに不安そうな顔しないでくださいただ少し恥ずかしいだけなんですよ。
視線を少し、ウロウロさせつつも、炭治郎のお団子を小さく齧った。
「!おいしい!」
醤油ベースの甘いタレは程よく加減がされて、一度焼かれたであろうもっちもちとしたお団子は香ばしい。これは炭治郎がすすめるのもわかる。……それにしても、やられっぱなしというのは女が廃るものである。
「炭治郎も、」
「え、」
「くち、あけて、餡蜜」
寒天と餡子、生クリーム、みかんを適量なんとかのせつつ、炭治郎の目の前に持っていく。
ふはははは!どうだ!君も羞恥を味わえばいいんだ!!さあ狼狽えるがいい!!
と、そう心の中でほくそ笑むも……
「いいんですか?!ありがとうございます!
むぐ、、ん、あ、これほんとに美味しいですね!黒蜜の香りが特に際立ってて!」
彼は、そう、なんの躊躇いもなくそれを食べてくれましたよ!しかも完璧な感想付きで!!とんでもねぇ炭治郎だ!!!とんでもねぇ炭治郎だ!!
羞恥損じゃねぇか!ちくせう!!ていうかあーんって普通照れたりしないの??ねぇ?私がおかしいだけなの?したりされたりってそれって恥ずかしくないの???ねぇ???君絶対に大物になるよ……
思わずもにゅもにゅと、変な動きになりそうな口元を隠せば、可愛らしい笑顔をうかべた彼は、どうかしたんですか?ときょとん、と首を傾げた。それに、何でもない、といって、餡蜜にまたスプーンを突き刺すのだった。
その後はお団子を笑顔で食べる炭治郎にもちろんめっちゃ癒されましたがね!!
そして、ある程度食べ終わり、お茶を飲みつつほっと一息つけば、少し何か考える様な素振りを見せ、炭治郎が唐突に話を切り出した。
「そういえば、俺、雅風さんにお聞きしたいことがあって」
「?」
「ヒノカミ神楽ってしってます?」
「ひのかみかぐら」
「はい」
ほんとに突然ぶっ込んでくるのはいかがなものでしょうか……
でもヒノカミ神楽についてかぁ……確証はないけれど、少し考えることはあったにはあったんだよね。でも本当に、何で私に聞いてきたんだろう?そう思って聞けば、しのぶや煉獄さんに、私に話を聞いてみれば?と言われたらしい。なぜだ。いや、何となくわかるけど
煉獄さんには既に聞いていて、耳飾りが日の呼吸、始まりの呼吸と関係があることは知ったという。
「炭治郎は、日本の神話、記紀神話ってしってる?」
「神話ですか?」
「そう、それと、君が踊っている神楽舞をどの神様奉納しているのか」
「俺の家は炭焼きだったので、ひの……ええっと、炎の神様に奉納してたんだと思います」
「その、火の神様についてはちゃんと知ってる?」
「いえ、ただ途絶えさせてはいけないものだと」
彼の様子に、一応火の神様について最初から話した方がいいだろうことが分かった。頭の中の引き出しを開け閉めしながら、うろ覚えのそれを引きずり出す。
「日本の神話、記紀神話において、火の神様は
「よく知ってらっしゃるんですね」
「本をたまたま読んで齧った程度だから……
鬼が生まれたとさせる時代、増えたとされる時代のことを考えて古文書を読むことがある。伝承として、また別で鬼について知り得ることがあるかもしれない。なにより、昔から居たとされるなら、彼らの居場所の特定にも繋がる可能性が高い……
どこかおかしい所があるかもしれない。天照大神……太陽の神様の場合もあるけれど、でもたぶん、火業についてなら軻遇突智のほうが確実だとおもう」
「いえ!それでも十分ですよ」
炭治郎は、火の神、かぐつちのかみ、と反復するように繰り返す。なにか思うことがあるのだろうか。ぬるくなった湯のみを傾け、むぐぐ、と考える彼に、そういえば、と禰豆子ちゃんの入った箱を見た。
「禰豆子ちゃんのその血鬼術も、炭治郎が踊ってるヒノカミ神楽の恩恵だったりするのかも」
「え、」
「鬼舞辻、彼は鬼の細胞の言わば母体のようなもの。
軻遇突智はいわば母の体を焼いた炎その物。置き換えていえば、母の体しか焼かなかった炎なの。だから、禰豆子ちゃんの炎は血鬼術の産まれるきっかけである、鬼の細胞の母、鬼無辻無残の細胞しか焼かないんじゃないかな。」
「確かに、言われてみれば……」
彼は、目から鱗が落ちるとでも言うように、大きな赫灼の瞳を見開いた。そして、禰豆子ちゃんの入った箱を慈しむような笑みを浮かべ、指先で撫でる。
「ヒノカミ神楽は、代々受け継いできたもので、父から教わったものなんです……
………………そうか、父さんが禰豆子を守ってくれてたんだな……」
静かな、優しい、揺れる様な声に、胸を打たれる思いになる。ヒノカミ神楽は、彼の父が伝承されたもの。絶えず踊り続けたからこそ、繋がれてきたものだからこそ、彼女を護ってくれた、そう、思い、感じたのだろうか。
その様子に、どこか、神聖なものを見てしまった気分になりつつ、わたしはそっとその光景を目を細めて眺めていた。
話し終えた私達は、その後のんびりとお店を出て、蝶屋敷の皆へお土産を買って、帰路に着いた。
その途中、ほわほわ気分で炭治郎と話しつつ、たまに禰豆子ちゃんとカリカリし合いながら会話したよ!リフレッシュ出来て余は満足なりー!!
今度は伊之助や善逸くんも連れていってみたいなー!と、そんなことを思いつつ、私は帰ったのだった。
私は知らない、部屋に戻った後に、炭治郎が、「雅風さんと何逢い引きしてやがんだたんじろおおお!!!許すまじ!うらめしぃ!!粛清だオルァ!!!」と善逸に叫ばれ、暫く追い回されていたことを。
そして、なぜだかしのぶが恐ろしいほどの笑顔で訪ねて来ることを…………私は知らない…………
そして更には翌日、私のほっぺたは筋肉痛になりました。解せぬ。