インベスティゲートは慎重に

鏡舎を通ってやってきたのはポムフィオーレ寮だった。
ルーク・ハントという三年生は去年も試合で活躍していたという優秀な選手だ。
大きな羽のついた帽子を被った人を探していると煌びやかな談話室内で一際目立つ三人がおり、その中の一人が目的の人物だった。

優雅にお茶をしながらお喋りしているようだったが、話しかけるのに気後してしまうような空気が流れていた。
そして、なんか喋り方が仰々しいような感じでちょっとお近づきにはなりたくない雰囲気だ。

「オレ様が犯人だったらコイツは狙わねえな」

グリムの一言にみんな頷き次の人を見に行くことになった。
鏡舎を出て学園内を探していると中庭にちょうど目的の人物を発見した。
オクタヴィネル寮からは二人の要注意人物がいるようで、手を焼く連携攻撃をするらしい。

グリムの言う通り顔の作りが同じなので双子なのかもしれないなと見ていると、そのうちの一人と目が合って頭の中を既視感が走った。
随分前に薬学室でぶつかりそうになった人かもしれない。厄介事を起こしたくなくてよく見なかったからどっちかはわからないけれど、あの時の髪色と背の高さは間違いなく兄弟のどちらかだ。

「あ〜金魚ちゃんだ〜〜〜」
「うわ、見つかった!」
「ねぇねぇ、こんなとこで何してんの?かくれんぼ?楽しそうだね」

喋り方からして私が会ったことがあるのはもう一人の目が合った方だと確信した。
フロイドさんという人は他人がどう思おうが変な渾名で呼んだり、面白い生き物を好き勝手"かわいがる"ような自由な言動が目立つ。
ジェイドさんという人は物腰が穏やかでとても丁寧な話し方をする人で、あの時ぶつかりそうになったのがフロイドさんじゃなくて良かったと思った。

「スパイでしょうか?それなら見逃すわけにはいきませんねぇ。なぜ僕たちを監視していたのか理由を詳しくお聞かせ願えますか?」
「コイツ、物腰は穏やかだけど目が笑ってないんだゾ」

よく見ると目が笑ってないのに口元は楽しそうに口角が上がっていて、あの日ぶつかっていたら大変な事になっていたんじゃないかって冷や汗が流れた。
ケイトさんの一言でみんなその場を離れるけれど、すごく楽しそうな笑みを浮かべながら着いてくる。
ただ歩いてるだけなのに足の長さから距離が詰まり自然と早足になる。

「ねーねー待って〜」
「そう言われて誰が待つんだ!」

総員退却!というリドルさんの号令で全員が一斉に走り出した。
校舎を出て振り返ると追いかけてきていないようで安心して歩を緩めた。グリムも私も息も絶え絶えに怖かったと同時に口にした。
あの二人には何かしたら恐ろしい報復が待っていそうで犯人に自殺願望でもない限り手は出さないだろう。

次は獣人属のサバナクロー寮の生徒らしい。
みんなに紛れれば誤魔化せるとは思うけれど、寮内に向かうというのでどうしようかと悩んでいるとリドルさんがハートの女王の法律・第346条"午後5時以降は庭でクロッケーをしてはならない"を破る人が出ないように寮に戻るという。
リドルさんが寮に戻るのを見送ると私も用事が出来たと言って、別れることにした。

「ちょっと、学園長に交渉してくるね」
「?気をつけてね」

みんなの姿が見えなくなると学園長室まで姿現ししようとしたが、ホグワーツ同様学内では使えないようだった。
徒歩で学園長室まで来た。毎回必ず学園長がいるので、ノックをすると自動で開く扉に来客があると何か知らせが来るような魔法がかかってるのかもしれないと思った。
毎回探す手間が省けるので助かる。

「貴方はよくここへ来ますねえ、まあ良いですけど。どうですか、真相は掴めましたか?」
「今調査中です。それより杖の使用許可をもらいに来ました」

トレイさんの怪我を含む今回の犠牲者の怪我は皆軽傷のようだった。あの程度であれば多少痛みを伴うかもしれないけれど杖を一振りすれば簡単に治せる。
交渉の末、杖は明日の放課後に渡すと言われた。今日はもう午後5時を過ぎているため明日保健室で行うことになったのだ。

「ただいま〜」
「ひぇ〜疲れたんだゾ〜〜」

寮のキッチンで夕食を作っていると、酷く疲れた様子の弟とグリムが帰ってきた。
話を聞くとサバナクロー寮でマジフト勝負を挑まれて、今までずっと試合という名の暴力を受けていたようだ。
即席チーム相手だとしても失点が無いくらい強いのにサバナクロー寮からは犠牲者が一人も出ていないなんて、これから襲われるのだろうか。

「サバナクロー寮のジャック・ハウルは狙われそうだった?」
「自分は大丈夫だから護衛なんかいらないって断られたんだ」
「自分でなんとか出来るってこと?」
「うーん、まあ強そうな人だったよ」

ジャックの煮え切らない態度も気になったけれど、サバナクロー寮全体の雰囲気にガラの悪さを感じて嫌な気分だったと弟は言う。
あの兄弟のように報復が怖くて手を出さないのか、それともサバナクロー寮生に犯人がいるのか。
弟もあの寮には何かありそうだと思っているようだった。

その日の夜、夢を見た。
まだホグワーツに入学するずっと前の子供の頃の夢。
弟が壊してしまったおもちゃを私が直し、弟がすごいすごいと嬉しそうに感謝する夢。
それから、数年経っても魔力の兆しを感じないままの弟は少しずつ笑顔が減っていったんだ。