オールヴュー



あれから私は両親に割り振られる仕事を経て、いろんな人の夢を食べた。

大体は心療内科からの依頼。食べることにより夢となって現れた記憶を見れるものだから、心のケアにとても役立つと重宝された。たくさん歌って、突飛な夢も重い夢もたくさん食べて。使えば使うほど、個性の扱い方も上手くなった。食べる夢を選べるようになって、一部分だけ切り取れるようにもなった。毎日大変だったけれど誰かの役に立てることは素直に嬉しく、対象者の安らかな寝顔が私の幸せだった。

でも、轟くんのことはまるで魚の小骨みたいに、いつも心に引っ掛かっていた。


そんな折、中学三年の進路の時期。雄英高校からのスカウトを受けて、今の環境に至る。

推薦してくれたのはリカバリーガールらしい。体の治療も心の治療も等しく必要な世の中だと、あんたの噂は聞いてるよ、と。彼女はのんびりラムネを食べながら歓迎してくれた。

皆とは違った方向のヒーローになるべく、普通の授業以外は保健室で学んでいる。クラスに轟くんがいた時は驚いたけれど、時折目が合うだけで特にどうこうはない。きっと覚えていないのだろうと思う。大変なことがたくさんあったはずのあの頃、病院でほんの半月ほど一緒に眠っただけの幼い存在だ。やっぱり無理もない。

別に良かった。だから私も初めましてのクラスメートとして、この半年間接している。体育祭から少しずつ良い顔をするようになった彼に、私の無力な心配など必要なかった。



そして、冒頭に戻る。



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