花の葬列



恋人繋ぎのまま、さっきから俺の左手をにぎにぎしている小さな温もりへ視線を落とす。握り返してやれば止まり、緩めれば再開。どうやら何かを求めているわけではないらしい。

ぼんやりカーペットを見つめる横顔は、正に心ここに在らず。名前を呼ぶと、同じくぼんやりした生返事が春の陽気にたなびいた。


「考えごと?」
「ううん。そうじゃなくて、こう……夢みたいって感じ」
「夢?」
「付き合えるって思ってなかったから。一静と」
「……ごめん。俺のせいだね」
「ほんとね」


ようやく動いた表情筋。くすくすと、笑い混じりに肯定した彼女が緩慢に振り向いた。付き合う前ならたぶん"そんなことないよ"って気を遣っていただろうところ。それが今や気兼ねなく、顔色を窺うこともせず。ありのままの自然体で傍に居てくれることへの安堵と嬉しさ、それから申し訳なさが孵化する。



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