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『で?』

「あぁ、幸くんが机を挟んで目の前に座ってくれて私に対して話しかけてくれている…なんて慈悲深く愛らしい眼差しなんだろうもう本当眼前にいるのが私で本当ごめんなさいいっそ殺してほしい。」

『夢ちゃん、さすがに色々まずいっス。』

「太一にはわかんないでしょうよ!毎日同じ空気吸えるだなんてどれほど恨めし…嫉し…羨ましいことか!」

『すっごい言い直してたっスね?!』

『太一くんの幼馴染さんなんですね。あ、お茶どうぞ。』



ニコニコしながら太一が監督先生と呼んでいた美人女性がお茶を入れてくれた。
紅茶のいい匂いが目の前に広がる。



『とりあえず飲んで。』

「幸くんが私に命令してくれた…生きててよかった本当に良かった…」



言われた通り紅茶を飲めば、香りがめいいっぱい広がる。
すごい、紅茶淹れる達人なのかな、監督先生。



『で、あんた何のためにストーカーなんてしてたの?』

「何のためとは?」

『ここの誰かと繋がるため?あー…そういえば夏組公演見に来てたなら天馬目当てか…』

「え、いえいえいえ!全く興味ないです。」

『え?』

「あの日舞台を見た時、幸くんが本当に美しくて、慈愛に溢れてて、全てを包み込んでくれるような、素敵な人だなって、あと単純に顔がタイプで。」

『…え…』

『あー…ほら、幸ちゃん引いてるっスもうドン引きっスよ夢ちゃん。』

「でも、二次元みたいに、相手の行動がパターン化されてたりわかったりするわけではないので、いっそ追っかけてしまえと…三次元はやっぱり難しいですね!」

『…クソゲーマーか…』

「そうなりますね!」

『ごめんね、幸ちゃん…話せばなんとかなる子なんスけど、暴走しやすくて…』



頭を抱える幸くんもなんと麗しいことでしょう。
太一がなにか弁明をしているけど、やってることがやってることだし、そんなものは無意味だと私は知っている。
息を吸って答えた。



「ただ好きなだけなので、私のことは気にせず今後も普通に道を歩いていてくださればそれだけで幸せです。」

『…いや、もっと単純なことあるでしょ。』

「単純?」

『あんた、裁縫はできる?』

「お裁縫ですか…?」

『そこのバカ犬から聞いたんだけど、裁縫できるって?』

「あ、母が裁縫教室を開いておりまして、その影響で嗜む程度には…」



言いながら幸くんを見れば、彼はなんとも嫌味たらしい笑顔でこちらを見ていた。
あぁ、そんな顔をしている所ですら愛おしい本当、今日も推しが尊い。
若干距離が近いけど。



『じゃあ、パシリ2号だ。』

「へ?」

『舞台の衣装とか、基本的に市販のものを俺がリメイクして作ってるんだけどさ、やっぱ時期が迫ると手が借りれるほうがありがたいから。アンタ手伝いに来てよ。』

「えっ…」

『ほら、夢ちゃん!幸チャンとたくさんお話しできるし間近で見れるし!何より俺っちが助かるっス!これ以上非行に走らないでお願いだからー!』

「えーと…」



あまりに唐突な申し出で答えが浮かばない。
推しが?私に?手伝えと?申している?
いや、それ、断れる心が私にあるの?
ねーわ。



「私なんかの腕、3本や4本、お好きなだけお使いください。ついでに幸様って呼ばせてください。」

『却下、気持ち悪い。じゃあ、ケータイ出して。』

「へ?ケータイですか?」

『ん。』



断れる心が私にあるのでしょうか?
あるわけないんですよねこれが!
制服のポケットに入れていたケータイを幸くんに渡す。



『LIME開いて。』

「かしこまりました。」

『うわ、待ち受けすらオレなの…』



言われた通りにケータイを操作しているところを覗き込む幸様が少し嫌な顔をした。
でも、最初ほどの衝撃はないらしい。
言われた通りにLIMEを開いて、彼に渡すと、彼はそのまま私のケータイを操作し出した。



『はい。』

「ありがとうございます。ケータイ一生拭きません。」

『気持ち悪っ…オレのやつ登録しておいたから、なんかあったらそこで連絡する。』

「一生垢消しません、変えません。幸せです。」

『夢ちゃん、もう幸ちゃんが呆れてなにも言わなくなっちゃったからもうすこし我慢して?ね?』



太一に横から揺られながら私はケータイを胸に抱く。
これ以上の幸せがあっていいものだろうかいや無い。
二次元では得られない非現実が今この場で起きたのだ。
なんと言う幸せなことか。




(よろしく)
(ありがたき幸せ、いつでも罵ってください!)
(そんな趣味ないから)
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