言葉を探すより先にこぼれそうになった謝罪を呑み込む。謝罪してしまったら、それこそ疚しさを自己申告しているかのようで憚られた。このまま黙っていることもそう。相手を隠すこともそう。大丈夫。しちゃいけないことは、ちゃんと分かっている。
「……話す?」
傍まで歩み寄って、スマホを差し出す。私の選択はどうやら間違っていなかったらしい。自分のスマホをポケットにしまってから受け取った治は、画面を見るなり顔を顰めた。
「お前何性懲りも無く電話しとんねん」とか「俺のや言うたやろ」とか。これがたぶん侑が言っとった"ガチトーン"なんやろなあ、なんて思いながら靴を履き替える。侑の声は聞こえない。大体想像はつくけれど、二人の間に口を出すほど野暮ではなかった。
それにしても当の本人がここにいるっていうのに、なかなか小っ恥ずかしいことを言う。他の生徒だっていないわけじゃない。侑みたいに所構わず大きな声を出すようなことはしないけれど、それでも容赦なく降り注ぐ嫉妬じみた台詞の数々は、嫌でも私の体温を上昇させた。周りからの視線が痛い。私はともかく、治はそこにいるだけで目立つのだ。
あまりの居た堪れなさに、ブレザーの裾をついっと引く。気付いた治は一瞬瞳を見開いて「取り敢えずええわ」と、通話を切った。優先順位が私へと変わった瞬間がひどく新鮮で、ちょっと照れくさい。貸していたスマホは、治の手によってポケットにお返しされた。
「私んことめっちゃ好きやん」
「何回もそう言うてるやろ」
「……」
冗談めかした言葉は、飾らないド直球に敢え無くノックダウン。場が和むことは全くなくて、むしろ私の恥ずかしさがレベルアップしただけに終わる。イケメンズルイ。
「……何でここおったん」
「全然既読つかへん誰かさんを待っとっただけや」
「え、ごめん。気付かんかった」
「別にええけど、ツムと喋っとったんはそこそこ腹立つ」
「それってヤキモチ?」
聞いてから後悔する。また墓穴を掘ってしまった。治の口が開かれる前に慌てて制する。
「答えやんでええから場所移そ」
そう、大きな手を引いた。