それは
「こいつは?」
「こいつは情報を吐かせたホル・ホースとコンビを組んでる奴で……エンヤ婆の息子。ホル・ホースは手の事は言ってなかったけど、エンヤ婆は……“両腕とも右腕”だった」
「なんだって!?」
ポルナレフが立ち上がり、手帳を引ったくるようにして読み始めた。
「J・ガイル……つまりこいつはッ!!」
「母親がどちらも右腕なら当然、息子も……」
「はい、恐らく」
「そいつがポルナレフの妹の仇って訳か」
「この野郎が……こいつがおれの妹を殺したドブ野郎かッ……!」
「妹を?……それでポルナレフは戦ってるの」
「あぁ、烈子には話してなかったな……そう!“両腕とも右腕の男”!妹を辱しめ殺したそいつこそがおれの追っていた男だ!!」
机を拳で叩きポルナレフが吼える。怒りか高揚か、震える手で私に手帳を返してきた。
「聞かせてくれ……詳しい話を!他にどんな話を聞いた?」
「時間が無かったからあまり詳しくは聞けなかったけど……能力は手帳に書かれている通り光……姿を映すものがあればとにかく最強無敵って言ってたかな」
「無敵だと……おもしれぇ……チャリオッツの力とおれの恨み!二つを合わせて必ず奴を地獄に送ってやるぜ!!」
「気をつけてポルナレフ。
「あぁわかった」
まったくわかってないだろう声音でポルナレフはそう言うと、部屋を出ようとした。
「おいポルナレフっ!どこに行くんじゃ!」
「悪りぃジョースターさん、頭冷やしてこねーと冷静じゃいられねぇ……夜までには戻ってくる」
「ポルナレフ!一人になるのは危ないと今の話を聞いて思わないのか!」
「頼む……しばらく一人にしてくれ」
ジョースターさんとアヴドゥルさんが引き留めるも、ポルナレフは出ていってしまった。
「まったくアイツは……」
「この調子では敵を見つけた途端、なりふり構わず突っ込んでいきそうだな……それでは敵の思うツボだとなぜアイツは気づかん!」
「まぁ……彼の気持ちも考えると今はそっとしておいた方がいいかもしれませんね」
「そーね、今のところ敵の姿はガラス玉には見えないから多分大丈夫です。放っておきましょう」
「うむ……そうじゃな」
「……やれやれだぜ」
その後、会議の途中で戻ってきたポルナレフはもういつも通りの彼だった。
……その事に更に不安を感じたのか、アヴドゥルさんは表情を曇らせた。