久しぶりに飲みに誘われて、会社の人たちと飲みに行った。

頭が痛い…。

飲みすぎた。
ふと夜中に頭が痛くて目が覚めて、冷蔵庫に入れていた麦茶を飲んだ。携帯電話で時間を確認すれば夜中の3時過ぎで、それからベッドに戻ろうとした。
ベッドには、誰かが寝ていて思わず悲鳴を上げそうになった。
そういえば昨夜は…というか数時間前、会社の飲み会で、いつもよりハイペースに飲んでしまった…と思う。それでいつもより酔うのが早くて、そうだ、電話したのだ。足に使えるような相手なんて居ないはずだけど、どうしたことか酔った私は電話したらしい。
酔った自分が誰かを呼んだこと自体、殴ってやりたい。ていうか、そもそもどうして一緒にベッドで寝てる?全く記憶が無いけど、どうやって着替えたの私。いや、薄暗がり中目を凝らせば、ちゃんとソファーに自分が脱皮した残骸が残ってる。
携帯電話の履歴を見れば21時過ぎに固定電話に掛けたようで、明らかに拓海くんの家の電話だ。ちょっと泣きたい。常識外れ過ぎる。ということは、ベッドに寝ているのは拓海くんだというのか。よくよく見ると柔らかそうな髪は拓海くんっぽい。

「えっ、無理。あっ、待って。もしかして豆腐の配達あるんじゃ…!」
急に頭が回り出して、この状況よりも家に帰してないことのヤバさが増してきた。いくら男の子でも朝帰りさせるとかダメだ。いや、もう朝だけど。しかもお豆腐屋さんだから、多分お父さんは息子が帰ってきてないことに気付いているはず。

「た、拓海くーん。お豆腐の配達はー?」
控えめに声を掛けると、寝返りをうってこちらを向いた。ぼんやりとした目と視線が合った。やっぱり拓海くんだ。寝起きの可愛さに100点あげたい。
「…配達…行かないと…」
「お家まで帰れる…?」
「うーーーん、名前さんは大丈夫?」
「だ、大丈夫デス。大変ご迷惑お掛けしました」
「顔洗わせて…もらってもいいですか?」
慌てて洗面所を案内して、タオルの場所を伝えた。拓海くんが顔を洗っている間に、麦茶を用意してソファーの脱皮の抜け殻を洗濯カゴに放り込んだ。炊飯器に入ってた2日目のお米で非常に申し訳なかったけれど、おにぎりを2つ握った。

顔を洗い終えた拓海くんに麦茶をすすめ、おにぎりを持たせて、もう謝り倒すしかなかった。
「本当にごめん!!お父さんも心配してるよね!?この埋め合わせは必ずするから!」
「埋め合わせなんていらないです」
「いや、これは本当酔っ払った私が悪いので埋め合わせさせて!」
「うーん、じゃ、またご飯一緒に食べましょう」
「えっ?」
「一人でご飯食べるの嫌いだって言ってましたよ」
「…っ!!」

思わず息を飲んだ。そんなことを拓海くんに言ったのか。

「それじゃ、おやすみなさい」
「…おやすみ。いってらっしゃい!」
「いってきます」
ひらりと手を振って拓海くんは私の部屋を出ていった。少ししてあの白黒の車のエンジン音が聞こえたような気がした。

ベッドに戻ると拓海くんがいた温もりがほんのり残っていて、余計に頭が痛くなった。
別に身体に異常はこれっぽっちもないので、男女の何かあったことは無いだろう。けれども、拓海くんとベッドに入っていたかと思うと申し訳なさ過ぎる。
ていうか本当に菓子折でも持って拓海くんの家に行かなきゃ、社会人としてもうほんとダメダメすぎる…。薄い掛け布団を頭まで被ってぎゅっと目をつぶった。

明日が仕事休みでよかった。
飲み屋の駐車場にそのままになっている車も取りに行かないといけない。



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