05


インターフォンを鳴らしてしばらく待つと、音を立てて扉が開く。


「どーぞー。」

「お邪魔します。」

「適当に座って。着替えてくる。」

「あ、はい。」


言われて、彼は脱衣所に向かったみたいだ。
私は大人しく空いたスペースに座る。
横にはベッドがあるがまぁ見ないふりをしよう。
見覚えのある部屋に若干の気まずさを覚え、誤魔化すようにケータイでゲームアプリを開く。
しばらくすると、扉をあけて入ってきたのは見覚えのあるスカジャンにちょんまげ姿。


「とりあえずガチャ引かせて。」

「あ、私もなんで。」

「だよね。」

「今回のイベガチャ爆死率ヤバイんですよね。」

「それな。確率絞りすぎでしょ。」

「まぁ出しますけど。」

「まぁ出すけど。」


ガチャを引いて、限定武器をお互いに出したところで一息つく。


「出た?」

「はい。」

「じゃあ部屋立てるよ。」

「あ、ランク帯とか…」

「大丈夫。変わんないから。」


言われてよくわからないまま、建てられた部屋を見てみると、そのプレイヤーの名前に見覚えがあった。
ひどく。
とても。
すごく。


「え?この名前…」

「行こ。」

「あー待って、待って?あの、この名前、あの、えっと。」

「俺も最初驚いたけど、そこまで?」

「だって、この前のイベ、めっちゃ抜かれそうで!」

「結局抜けなかったけどね。」

「たるちって、貴方なの?」

「うん。」


先日まで行われてたイベントのランキングで、私が最後まで競り合ったユーザーの名前がそこには書かれていた。
追いつかれたり、追い越されたり、追い返したり、追い越したり、イベントのたびに名前が上がる上位ランカーが、こんな側にいるとは思ってもみなかった。


「この前ガチャ引いてもらった時に私の名前気づいたんですか?」

「よくランキングで見る名前だなとは思ったけど、まさか隣に住んでるとは思ってなかったから、流石に驚いたよね。あ、開始するわ。」

「今私それです。驚いてます。」

「だろうね。あ、スキル打つわ。」


私とは違って、たるちはSNSや、ブログもやっており、正直装備の参考にさせてもらうこともある。
話しながらサクサクとクエストを進めて行き、心を落ち着かせる。


「あ、そっち回ります。」

「おけ。そこ気をつけて。」

「はい。」


そうして気づけば、驚きよりもゲームの方がメインの会話になっていた。
これがゲーマーの性なのかなんなのか。
ただ、思いもよらないくらいには気兼ねなく話せるようになっていた。


「そういえばさ、なんで敬語なの?」

「あ、そこスキル使いますね。なんででしょう。」

「ここまできたらもういいんじゃない?あ、アイテム投げるわ。」

「ですよね。あ、ありがとうございます。」


そうして、ゲームを好きなだけやって、お互いキリの良いところでケータイを置いて一息ついた。


「そういえば、名前教えてもらってないです。」

「たるちでいいよ。」

「外でもたるちって呼びますけど大丈夫です?」

「至。そっちは?」

「夢です。よろしくお願いします。」

「これからもちょこちょこよろ。」

「敬語は、まぁ、なんとなくいつか直しますね。」

「りょ。」


気兼ねのない、友人。
なんとなく、そんな関係になれればいいなと。
そんなことを考えていた。



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